315話 虎哉禅師、診断す
今回はあまり時間をおかずに投稿できました。
ども、坊丸です。
虎哉禅師の診断に少しばかり干渉しようとした結果、どうやら漢方薬の知識を持っているお子さんと言う存在がかなりのアレだったらしく、それを誤魔化そうとしたらまたまたやらかしたようです。どうする、俺。
「張仲景といえば、傷寒論等を記した後漢末期の医聖じゃぞ。なんで、お前ごときの夢枕にそんな方が…」
お前ごときって、なかなか酷いなぁ、虎哉禅師ってば。
「まぁ、夢、でございますから。本当かどうかはわかりませんよ。夢か、現か、はたまた幻か。それがしには、枕元にたったのだから立ったとしか言えませぬ」
夢枕なんだから仕方ないじゃないの一点張りで強行突破です。
半眼でこちらをじっと見た後、深いため息をつく虎哉禅師。
目をつぶってこめかみのあたりに指をあててますが、大丈夫でしょうか?
頭痛がするのかな?
指の形が刀印にも見えるしね。刀印て確か指の刀で悪を消し去るって意味でしたよね。
刀印を以て頭痛を消し去ろうとしているのかも。うん、きっとそうだ。
「大丈夫でしょうか?虎哉禅師。頭痛がするのですか?一休み致しますか?」
「はぁ~。頭痛の原因がそれを言うか。全く。
沢彦禅師が『坊丸は変な知識や智慧はあるが、常識や大切な物が足りておらん。へそ曲がりを信条とするそなたに頼むのもなんだが、上手く導いてやってくれ』と最初に言われたのを思い出しただけだ。
薬師如来の導きで医聖たる張仲景に夢で出会ったなどとぬかしくさりおって…。
色々言いたいことはあるが、まぁ、良い。
何処で手に入れたかは詮索せぬが、お主、医薬の心得があると見てよいのだな」
「はっ。夢枕の張仲景殿が教えてくれたことが真実ならば、ですが」
まぁ、夢枕の張仲景殿のお話も天使級10598号さんからもらった株式会社ツム◯が配布している漢方の入門書の知識も似たようなもんでしょ。
うん。表向きは夢で張仲景殿から教わった、そういうことにしておこう。
「さて、加藤殿の証であるがな。もとは一角の武士であったとのこと。なれど、病にてだいぶ弱っておった。本来ならば実証とすべきかもしれぬが…」
「加藤さんは、斎藤道三殿が討死した長良川の戦いにて道三側の兵として戦い、胸と足に怪我をおっております。
その後は鍛冶職人として暮らしており、最初のうちは、養生しておったよし。ここ九年程は体力が落ちる一方とのことでした」
「そうであるか。元侍とのことであったのに筋骨隆々の風ではなかったのは、そのせいか。では、中間証になるな」
「はっ」
とりあえずかしこまりつつ、同意。
「熱がしばらく続いた肺の病、だいぶ痰が多いようであるからな。熱証は間違いあるまい。肌、腹、舌の様子では気虚、血虚の如くであった」
というと、チラッとこちらを見る虎哉禅師。
気血水ってよくわかんないんだよね。根っこが現代の西洋医学の人だからさぁ。
とりあえず、同意しておこう。
「はっ。禅師の診立て通りかと」
そう言って頭を下げておきます。
その間に脳内の書籍を検索検索っと。
肺炎や気管支炎、痰が多い時はっと。
なんかたくさんの漢方薬の名前が出てきたぞ。
えぇっと急性期ではないから、ここらへん、葛根湯などの風邪のひき始めに使うやつは外して、っと。
「うむ。中間証、熱証で気虚、血虚のときの肺臓の病の時てあるな。確か徳本先生のところに行って四日目の昼過ぎに似た患者がおったはずなので…」
あ、虎哉禅師も書き付けから確認しているのね。
じゃ、今のうちにもう少し条件を絞り込んで…。
あ、そうだ、張仲景殿から聞いたことになっているから、傷寒論か金匱要略に記載されてる処方にしないとな。
張仲景殿の記録した「傷寒雑病論」の発熱、感冒症状についての前半部分が現在の「傷寒論」で一度散逸して偶然発見された後半部分が「金匱要略」だったはずだから、ね。
それを踏まえて天使級10598号さんにもらったデータを確認すると…。
中間証で肺炎や咳に使える漢方薬は…。
小柴胡湯、柴胡桂枝湯、麦門冬湯、清肺湯くらいかなぁ。
あ、清肺湯は「万病回春」が出典だって。これだけ出典違うな。
何々、「万病回春」は江戸時代に戴曼公って人が日本に伝えたって。じゃ、清肺湯は外しておこう
「ふむ、永田徳本先生は、長引く肺の病、発熱は少し落ち着いたものの膿性の痰いまだ多く、気虚なる肺病のものには、柴胡桂枝湯を用いたと記録してあったぞ。痰が膿でなくなれば、麦門冬湯や清肺湯を用いるとも先生よりご指導いただいたようだ。坊丸、そたなはどう見る」
「はっ。夢の中話では小柴胡湯、柴胡桂枝湯、麦門冬湯などの名が挙がっていたと記憶しております」
あれ?江戸時代に伝わったはずの清肺湯の名前が出てきたぞ?なんで?とりあえず、後で確認だな。
「ふむ、だいたいのところ徳本先生の考えとそなたの夢枕から伝わった診断処方は同じであるな。あとは、手元にある生薬にてこれらの処方ができるかをだな」
よし、漢方薬調達、できそうです。待ってて、加藤さん!
漢方薬のデータを一応確認しておりますが、この診断はフィクションの中のものなので、例え同様の症状であっても、実際の診断、内服、処方については漢方薬の知識が豊富な臨床医の診察や漢方薬局に相談の上、それに従って下さい。よろしくお願いします。
こんなフィクションの情報や中途半端な情報を鵜呑みにするの、ダメ、絶対。
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