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222話 幼女、爆弾発言す。

ども、坊丸です。


カルタをお犬の方様の下に納入しに来ている坊丸です。

どうやら、お犬の方様の嫁入道具のうち、遊具は自分作ったカルタ以外に百人一首もある模様。


正直、ホッとしました。だって自分の作ったカルタだけで、佐治の家の人達にこんな変なもん持ってきて!みたいに言われたらどうしようって、少しだけ思っていたから。


それよりも、お犬の方様、「坊丸カルタ」って言ってましたよね?

その真意を聞きたい。いや、聞かせてください。


「南蛮渡来のカルタから、坊丸が日ノ本の人がわかりやすく、縁起が良いように変えたのでしょう?ならば、名前も変えるべきです。

坊丸が作ったのだから、坊丸カルタ。それで良いではありませんがか。

それに、これ、もっと作るのでしょう?いえ、もっと作るべきです。

南蛮渡来のカルタは堺の商人や南の方の大名しか買えないでしょうから、もっと安くしてどんどん売れば良いのです。

良い物を安く。商いの基本です。そして、それには良い名を付けて人口に膾炙させるのが良いのです」


あ、お犬の方様も、織田だ。

ただ綺麗なお姫様じゃなくて、この商いの感があるあたり、やっぱり織田の人だ。


「さすがにそれがしの名を付けるのは…。永禄カルタや清須カルタで良いのではないですか?」


「本に、坊丸は欲がない。せっかくだから名を売ればよいのに…」


「坊兄ぃのカルタだから、坊丸カルタなんだね。うん、分かった」

「「坊丸カルタ〜」」


って、奇妙丸様たち。犬棒カルタみたいにすぐにその名前に馴染むのやめてください。


「と、それはさておき、百人一首もお持ちになるのですね。百人一首があれば、このカルタはいらなかったのでは?」


「坊丸、百人一首は、全ての句を覚えて遊ぶが基本。皆が、覚えているわけではありません。それに比べてこのカルタは、誰でも遊べるもの、そこが違うのですよ」


と、お市の方様から教え諭されました。


「それで、百人一首と貝合わせなのですね。知識がある方とは百人一首、和歌を諳んじてない方と遊ぶ時は、貝合わせ。そして、このカルタは貝合わせの代わり、と」


「「そういうことです」」


あ、お犬の方様とお市の方様がハモった。

そして、二人で、顔を見合わせて、クスクス笑ってらっしゃる。

うん、綺麗&可愛い。

って、その様子を見て、斜め後ろの文荷斎さんの顔が蕩けているんですが、うん、気が付かないふり。


あれ?百人一首があるってことは、十二単のお姫様や公家の偉い人の絵もそこには描いて有るんじゃね?


それを参考にすれば、ジャックを武者、クイーンを姫様、キングを偉い人の絵にできたんじゃぁ…。

今回の作品には反映できないから、次のロットを作るときは、参考にしたり、絵画担当の加藤さんに提案したりしよう。


そして、その後は、お子様達にお犬の方様、お市の方様も加わって七並べ、ブラックジャック、じじ抜きを教えながらプレイ。

自分が口で説明したルールを、腰元の人が一生懸命書き取ってくれてました。そこまで、気が回らなくてごめんなさいね。


販売する時は、幾つか遊び方を記載した用紙を添付しようっと。

それとは別に遊び方の本とかも作れるかな。

ポーカーとか賭博で使いそうなやつは本の方に記載して、ルールを明確にしつつ、小銭を稼ぐのも良いかも。


お犬の方様の一言から夢が広がるぜ。クックック。


そんな感じで叔母、甥、姪、あるいは従兄弟で楽しく遊んだわけです。


ついつい楽しく遊んで、一刻ほど経ったので、長居しすぎるのはどうかな、と思い、文荷斎さんに目配せの後、帰宅の途につくため、お犬の方様に挨拶をすることに。


「さてさて、楽しい時間を過ごさせていただきました。一度、カルタを片付けさせていただき、お犬の方様にお納めきいただきたく存じます。

坊丸とそこな中村文荷斎はそこで失礼させていただきますが、皆さまは、今一度、ごゆるりとお遊びいただきたく」


そう言って平伏すると、腰元の人達も察してくれたのか、片付けモードに入りました。

我々とお子様達を引き上げさせて、ゆっくり自分達で遊びたいだけかもしれませんが。


片付けに入り、最初は少しだけグズっていた奇妙丸様以下の織田のプリンス、プリンセスたちも、奇妙丸様が下の二人をたしなめたところで、少し落ち着きました。


「坊丸、嫁入道具に素晴らしいものを作ってくださり、本当にありがとう。今日の楽しい時間の思い出とともに佐治の家に行っても、このカルタを大切にします」


「私からも、姉上の為に骨を折って下さり、感謝致します。坊丸、それと中村殿」


お犬の方様とお市の方様から頭を下げられた上に、丁寧な感謝の言葉までいただきました。

叔母だけども、本当に綺麗なお二人からそう言ってもらえるのは、ちょっと嬉しいわけで。


「お犬の方様に気に入ってもらえたようで何よりでございます。改めまして、ご成婚おめでとうございます」


そう言って、文荷斎さんと今一度頭を下げました。


「奇妙、茶筅、五徳。従兄(いとこ)の坊丸殿がお帰りです。今日、遊んでいただいたことの感謝とお別れの挨拶をなさい」


お犬の方様が、三人に一言挨拶を、と促します。


「坊丸兄様、美しいカルタを作ったこと、さすがです。また、坊丸兄様と自分の持つカルタで遊びたいです。今日は楽しかった。今日はここでお別れですが、またお城に来たら遊んで下さいね」


「坊丸兄、楽しかった。またね」


「坊兄様。今日は楽しかったです。でね、私がお嫁さんに行くときも、これと同じモノを作ってくださいね。それで、坊丸兄様のところにお嫁に行くの。ね、いいでしょ」


え、いや、五徳姫様?

何を仰っているのかわかっているのかな?そして、それ、ちょっとヤバい発言だよね。

あ、案の定、周りの大人たちが凍りついたり、固まったりしてますよ。さてさて、どうしたものか…。

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