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255話 カルパッチョが、軽八って名前になってしまいそうです

ども、坊丸です。


タコのカルパッチョを試作する裏で、バターを柴田家の男衆に作ってもらいました。


本来は若衆や中間に声を掛けて作ってもらうはずだんったんですが…。何故か、柴田の親父殿もバターを作ってました。予想通りといえば予想通りなんですがね。


ま、それはさておき、バターを手に入れました!

後はイースト菌を手に入れれば、パンを作れます!って今回の目標はそこじゃなかった。


さすがに鮑はすぐには手に入らないので、この方法で作ったバターが本当に美味しいかを確認するため、スズキのムニエルなど作ってみること。あ、柴田の親父殿の慰労も兼ねてますが。


お滝さんにスズキを三枚下ろしにしてもらって、腹側の良きところに塩を振って小麦粉をまぶし、後は男衆謹製のバターで焼き上げれば完成です。


まぁ、試作品だし。少し小ぶりにカットした物で作ったから、夕食用自分を含めて三人前作ってもまだスズキ余ってるんですがね。


そして、せっかく開発しても饗応料理として使う場所がねぇんですよ。

饗応膳は一膳目は鯛メイン、二膳目は鮑メイン、三膳目は鳥の料理と季節の野菜を炊いたものになっているわけです。つまりは、せっかく作ったスズキのムニエル、饗応料理として差し込む場所がね、無いんですよね。

三膳目も魚のメインに変えてOKならいいんですが…。当面は焼き鳥を改善する方向でなにか考えますか。


明日、市場になにか鶏肉出てないか確認だな。もしなければ…。お城に無心する方向で。


焼き鳥ってなってるけど、多分、鶏を串に打ったあの「焼き鳥」とは違うんでしょうね、きっと。

一応、お滝さんに聞いてみよう。


「お滝さん。松平殿を饗応する料理に焼き鳥って料理があるんですが、どんな料理ですか?」


「ん?いつぞやの正月料理にも出したことあるはずだよ。ほら、雉肉を串に刺して塩焼きしたやつ」


あ、あれでしたか。肉の大きさが転生前の焼き鳥よりも一回り二まわり大きい上に一個しか刺さっていなかったからあれを「焼き鳥」とは認識していませんでしたよ…。


それにしても、転生前の「焼き鳥」を思い出しちゃったよ…。戦国時代と同じ「塩の焼き鳥」も良いけど、甘じょっぱい「タレの焼き鳥」も美味しいよね。


今ある材料だと、砂糖や蜂蜜とタレ味噌をうまく合わせれば近いものができるんじゃないかしら?


酒やみりんで味を整えて、照焼きチキン的なやつとかもね。垂れ味噌にニンニクや唐辛子を漬け込めば複雑な旨味の山賊焼き的なやつもつくれるかもしれないなぁ。


あ、唐辛子とタレ味噌を使えば、伊豆大島で食べたメジナのベッコウ漬けみたいなものも作れるな。一晩くらい漬け込むんだよね。


せっかくだから余ったスズキを唐辛子とタレ味噌の漬けダレに漬け込んでみよう。

で、明日の朝、お滝さんに朝食として出してもらおうっと。


台所でお滝さんと色々饗応料理対策をしたわけですが、その日の晩は、蛸のカルパッチョとスズキのムニエルを夕食に出すことに。


和風の塗り膳にカルパッチョとスズキのムニエルが載っている姿はなかなかの違和感ですね。

カルパッチョは一人一人小さめに盛り直して頂いた様子。


「どうした、今日は?なにか祝い事か?しかし、見慣れぬ料理だな」


と、品数が多いことを嬉しそうにしつつ、見たことがない料理に警戒感もある様子の親父殿。


「権六、祝い事などありませんよ。どうしたのです、これは。なんでもない普段の日にこんなに何品も料理を作っては、もったいないですよ!」


あ、婆上様がすこし怒っておられる。もったいない精神が発露して、怒っておられるご様子です。

これは、怒りを鎮めねば…。


「親父殿、婆上様、申し訳ございませぬ。先日、伯父上から頂いた松平殿の饗応料理の試作の一部、にございます。こたびのタコやスズキは坊丸の俸禄、給金より出しておりますれば、ご安心を」


「なら、結構です。坊丸の振る舞い料理ということですね。では、いただきましょう、権六」


柴田の財布が傷んでいないことを知った婆上様、ご機嫌斜めが真っ直ぐに。良かった良かった。


「これは、タコ刺しに野菜を盛り付けたのか?タコ刺しはタコ刺しだけで、塩か酢で食べたいものだが…」


そのタコ刺しは、昼に食べたでしょうよ、親父殿ぉ。


「タコのカルパッチョでございます。塩や酢、油に垂れ味噌などのタレがかかっておりますれば、野菜とタコを混ぜてお食べいただきたく」


「ふむ、このタコの上にかかってるのは、専用のタレということか。では、坊丸の言う通りにっと」


野菜とタコを一緒に口に放り込む用に食べる親父殿。

婆上様は、警戒しているのか、親父殿の感想待ちのご様子。


「このタレ、良いな。タコの旨味を活かしつつ、うむ、少しばかり辛いが、美味いぞ。良いものだな、このカルパチョとやら」


「では、私も。大葉の香り、茗荷の苦味がこのタレでうまくまとめられていて良いですよ、坊丸。

ニンニクの刺激が私にはちと強いですが。男の方なら好むかもしれませんね。

ただ、この軽八というもの、饗応料理にはちと野趣が強いかと」


ふむふむ、参考になる意見ありがとうございます。てか、食リポうまいな、二人とも。

後、婆上様がカルパッチョのこと、カルハチとか言ってましたが、気のせいですよね。


「この焼き魚は、昼間に親父殿や男衆に牛乳を振って固めてもらったもの、牛酪で焼いたものです。スズキにうどん粉を振ってから焼いてあります」


「魚にうどん粉?揚げたのではなく、それを焼いたと…。まぁ、坊丸の作るものはだいたい美味いからな。信じて食べてみよう。って、美味いではないか!これ!」


一口目で予想通りのリアクションとってくれる親父殿、大好きです。

婆上様は、コメント無かったけどいい笑顔でパクパク食べていたから、美味しく頂いたものと判断させていただきます。


「坊丸、食べないなら、儂がもらってやるぞ!」


あなたたちのリアクションやコメントを待ってただけですから!自分もすぐに美味しく頂きますから!

って、親父殿、そんな物欲しそうにこっち見ない!

ムニエルは、フランス語で粉屋を意味するムニエからきた料理名です。


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宜しくお願いします。

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