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283話 小牧山城 お披露目 

ども、坊丸です。


小牧山城の落成記念、お披露目の会に奇妙丸様の小姓として呼ばれています。

なので、他の一般家臣の方々より先に新築の城内を拝見できる役得が。

やはり新築は良いですね。檜が贅沢に使用されてるのか、檜の香りがします。

それはさておき、奇妙丸様の私室には、五徳姫様、茶筅丸様、そしてたぶん勘八丸こと後の織田信孝が。


何も変わらなければ、こいつに本能寺の変後に殺されることになるのかぁ…。

まだ慣れない環境に、固くなって座っているお子様にしか見えないなぁ。なんだか、まだ実感わかないな、殺しにくる当人を見ても。

などと思い、勘八丸様の方を見ていたら、キッと睨まれました。


「そこな、者。ぶしつけであるぞ!」

って怒られた。まぁ、本当のことを言うわけにもいかないから適当に誤魔化して誤っておこう。


「申し訳ございません。初めて見るお顔の方がおり、奇妙丸様の小姓として奇妙丸様の側におられても安全な方なのかどうか推し量っておりました」


「ぶ、無礼な!我が名は勘八丸。奇妙様の弟である!」


「これは大変失礼いたしました。見知り置きましたので、以後はこのようなことは無いと誓って申し上げまする」


そう言って、独り大きく平伏して見せる。ちらっと眼だけで勘八丸様の方を見ると、まだ何か言いたそうな顔をしているので、もう少し平伏を続けておきますか。きっと、お桂殿あたりがいい加減にしなさいと言い出すだろうし。


「勘八丸そこまでにしておけ。私の小姓衆が我の為を思ってのことだ。それをその様にをいじめるな。それに今文句をつけたのは、我々の従兄弟ぞ。名を津田坊丸。今は亡き信行叔父上の忘れ形見だ。いずれ織田の連枝として働いてもらうことになる。勘八丸も坊丸のこと、見知りおけ。その他の者も、森可成が嫡男虎丸、佐久間信盛が嫡男牛助、佐久間盛次が嫡男理助だ。いずれも織田の重臣の嫡男。自分が織田を継ぐ頃には我が右腕、我が槍となって働くはずのものだ。これらの者も見知りおけ」

あ、お桂殿ではなくて奇妙丸様が止めてくれました。


「兄上がそうおっしゃるのであれば、これ以上は申さぬことと致します」


勘八丸様が矛を収めたのをみて、その横で明らかにホッとする茶筅丸様となぜか心ここにあらずという感じの五徳姫様。さて、頭を上げますか。


「では、話も落ち着いた様子。茶筅丸様達に奇妙丸様の小姓衆の紹介を、と思っておりましたが、奇妙丸様が自らご紹介いただいたようですので、紹介は省かせていただきますね。この後、帰蝶様、吉乃様のもとに伺い、その後、広間にて着座位置を確認いたします。宜しいですね」


帰蝶様と吉乃殿にご挨拶した後、広間に移動。

ふむふむ。広間の上の段、中央が信長伯父さんで向かって左側に奇妙丸様。

その周りを我々が露払い、太刀持ちと後ろ備えで警護ね。

奇妙丸様の斜め後ろに、五徳姫様。自分から見ると奇妙丸様のとは逆の斜めやや前になりますね。

その横に茶筅丸様と勘八丸様。お子様たちとは逆側に、帰蝶様と吉乃殿ね。

あ、今日はお市の方様は出番はないんだ。しかし、五徳姫様の立ち位置が常よりも良い場所の印象。


現代風にいうとリハーサルも終わって、各々私室に一度下がることになりましたが、すこし日が傾いてきましたよ。こんな遅くからお披露目するんだ。

あ、だから篝火台が多く準備されていたのか…。でもわざわざ篝火焚きながら落成記念のお披露目するのか…。信長伯父さんの独特な美意識ってやつでしょうか?わからんけど。


一休みしたのち、落成記念のお披露目の会がもうすこしで開宴に。

奥御殿から表の広間に奇妙丸様を護衛するように移動していくと、頂上の御殿部分を大きく取り囲むかのように篝火がたかれています。これはこれで荘厳だな。


そして、信長伯父さんの着座の合図の後、奇妙丸様とともに広間に入場。

広間にある建具がほぼ取り払われて、広間を取り囲むように篝火が!って凄いな。おっと、当たり前の様な顔をしてリハ通りにやらないと。

って、牛助君、周囲を見渡しすぎですよ!いくら美術芸術大好き系少年だとしても、まずは、きっちりお仕事しないと!


そんなこんなで、信長伯父さんのご家族一同着座。


「皆の者、夕刻寄りの参集。大儀。丹羽長秀、木下秀吉の尽力により、儂の思った通りの城が、期日を違えずにできた。両名、特に褒めてつかわす。

また、春の戦にて奮戦した皆、ご苦労であった。戦の後で移動の手筈を整えたのも併せてご苦労であった。

これよりはここ小牧山を我が居城とし、美濃攻め、犬山攻めを行うものとする。まずは、犬山の信清じゃ。皆の奮戦を期待する。

併せて、ここ小牧山の城を以後は、火車輪城(ひくるまわじょう)と呼ぶことにする。皆、知りおけ。もとはここ小牧山に飛車(ひくま)山龍音寺があった。今回築城に合わせ動かしたが、龍音寺の間間観音に感謝し、この篝火を焚いた姿に鑑み、火車輪城(ひくるまわじょう)を正式の名とする」


「「ははっ」」


群臣が一斉に平伏。外には闇が迫り、城内場外を何重にも囲むような篝火がその様子を幻想的に照らし出します。

でも、火車輪城って言いづらくない?普通に小牧山城で良い気がするんっですが…。それに厨二病っぽい感じが出てるし。


「最後に、三河との同盟について告げ置く。そこにいる我が長女五徳と松平元康が嫡子竹千代との婚約が決まった。これにて両家は単なる同盟からより強固な親類縁者としての関係を築いていくことになる。父信秀の代の遺恨は過去のものとし、比翼の鳥の如く協力していくことを目指す。よいな、皆の者」


「ははっ」


再度、群臣一同が平伏。

そうか、この発表があるから、五徳姫様は緊張で心ここにあらずって感じだったんだねぇ。

そして、婚約のお披露目があるから奇妙丸様の隣、三番手の位置に座っていたのか!

やっと、謎が解けたよ。うんうん。

小牧山城を「火車輪城」と呼んだのは事実らしいです。定光寺年代記に記されているそうです。

定光寺は瀬戸市にある臨済宗のお寺で、定光寺年代記はそこの住職の歴代の記録らしいです。


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