258話 照り焼きと唐揚げと
ども、坊丸です。
ヤマドリのモモ肉を使って鳥の照り焼きをつくりました。結構美味しくできたので、饗応料理に出そうとしたら、お滝さんからダメ出しが…。
何故だ。
「ヤマドリの照り焼き、みんな美味しいって言ってくれましたけど、なんで駄目なんですか?」
「確認するけど、これは焼き鳥の代わりに出すつもりなんだろ?」
「そのつもりですけど…」
「饗応料理なら、たぶん、もう一、二品肉料理があるはず。そして、それは、焼き鳥の様な単純な料理ではないはずだよ」
「えっと、たしか雁の豆っていうのですね」
「やっぱりね。キジ肉の肉自体の美味さを味わうのが目的とした塩で焼いただけの焼き鳥と青豆と炊合せて複雑な旨味を味わう雁の豆の組み合わせなんだから、その妙を崩してはダメさぁね。
申し訳ないが、キジ肉を塩でいただくのが良いんだよ。そして、そういう意図の構成みたいだからねぇ」
「うむ、儂もキジ肉は塩焼きが良いな。まぁ、このタレ焼きも美味かったが」
親父殿、余計なところで口を挟まないで…。
「まあ、せっかく考えたんだから、他の料理と差し替えるか、焼き鳥の添え物として出すかだね」
むむむ。じゃあ、焼き鳥の塩とタレのコンビで出す形を提案するか…。
そんな話をしていたら、中間や若衆の方々は散開していましたよ。
「お滝さん、困ったことに、饗応の回数が変わったので、料理をもう少し考えないといけなくなりまして…。」
そして、状況を説明。まだ居残っていた柴田の親父殿も説明を手伝ってくれました。
追加で行われる饗応膳にべっ甲漬け、白身魚のムニエル、天婦羅を使うつもりだと話すと、お滝さんからも柴田の親父殿と同様に肉料理が無いことを指摘されました。
そして、その内容ならと、夕食の一の膳にべっ甲漬け、二の膳か三の膳に天婦羅を持って来て、翌朝の膳にムニエルを付けるよう提案されましたよ。ただ、他の料理との兼ね合いもあるから、饗応料理を考えてる人に確認を取ったほうがいいとも言われました。
料理については本当に頼りになります、お滝さん。
肉料理で、ジビエになるけど、鳥のお肉なら、唐揚げでしょう!とおもい、お滝さんに話してみたら、またしてもダメ出しが…。
「坊丸様、それは良くないね。夜の膳の坊丸様の新作料理が、二の膳、三の膳で両方とも揚げ物になっちまうじゃないか。それは、良くない」
はぁ、そんなものなのでしょうか。
あれ?てことは、初日の昼の膳、焼き鳥、雁の豆をそのままに、野菜料理を一品変更してもらって、そこに唐揚げをねじ込めばいいんじゃない?そして、照り焼きを夜の膳で出せば…。
この線で、再度お滝さんに提案&確認。
「ああ、その感じならいいじゃないかい。まぁ、お城の包丁頭、なんと言ったけ。井上さんだったけ?その人の考えもあるだろうけど、取り合わせ的には今の感じのほうがいいと思うよ」
よし、とりあえず、お滝さんから合格いただきました!
じゃ、山鳥で唐揚げを作ってみましょうか。鶏に比べて、肉そのものの旨味が強いから、垂れ味噌とニンニクは少なめで、肉を柔らかくする生姜、臭み消しの酒はやや多めにして下味をつけます。
後は、小麦粉メインで衣を。
ちなみに、米粉を使った唐揚げも試したいんですが…。現在は米粉は作っていません。
なぜかって?平成令和だと米粉を使った料理が多いので、同じ感覚で一度米粉を作ったんですが…。
柴田の親父殿にげんこつを喰らいました。
大切な米を粉にしてしまうとは何事かぁ!とまじで怒られました。
いや、お滝さんにも「もったいない、もったいない」と言われまくってたんですが。それでも、強行して作ったんですよ。そしたら、柴田の親父殿の拳をくらうはめに。この時代の人の米を大切にする心を忘れてたわ…。
米粉を使った料理は、偉くなって、自分で自由に差配できる米が大量にある状況になるまで保留することにしましたよ…。
それはさておき、ヤマドリのお肉で唐揚げを作りました。
久々の唐揚げ、めっちゃうまぁ…。鶏よりも歯ごたえがあり野趣が強いんですけど、旨味がすごい。
これは、良いものが出来ました!
そして、いつの間にか、周囲に湧くお妙さん、中間や若衆。
揚げ物の音と匂いでまたなにか作ってるなとわかるようで。試作品を分けてもらえるかも?と思うらしく。
いや、余った分は提供しますけど。
婆上さま、ごめんなさい。照り焼きも唐揚げも夕食の膳には並びそうもないです。
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