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27話 津田坊丸から津田信澄になること確定らしいですよ!

ども、ついさっき、元服後の名前が津田信澄に確定しました、坊丸です。


「ええっと、伯父上、自分、元服後は、信澄って名乗るんですかね?」


「ははっ!この柴田勝家、殿のお言葉しかと承りました。坊丸殿が、元服の折りには、殿の縁者の元服の儀に恥ずかしくないお方をえらび、坊丸殿元服の烏帽子親を立てさせていただきます。とののお言葉通り、元服後の諱は信澄とすること、間違いなく行うよう努めます」

明らかに、自分の失言ぽいのをうちけすように被せぎみに柴田の親父殿が大声で答えます。


「うむ、坊丸が元服するのは10年は先であろうがな、その時にはな、先程申したように諱を信澄と名乗らせよ!」


「「ははっ!」」

なんつうか、信長伯父上の一言で、自分の元服後の名前を津田信澄と名乗ることが決定したようです。

濁り酒から澄み酒を作った功績で、信澄って決まるなんて、衝撃の事実ですよ。

いや、本来の歴史がそうとは限らないから、この時間線だけの事実なんでしょうが…

この時間線を生きている人々にとっては、絶対の真実だかね…

こんなエピソードでも、殿から元服後の名前もらったって喜んだ方が良いのだろうか…分からぬ…


「うむ、美味いな、この澄み酒は!しかし、濁り酒の上澄みを集めた澄み酒と坊丸が作り出した澄み酒、どう呼び分けるかのぉ?どうだ、坊丸、なにか考えはあるか?」


「は、しからば濁り酒の上澄みを集めたものはすでに滓引きと別称がついております。炭で作った澄み酒なので、炭澄酒と書いてすみざけと呼ぶか、あるいは、炭で清らかにした酒ということで清酒と呼ぶか…。如何でございましょう、伯父上に選んでいただきたく」


「炭澄酒か、清酒か…、その二つであれば清酒じゃな。すっきりしたも味わいの酒という感じも出ていて、清酒の方が良いな。よし、今後はこれを清酒と呼ぶ。良いな」


「ははっ」


「うむ、美味い酒もできた。坊丸の元服後の諱も決まった!よし、そろそろ、次の膳じゃな」


「はっ、では二の膳を運ばせまする。二の膳は先日、伯父上が主催なされた鷹狩りで、柴田の親父殿が伯父上からいただきました鴨と先程の井上殿が名をあげましたタルタルソースを使った料理でございます」


「鴨とな、あれは10日も前ぞ、傷んでいないのか?」


「はっ、しっかり血抜きをし、味噌漬けにいたすことで日持ちさせております」


「味噌漬けか、塩気が強すぎる事はないか?まぁ、塩気がある方が酒と飯は進むがな」


「味噌からあげた後で一度味噌を拭き取り、軽く水ですすいでおります。その上で焼いておりますれば、ご安心を」


そう答えたところで、包丁方や台所に務める女衆が膳を交換する。


「二の膳か、左手が鴨じゃな、右手はなんじゃ、魚の揚げ物か?それにしても先程の真世寝酢がかかっておるのか?」


「は、左手は伯父上の明察の通り、鴨でございます。鴨のゆず味噌焼きとなっております。魚の方は鯵にうどん粉をまぶし、揚げたものです。それにタルタルソースというマヨネーズにひと手間加えたものをかけております」

と、説明していると、信長伯父さんは、箸でタルタルソースだけ取って食べちまいました。

うん、やっぱり、織田信長って好奇心強めの人なんだな…


「ほう、この多留多留蘇酢とやら、シャリシャリした食感があるの。そして、玉子の味が濃い」


「このタルタルソースは、マヨネーズにらっきょうの酢漬けをみじん切りにしたもの、ネギのみじん切り、青海苔、崩した茹で玉子を混ぜ合わせております」


「ふむ、真夜寝酢に更に食材を混ぜたのか…実に面白い」


「殿、つまみ食い、味見はそれくらいにして鴨と魚の揚げ物を、いただきませんか?」


「そうよな、帰蝶。ついつい多留多留蘇酢が、気になった。では、二の膳をいただくか」


しばし、伯父上、二人の夫人、奇妙丸が鴨を食べるのを見守る。正直、タルタルソースは、この時代のひとは好き嫌い別れると思ったから、鴨のゆず味噌焼きで保険をかけたんだけど…

鯵の唐揚げにタルタルソースかけたものの方も文字通り食い付いているので、少し安心です。


「坊丸、両方美味いな。鴨の焼き物は、ほのかな甘味があるが、そういう味噌なのか?」


「は、一度、漬け込んだ味噌を拭き取り、その上に味噌に刻んだ柚子、少しだけ水飴を加えて練ったものを塗ってから焼いております」


「水飴とな、このために買ったか?高かったのではないか?」


「いえ、麦と餅米から水飴を作りましてございます」


「はぁ?水飴を作ったと?」


「はい、唐の書物を参考に」

はい、嘘です。困ったときは、存在しない唐の書籍から知識を得たことにして誤魔化すのが、だいぶ板についてきましたよ、ええ。


「で、あるか。坊丸、たぶん、飴の作り方は飴職人の座によって守られているぞ、自分達の分をつくるのは良いが、あまり他所にだすな」


えぇ~、水飴広めちゃ駄目なの?職人の座なんて無ければ良いのに…


「伯父上の助言、承りました。しかし…」


「しかし…とはなんだ、坊丸」

あ、伯父上が甥っ子からの口答えに機嫌が悪くなったのが、よく分かります。やべぇ、またまた、やっちまったぽい。


「は、恐れながら、申し上げます。織田は、津島の商いの力、銭の力でつよくなったと聞いたことがございます。で、あれば、座を廃止し、商いをしたいもの、商いの機会を増やした方が銭が動き、引いては織田の力となるのではないですか?」


「っ!」自分の提言を聞いたとたん、伯父上は口元に持ってきていた箸を膳に置き、甥の料理を楽しむ伯父の顔から、戦国大名 織田信長の顔に一気に切り替わったように感じられました。そして、わずかに顔を上げ、虚空をにらんだように見えました。

その時間は、自分の感覚で一分も無かったと、思うんですが、さすが、織田信長、緊張感が半端無いものでしたよ。


その後、伯父上は緊張を少し解いた顔になり、こちらをゆっくりと見た。

「坊丸、貴様の意見はたぶん、正しい。だが、今ではない。今の意見、この信長、胸に留め置く。貴様も今の意見は、胸にしまっておけ」


「はっ」


「では、殿、お食事をいただきましょう」

「そうですね、吉乃殿の言うとおり、坊丸殿のお食事をいただきましょう」

「そうだな」


微妙に気まずい空気が流れていますが、食事再開の様子です。このまま、お終いだと、せっかく準備した食事が無駄になっちゃうからね、よかったよかった。


「鯵を油で揚げたものか…、これだけでも美味いがな、坊丸、多留多留蘇酢を付けたほうがうまいんだな?」


「そこは、好みになってしまいますが、素材の味を楽しむことと、ひと手間加えたものを楽しむこと、二通りで楽しめるかと思います」


「で、あるか」

「多留多留蘇酢をつけたほうがおいしいですよ、殿」

「両方とも好きですけど、多留多留蘇酢付きのほうがコクがあっていいですわね」


いや~、良かった。良かった。

タルタルソースは、戦国時代でも受け入れられそうです。多留多留蘇酢になっちゃったぽいけど。


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