221話 カルタ納入、そして、お犬の方様の我が儘
ども、坊丸です。
お犬の方様からご依頼のカルタを作ることになった坊丸です。
ま、自分はスポンサー兼プロデューサーみたいなもんで、いつもの如く、福島さんや加藤さんの手を借りるわけですが。
あ、今回は、加藤さんが奉書紙に描いた絵を木札に貼る作業をお妙さんやお千ちゃんと一緒にやりましたから、製作工程にも参加してました。
文荷斎さん、加藤さん、福島さんの役割分担が決まったら後はサクッと出来るだろうと思ってたんですがね。
結局、福島さんが職人の気質が炸裂して、ベースになる木札のサイズ感が納得行かなかったらしく、何種類も試作して、柴田家に居る女性陣に持たせて意見を聞いては直しをすること、数度。
やっとサイズが決まったと思ったら、今度はまさかの3のカードで揉めることに。
右上がり、左上がりの斜めにスート三個の配置、縦に三個の配置、三角形と逆三角形の配置でまさかの大揉め。
あと、10も。五個を縦二列にするか、三四三の横三列にするか、一三三三と四列、三三四の横三列にするか、ってかんじで。
って、サッカーのフォーメーションじゃないんだから…。
4-2-3-1、4-1-4-1、4-3-2-1、4-4-2とか提案して混乱させちゃうぞ、この野郎!ってなりましたよ、ホント。
結局3は、縦一列、10は、343の横三列になりました。
なんでそうなったかって…。色々あったんで聞かないで…。
もう、スートの種類もスートの並びも絵札の雰囲気も違うから、これは、自分の知っているトランプじゃないよ…。
本当は自分の知ってる形のトランプを作りたかったけどね。
ま、これは嫁入道具のカルタだから仕方ないので。
うん、今、自分を自分で納得させたので、オッケーです。
で、完成させた「カルタ」を持って、文荷斎さんと清須城奥御殿に納入に行きました。
キチンと納入の前日に使者を出していたので、スムーズに奥御殿に移動。
ミッションとしては、お犬の方様に「カルタ」を照覧してもらって納入。遊び方を追加で一つ二つ教えて、帰宅って感じですかね。
で、本日は、お犬の方様のお部屋に案内されました。
「津田坊丸でございます。ご依頼の品をお持ち致しました。付き添いとして、以前、お目通りしている中村文荷斎殿も一緒にございまする」
部屋の前で言上して、お部屋に入室。自分の後ろに風呂敷に包んだ「カルタ」を持った文荷斎さんが付き従います。
あ、お犬の方様の部屋、お香が炊いてあって良い香りがしますね。
あれ?
お市の方様は、妹御だから良いとして、なにゆえ、奇妙丸様、茶筅丸様、五徳姫様まで、座ってやがりますか?
「「「坊兄ぃ、こんにちわ」」」
「あ、はい。こんにちわ」
「犬姉様のカルタできたんでしょ!見せて見せて!」
奇妙丸様、何故ゆえにあなたが一番前のめりですか?
まぁ、良いんですけど。
奇妙丸様は、今回のカルタのもとになったラテンスートのプレイングカード、まぁ、南蛮カルタとでも言うものの所持者だからね。自分の物と比較したいんだよね、きっと。
で、依頼主の前に箱の状態で提示。
本当は漆塗りで螺鈿細工を加えたいところですが…。
坊丸には、そんな職人さんの伝手も時間もないわけで。
流石に何の意匠もない箱ってわけにはいかないので、福島さんの伝手で透かし彫りを少しだけ入れてもらいました。まぁ、これでご勘弁を。
後で、嫁ぎ先の財力で綺麗な箱を設えてもらってください。
早速箱から出して見せて下さいとのご依頼が。
あ、今から並べますか。そして、全部?了解しました。
仕方ないので、箱からカルタを出して並べ始めると、奇妙丸様、茶筅丸様、五徳姫様も手伝うと言い出したわけで。
頼むから、嫁入道具、嫁入り前にグチャグチャにしないでね。
どうしたものかと、困った顔でお犬の方様を見たわけです。
「ここを離れると、奇妙や五徳とも会うことはなかなか難しいでしょうから、良いのです、坊丸。甥や姪の楽しそうな姿を見れるのも、良いものですよ」
と言われたので、坊丸、諦めました。
三人を促しながら、並べてもらっていると、お犬の方様から再び声がかかりました。
「坊丸、先程の甥や姪には、貴方も入っていますよ。ここには、文荷斎以外は、家臣の目はありません。家臣としてではなく、一族のものとして振る舞いなさい。文荷斎、今は、今だけは、私の我が儘として、目を瞑っていただけますか」
「お犬の方様のご希望なれば、この中村文荷斎、ここであったこと見たことは、他言致しませぬ」
って、二人にそんなことを言われても…。
「坊兄ぃ、並べよう!そして、遊ぼう!」
話の内容を理解している、奇妙丸様は、すかさずもっと一緒遊ぶ事を激しく希望してきましたよ。
「あれ?坊兄ぃ。僕のと少し違うね」
あ、気づきました?本当は全部並べてから説明しようと思っていたのですが…。
ま、いっか。無礼講までは行かなくても、少しだけ態度を崩していいみたいだし。
なので、並べながら、カードをお犬の方様に時々見せながら違いを説明していきます。
スートの一部を変えたこと、10までにしたこと、南蛮人ではなく、武者の絵にしたことなどなど。
時々、文荷斎さんが追加の説明をしてくれるので、自分は大体でOKでした。
信長伯父さんに墨俣城改修作業のプレゼンするに比べたら、もう、楽。激しく、楽。
説明を聞き終わった、お犬の方様から感想をいただきました。
「絵柄を縁起の良いものにしたり、武者絵にしたりと、工夫されたのですね、坊丸。感謝致します。百人一首と貝合わせを嫁入道具の遊具にしようと思いましたが、百人一首と坊丸カルタで良さそうですね」
ん?お犬の方様、今、このカルタを変な名前で呼びませんでした?気のせいですか?
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