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269話 下賜の菓子

ども、坊丸です。


今年の新年の儀も恙無く終了。

奇妙丸様に挨拶して帰宅の予定でしたが、奇妙丸様から新年にあわせて下賜があるとのこと。


色々と試作したりする割には、なにぶん小禄の身、いただけるものはいただきたい性分ですから、喜んで残らせていただきます。


いつものように清須城の奥向きに御案内いただきます。まぁ、新年の儀プラス何やらかにやらで、奥向きにも年数回参上しますから、勝手知ったる他人の城。


本当は案内なしでも、奇妙丸様の私室まで参上できますが、奥御殿は信長伯父さんのプライベート空間で、帰蝶様の差配する場所なので、いくら幼児でも信長伯父さんの家族以外の男性は勝手に動けません。


奥御殿の前まで、佐脇殿に御案内いただき、その後は多分くノ一だろうと予想している腰元さんの案内を受けます。


ちなみにくノ一姉妹の人は、二人ともそこそこ美人さんなんですが、印象に残らない不思議な感じ。あ、少しばかりクールビューティー系な感じの方がお姉さんのご様子。


そんな感じで観察していると、奇妙丸様の私室に到着。

お桂殿が既に着座しておりましたので、ご挨拶。


過日、奇妙丸様からの希望で献上した坊丸歌留多こと天正歌留多改変を和風に改変したものが出てきました。これで、少しばかり遊んで懇親することに。

あ、遊戯種目は神経衰弱ですか。しかも、バリバリ全部のカードを使ったガチなやつ。

本格的な神経衰弱ならそこまで接待プレイしなくても大丈夫かな?五人もいれば、記憶力以外に運の要素も絡むでしょうし。


四半刻程遊んでいると、くノ一疑いの腰元姉妹が、何やら運んでまいりました。


小ぶりの塗り椀が載ったお膳ですね。

ということは、何やら、お菓子でもいただけるのでしょうか?ありがたい。


「奇妙丸様、菓子が参りました。お手を止めて、皆様に振る舞われては?」


「お桂、ありがとう。皆の者、手を止めよ。こちらは、先に松平殿が清須に同盟交渉で訪問された際に出された、饗応膳の菓子である。此度は新年のめでたき日ゆえ、包丁方に命じて作らせた。では、皆で食べようか」


「「「「ハッ。ありがたくいただきまする」」」」


森虎丸君が声をあげるのにあわせて、理助、牛助くんと唱和しつつ、平伏。

ここらへんは、年数回しか集まらないけど、流石に三年も小姓役をやっていますからタイミングを合わせるのは上手になっております。


膳から配られた椀を推しいただいきまして、ありがたくいただきます。


って、やっぱりプリンでしたか…。うん、これのことはよく知っている。ていうか、包丁頭の井上左膳殿に教えたの自分だし。


それはさておき、美味しくいただきます。


他の三名は最初は、おっかなびっくりつついていましたが、自分が躊躇なく口に運び、甘くて美味しいという感想を伝えると、三名とも続いて食べ始めましたよ。

理助と虎丸君は、比較的すぐに。牛助君は、理助と虎丸君が食べたのを見てから口に入れました。ここらへん、三人の性格が出ていて面白い感じです。

虎丸君と牛助君は、口に入れると、甘い、美味いと感想を言いながら食べますが、理助だけは感想も言わずにバクバク食べやがりましたよ…。

主君から下賜いただいたお菓子なんだから、ありがたく食べろよなぁ…。


そう言えば、味わいが少しばかりあっさりしている感じですな。

多分、これは牛乳では無く、豆乳で作ってますな。そんな違いを確認しながら食べていると、お桂殿からの視線が…。なんて、プレッシャーだ。

あ、もしかして、お桂殿はこれを自分が発案した菓子だとご存知なのでしょうか?

と、言う事は、「奇妙丸様から下賜された菓子でみんなありがたがっているんだから、『これ、自分の発案の菓子です』とか余計なこと言うような真似しませんよね?わかってますよ?」という意味のプレッシャーでしょうか?


きっとそうだと推察&理解。わかってますよ!とお桂殿にアピールしといたほうが良さそうなので、お桂殿の方に笑顔を向けて、小さく数回頷いておきます。

お桂殿から、笑顔とゆっくりした頷きをいただきましたので、正解だったご様子。良かった。


奇妙丸様に見事なモノをいただいて感動した!とか、誠に美味しゅうございました!とか感想を四人で伝えると、奇妙丸様もご満悦のご様子。

小姓役四名のここ一年にあったことなど身の回りのことをご報告して、本日は解散に。


さてさて、仕事した~♪という感じでお暇しようとすると、お桂殿から「坊丸殿にはちとお話したき儀がありますので、そのままのこっていただきたく」などと言われてしました…。


なにか、やらかしたっけ?なにも問題なかったと思うんですけどなぁ…。居残りかぁ、やだなぁ。

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