282話 小牧山城、初登城
活動報告にコメントをいただき、ありがとうございます。
リアクションはしておりませんが、全て目を通しております。
今後とも宜しくお願い致します。
ども、坊丸です。
小牧山城の麓の柴田屋敷に移住してきました。
もう、小牧山城も完成したように見えます。
家具も一式移しましたし、屋敷の一角には加藤さんと工作する鍛冶工房も作ってもらいました。
あ、加藤さんは陪臣扱いになっているので、今は城下にお宅を構えております。
そんな感じで引越し後のあれやこれやをしていると、あっという間に盛夏になり、小牧山城自体も落成したとのことで、お披露目の会が設けられることになりました。
今回も奇妙丸様の小姓役として招集が。
しかし、何故か申の刻、今で言うところの午後三時くらいに招集が。
なにか間違ってないか、柴田の親父殿に確認すると親父殿達は酉の刻ともっと遅い時間に集合が架かっているとのこと。
はぁ?こういう完成記念披露って清々しい午前中のうちにやるもんじゃないの?
って、大きな建物の完成記念披露とか完成記念パーティとかに、転生前も出たないけどさ。
橋とか、道とかの完成披露のテープカットをテレビのニュースで見たことある程度だし。
まぁ、信長伯父さんだからなぁ…。何か考えあるんだろうけど…。
で、当日。奇妙丸様の小姓役は重臣の子供三名と柴田家預かりの自分で構成されているので、小牧山城に移ってからは住んでる屋敷がすぐ近く。
大手門からの直線の坂の両脇にある重臣格の屋敷な住んでるおります。
その直線の坂を登って突き当り、右手にもう1つ門が有り、そこで集合となります。
確か、この門がなかった時はここからは、つづら折りの山道を登って頂上に着いたはず。
とりあえず、門の前で待てばいいかな。
って、既に虎丸君が門の前で待ってますよ。
「虎丸殿、ご無沙汰しております」
「おお、坊丸殿。息災でしたか。この引越しの事があったので、清須のお城には呼ばれることもありませんでしたからな。半年ぶりですかな」
うん、虎丸君は、大人びた喋りをするね。
「そうですね。半年ぶりですね」
「春先に美濃に攻め入った際は、父が柴田殿に救われたと申しておりました。それがしからも感謝の言葉、宜しくお伝え下され」
「承りました。柴田様には、虎丸殿の言葉確かに伝えおきます」
すると、坂の下から大声が。
「お〜い。虎丸!坊丸!早いな、お前ら!」
うん、理助だ。あいも変わらず、理助だ。そして、小姓役用の正装にも関わらず、坂を駆け上がってくる理助。やっぱり、理助だ。
「理助殿、久しぶり」「理助、お久しぶり〜」
「おう、お前らも元気だったか?この小牧山は、遊びに行くのに、一回大手門を出ないといけないから面倒だよな!」
理助、小牧山に移った感想、そこかよ。
「あっ、皆さん。お待たせしました」
一番年下の牛助君が坂を登ってきます。
「早く登ってこいよ!牛助!」
って、理助、そこは急かすとこじゃないだろ。
四人で二之門前で近況等を話していると、つづら折りの上から佐脇さんが降りてきました。
「うむ、皆、集まっておるな。では、参ろうか」
つづら折りは幅が広くなるかわりに整備されて不規則な石段の階段と斜面の山道が交じる感じになっていました。
これ、わざと足元を均一にしないことで足元に気を取らせる攻め手に対する嫌がらせの一環だろうな、きっと。
そして、頂上側には石垣や壁が。つづら折りの折り返しのところは上の壁、正面の壁に狭間が開いていて、めっちゃ狙わせてる感じ。
そして、ところどころに松明や篝火を焚く備えがおいてあるな。
二回切り替えして、さて頂上。と思ったら、頂上に向かう道に壁が。あれ?雰囲気変えたの?
「坊丸。そちらは壁だ。頂上の御殿に行くには逆だぞ」
あ、佐脇さん、すいません。
以前はこっちにも道があったから…。
「ふむ、坊丸は、以前に小牧山に登ってたことがあるのか?」
「はい、一度。小牧山のそばの政秀寺で学んでおりますので、沢彦禅師や虎哉禅師などと登ったことがございます」
本当は、小牧山の頂上で禅師、柴田の親父殿、丹羽長秀殿と色々と方針の相談というか、密談みたいのをしたんだけどね。
「ならば、そちらを向くのは仕方ないな。そちらから頂上に行くのは、昔の山道だ。今は、此処をぐるりと回って、表門に行くことになる。ほら、小僧ども、あそこを見てみろ。あれがこの小牧山城の特徴たる殿守だ。三重塔の様な形でな、物見櫓と殿の執務室を兼ねているそうだ。殿の威光がそのまま形になったような素晴らしい建物だろう」
「「素晴らしいものですな」」「すっげー」「良い!すごく良い」
自分と虎丸君は大人な対応ですが、理助は単純にびっくりしているし。牛助君は…、ね。
前からこういう美術品とか建築に対する審美眼というかそういうのが、子供のくせに鋭い感じなんだよねぇ〜。
殿主を眺めながら歩いていくと右手に石垣、左手には二間くらいの間隔で篝火を焚く為の篝火台が設置されています。
こんなにたくさん篝火台を置いてるけど、どうするだろう?
そう思いながら歩いていると、ぐるりと一周。
表門が見えてきたと思ったら、道が二手に別れていました。左手の道は少し勾配がきつくなって登っていく道。右手の道は少し下りになっている道。
登りの道の突き当りから立派な橋が渡してあって表門に繋がっていました。あ、下りの道はそのまま空堀の代わりになっていたんですね。そしてこの橋を渡らないと頂上に到達できないと。
「すごいな、この橋を落とせばそう簡単には御殿には到達出来ないな」
「ほぉ、虎丸は気づいたか。この橋は普段は装飾であるが、戦の際には橋を落とせば守りが万全になる仕掛けよ。落とし橋というらしい」
自分も気づいたとか理助が言ってましたが、本当かなぁ?
そういう話を聞きながら表門を潜ると、奇妙丸様の待つ奥御殿の前まで、案内いただきました。
で、いつもの足音のしない気配が薄い腰元さんに先導されて奥御殿、奇妙丸様の私室に到着。
「虎丸、理助、牛助、坊丸。久しぶりだな。息災か?」
四人して着座で平伏。奇妙丸様から声をかけていただいたので、それに答えます。
って、あれ?奇妙丸様とお桂殿以外に三人居るぞ。
五徳姫様、茶筅丸様以外にもうひとり。あれが、勘八丸様こと後の織田信孝、かな?
「素晴らしい…まるで慈恩の精神が形になったかのようだ!」てなかんじのことを宇宙世紀のガトーショコラっぽい名前の人が言ったりするわけです。
殿主の名称が天守に変わるのはいつ頃なんでしょうかね。
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