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287話 生駒屋敷 訪問の許可取り

ども、坊丸です。


小牧山城のお披露目会から帰宅して数日。

生駒屋敷に吉乃殿が戻ったという話を確認した後、柴田の親父殿が生駒屋敷に連絡を取ってくれました。


一応、自分も書状を書いてっと。


曰く「小牧山城で倒れた後のお加減はいかかでしょうか?」

曰く「倒れた際にお桂殿の指示のもと介抱のお手伝いをさせていただきましたが、失礼はなかったでしょうか?」

曰く「介抱の際に体調を仔細にお聞きしてしまい申し訳ございませんでした」

曰く「ここからは内密に願いますが、体調不良の原因には見当がついております」

曰く「もしよろしければ、療養の助けとなるような食事を考えておりますので、体調回復をお助けいたしたく存じます」

曰く「生駒屋敷の皆様が宜しければ、一度訪問して体調を回復させるための食事をふるまいたく存じますので、日程を指示いただきたく存じます」

曰く「なお、このことは小牧山城での無礼を働いたことに対する謝罪の意もありますので、よそには一切他言無用でお願い申し上げます」


よし、だいたいこんな内容で大丈夫でしょ。

あとは、柴田の親父殿にも書状を書いていただいてっと。

ちなみに、他所には一切他言無用ってのは、信長伯父さんに下手に知られると大事になるから知らせるのは勘弁ね!ってのを婉曲的に表現しております。

だって、吉乃殿の鉄分補充のために考えた療養食メニューなのに、俺にも食わせろ!って言い出しそうなんだもん。


さて、メニューを考えないとね。まぁ、鉄分って言ったらレバーだよね。

あ、でも、養豚してるところ転生してから見てないしなぁ。馬も牛も農耕用か荷運び用で食用じゃないしなぁ…。

あれか?また、野鳥を捕獲してもらうしかないのか?

鴨とか、雉とか、山鳥とかの肝を美味しくいただけるようにしていくしかないのか?


他には…。確か豆腐って意外と鉄分含まれてたよな。これもどうにかして食材に組み込みたいよな。

後は、赤身の魚、血合いの部分とかかなぁ。今は夏だから鰹が獲れるはず。

鉄分の多い野菜と言えばほうれん草だけど、ほうれん草って、育ててるとのころ見ないんだよね…。


とりあえず、お滝さんに事情を話してっと。お滝さんは台所だからっと。


あ、居た居た。


「お滝さん!ちょっと良いですか?」


それを聞いたお滝さんは大きく溜息。どうしたの?


「なんだい、坊丸様。また、難題を抱えてきたのかい?どうせ、ちょっと、じゃ済まなくなるんだからね、きっと」


いや、自分から面倒事や難題を欲しているわけじゃあ、無いんですけどね。


トラブルに巻き込まれやすいって言いますか、無理難題を吹っかけてくる親戚の偉い人が近くに居やがるって言いますか、そんな感じです。


強いて言うなら名探偵コナ◯の周りでは自分の好き嫌いに関わらず、殺人事件が多発する、あの感じ?ちょっと違うか。


それはさておき。


「今度、生駒屋敷にて伯父上の側室、生駒吉乃殿に料理を振る舞うことになります。先日、吉乃殿にお会いした際、体が弱っていたようなので、夏でも食べやすくて精気がつくような物を差し上げたいと思った次第なのです」


「はぁ~、ほら、やっぱり、面倒事じゃないか。まぁ、仕方ないね。坊丸様の新しい料理を学べる機会だと思って手伝うよ」


「ありがたいです!で、食材で考えているのが、鴨や雉の肝、豆腐や厚揚げ、鰹に香味野菜ですね。茗荷や大葉なんかがあると嬉しいです。あと、唐辛子はまだ、残ってます?」


「唐辛子、ね。あるよ。しかし、鳥の肝に鰹だぁ~?両方とも臭みがあるからに体調の悪い人間に振る舞うのは悪手なんじゃないかい?」


フッフッフ。

そこはそれ。転生前の知識で美味しく仕上げてみせますぜ。


「あとは、あんかけのトロミの元になる片栗粉や葛粉、季節の野菜でキュウリやなんか葉物を」


「片栗粉?葛粉なら少しあるね。夏場は葉物はなかなか無いよ。つる菜くらいだね」


「じゃ、それで。ご飯とかうどんなんかは大丈夫ですよね」


「そこら辺は常備してあるし、うどんならチャッチャッと打つよ。任しときな」


「じゃ、食材の方、宜しくお願い致します。自分は明日、政秀寺に行った時に、虎哉禅師から生姜と大蒜をもらってきます。あ、交換するのに何かお土産になるようなものはないですか?」


「政秀寺に行くなら、茗荷と大葉ももらってきなよ。あそこの野菜は薬として大切に育てられてるからね。出来がいいんだよ。土産には、坊丸様が褒美としていつもの所望する砂糖を少し持ってきなよ。きっと喜ぶよ」


「ぐっ。砂糖ですか…。ちょっともったいないけど、土産にはそれが良さそうだし…。小さめの壺に入れてください。明日、持っていきます」


「小さい壺ね。薬器にでも少し移しとくよ。それ持って明日行ってきな」


で、翌日。

政秀寺に砂糖を持って訪問。清須に居た時より格段に近いので、楽です。

それにしても、この薬器とそれを入れる小袋を見ていると茶道の茶入や棗、仕覆のようですな。


まだ、織田家では一部の人が好んでいる程度だけど、後々メジャーな趣味、教養になるはずだから、こういう思いつきや見立ては大切にしとこ。


政秀寺では、虎哉禅師と色々勉学と問答。サクッと終わらして、お土産の砂糖をお渡し&生姜大蒜を所望。

なんで必要か結構聞かれましたが、吉乃殿の体調を戻す為に使うと言ったら、困っている衆生を救わんとする心意気は良しと言われて、分けてもらえました。

良かった良かった。


「ただいま帰りました。大蒜や香味野菜も分けて…。って、なんであんたがここに居るの?」


「この度、柴田の屋敷にて奉公することになりました桃花と申します。今後はよろしくお願い致しますね」


し、柴田の屋敷にくノ一腰元ツインズの姉が、居やがる!

つる菜は現在ではややレアな伝統野菜扱いですが、海岸などの砂地に生えるハマミズナ科の植物。夏が旬です。


薬器は棗の利休形16種類の一つに数えられるので、坊丸君のセンスは間違ってないです。


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宜しくお願いします。


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