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240話 小牧山、春秋。

花粉症の時期は、色々大変です。なので、更新は滞りがちになってしまいます。

ども、坊丸です。

柴田の親父殿、吉田次兵衛さんと小牧山に来ています。

そして何故か、沢彦禅師と虎哉禅師も一緒です。それどころか、丹羽長秀殿まで側にいます。どうしてこうなった?


で、こうなる一刻ほど前に時に戻して、お話を始めることになるわけです。


この日は、月数回の政秀寺でのお勉強の日だったわけです。

最近は、乗馬も問題なくできるようになりましたので、一人で政秀寺に向かいましたよ、自分。

で、この日は、虎哉禅師から春秋左氏伝、司馬遷の史記、陳寿の三国志の比較で紀伝体について学ぶというなかなかマニアックな講義を受けることになったわけで。


四半刻程したところで虎哉禅師の方から脱線し、傷寒雑病論の張仲景が孫呉の孫策孫権兄弟の親父、孫堅の後任で長沙ってところの太守をしてた話になったり、傷寒雑病論の漢方薬の話から、鑑真和上が生薬を多く持ち込んだ話になったりと飛躍しまくり。

基本、虎哉禅師って博覧強記なんだよね…。そのくせ、へそ曲がりな表現方法を好むから、すこし困る…。

ま、それでも、漢方に少し興味があるので、真面目に話を聞いていたら、虎哉禅師が境内の一角で育てている生薬を見に行くことに。


で、境内を歩いていたら、なんと柴田の親父と吉田次兵衛さんが沢彦禅師と歩いてるわけで。


そりゃあ、声かけますよね、普通。わざわざ、預り親が自分の勉学する寺にタイミング良く現れたら、何かあったのかと思うじゃないですか。


「親父殿!如何いたしたのです?」


「おお、坊丸か。そうか、今日は政秀寺で勉学か!」


って、自分に急用があったわけでは無いのね。まぁ、良かったとしておきましょう!


「はい。虎哉禅師と禅師が育てている草花等を見せていただいておりました。なんでも、薬になるものばかりだとか!」


って、暫く前に生姜と大蒜を分けてもらいましたがね。


「ところで、親父殿と次兵衛殿はどうして、こちらへ?なんぞありましたか?」


「ん?そうか、坊丸には話して居らなんだな。先日、五郎左より当家の屋敷の区画が決まった故、確認するよう連絡が来たのだ。それゆえ、小牧山まで出向いたというわけじゃ」


「屋敷の縄張りのためであれば、小牧山に直接向かうのが良いところですが、殿が、坊丸様がお世話になっている沢彦禅師や虎哉禅師にもご挨拶を、ということで、政秀寺に馬を預ける次第となったわけでございまするよ、坊丸様」


「これ、次兵衛。余計なことを申すな」


「そういうことでございましたか、柴田殿。しかし、そのような気遣いは無用ですぞ。坊丸様は、こちらの意図をくみ取ったうえで学ぼうとする姿勢が見えますからな。まぁ、時々、予想もしないものの考え方をしたり、仏法や慣習を無視するようなことを言うのが、玉に瑕ですが。

それでも、自分の興味のないことは聞く耳を持たない、吉法師とかいう、自分が教えた生徒よりはなんぼも楽でございますな。

それに、虎哉禅師にも良い修行となりましょう。自分が知っていることを他人にお教えるということは、知識の見直しにもなりますゆえ」


「はい!虎哉禅師にも、沢彦禅師もいつもよくしてもらっております、親父殿」


「さて、殿。沢彦禅師にも虎哉禅師にもお会いできましたゆえ、小牧山まで参りましょう。小牧山より戻った後に、今一度、ご挨拶の上、お話をさせていただくのが宜しゅうございますぞ」


「おお、そうであるな」


「一つ、よろしゅうございますか?」

柴田の親父殿と次兵衛さんの話の合間を狙って、虎哉禅師が親父殿に声をかけました。


「虎哉禅師、何かございますか?」

次兵衛さんが、すこし困ったような感じで虎哉禅師に返事をしました。その様子をわかった上で、あえて無視して自分の話を始める虎哉禅師。へそ曲がりというよりひねくれ者に見える瞬間だよね。


「もしよろしければ、小牧山の築城の様子を後学のため、拙僧も見てみたいのですが、いかがでしょうか?これにいる坊丸が後々、築城するようなときのためにもなりましょう」


え?なんか、虎哉禅師が小牧山の築城の様子を見にいきたいって感じな上に、自分も連れていかれる流れだぞ、これ。


「我らは問題ございませぬ。ここから小牧山までそう遠くもありませぬ故、歩くつもりでしたが、禅師もそれでよろしゅうござりますか?」


「それで、結構でございます」


あれ?自分は行きたいなんて一言も言ってないのに、完全にいく流れだぞ。しかも、徒歩で。


「ふむ、城普請の奉行は丹羽長秀殿でしたな。ご挨拶もしたいし、小牧山が今後どうなるのか、縄張りの時点で見てみたいものですな。拙僧も同行してよろしいか、権六殿」


え!沢彦禅師も一緒に行くの?何それ?


「おお、沢彦禅師も同道なさりますか!では、五人で参りましょうか!」


「これ、宗尋。先触れを。丹羽長秀殿に、我ら二人が柴田勝家殿に同道する旨、一走りしてお伝えを」


沢彦禅師がそばにいる宗尋さんに向かって声をかけました。


「はい。わかりました。沢彦様。では、皆様、失礼いたします」

そう言うと、宗尋さんは、足早に政秀寺を出ていきました。


「では、各々方。参りましょうか」

うん、なんとなくこのメンツだと、沢彦禅師が一番先頭で、その隣に柴田の親父殿。後列に自分、次兵衛さん、虎哉禅師が並ぶ形になるんですね。


そんなこんなで、五人で小牧山に向かうことに。やれやれ、だぜ。

皆様も、花粉症の時期、体調にはお気をつけください。


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