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213話 墨俣城改修作戦!七の段 

ども、坊丸です。


墨俣城改修作戦の一番の障害が、まさか尾張三山の神主さんになるとは思いませんでした。

そして、その問題解決の切り札が、自分になるなんて…。秀吉の墨俣一夜城の逸話とは全然違う展開になって来やがりましたよ。まったく、もぉ。

言い出しっぺは自分ですからね。頑張ってお仕事してきますよ。はぁ〜。


そして、数日後、小牧山や政秀寺から北東、尾張白山神社が鎮座する山のふもとにある社務所にて神主さん達と会う手はずになりました。


「織田信行が一子、津田坊丸と申します。尾張三山の神主の皆様にはお初にお目にかかります」


そう言って、神主さん達に一礼。

自分の斜め後ろには、後見役の柴田の親父殿、心配でついてきた中村文荷斎さんもいます。


「私が、尾張白山神社の神主を務めております。大山一白斎と申します。そして、こちらが尾張二宮の大縣神社の神主、向山殿。そして、こちらが尾張浅間大社の神主、大門殿でございます。以後、見知り置きを」


うん、真ん中が白山神社の神主さんで、自分から見て右手が神社の神主さん、左手が浅間大社の神主さんね。

さて、単刀直入に話を始めますか。


「さっそくですが、伯父上より尾張三山の麓にて材木や竹を採集したい旨の書状はお読みいただけましたか」


「読ませていただきました。それに、そこにいる柴田殿、中村殿からも色々とお話しを聞かせていただきました。そのうえで、お答えさせていただく。尾張三山は信長殿の津島社の修繕のための木材や竹などの伐採や採集には協力いたしかねる」


「先日、自分の後見役、本日も同道頂いた柴田勝家様がこちらで話を聞いた折には、津島社のみ優遇されておるではないかと、ご不満がおありとか」


「不満、というほどではございません。

それに、信長殿が尾張の実質的な国主になられているのはわかっております。無理矢理、伐採を行っても致し方ないのをわざわざ書状を頂いたのも、われら尾張三山に気を使われてのことなのでしょう。

そして、信長殿の祖父、坊丸殿の曽祖父の織田信定殿が勝幡の城に入って以来、津島社とのご縁があるのもわかっております。

故に信長殿の一門が津島社を優遇するのもうなずけます。

しかし、我々も尾張の五穀豊穣、護国平安、万物殷富を津島社や熱田神宮に伍する思いにて祈っております。

信長殿はそれをお分かりなのか、ということです。それに比べて、貴方の父、信行殿は山岳信仰にも篤く、我々尾張三山のこともきちんと気を配ってくれていたものです。」


「そうですね、我が父、信行は美濃から飛騨、加賀に行って白山神社の総本山や奥宮まで行ってみたいと、伯父上に背く前、討ち取られる前、父と自分、二人で居るときに何度か話してくれていたのを、思い出しました」


「そうですか、信行殿がそんなことを…」


「伯父上は、ご自身が産まれた勝幡にほど近い津島神社を気にかけているのは、間違いございません。そして、我が父、信行は、白山神社に深く帰依しておりました。重視する社は異なりますが、織田の一門は、神社を重んじていることは事実。何卒、その意を汲み取って頂きたく」


「坊丸殿、そのように頭を下げられても、困りまする。しかし、なぁ。神域の外とはいえ、津島神社の為に我らの山の木々を、というのはなんとも…」


信行パパのことを出して話を始めたら、先程よりは軟化した気がしますが、まだ、拒否感は残るようです。困ったなぁ。


ちらっと、柴田の親父殿の方を見て、本当のことを言っては駄目なのか、目で問いかけてみることに。


が、柴田の親父殿の答えは否。

小さく頭を振った上に、「ならん」と声を出さずに唇が動きました。


ですよね。じゃあ、次兵衛さんや文荷斎さんと予習してきたプランで説得するしかないか…。

ちらっと文荷斎さんの方を見ると、深く頷く様子がありました。

よし、ここはもうひと踏ん張り、やってみるか。


「ちなみに、皆様方、織田家が尾張にくる由来はご存知ですか?」


「坊丸殿、唐突に何を…。織田家は、かつて尾張、越前などの守護職であった斯波氏の殿が越前より抜擢して尾張に参られた、と伝え聞くが、それが何か?」


「織田氏で尾張の守護代を務めたのは、織田伊勢守教広、出家後の法名を常松と申す御人でございまする。

織田伊勢守家の祖にして、現在の尾張に居る織田に連なるもの全ての祖、と言っても過言ではございません。

この織田常松殿の父、織田将広殿、その祖父である藤原信昌殿は、越前丹生郡は織田にあった荘園の荘官と織田剣神社の神職を兼ねていたと伝え聞いております。

すなわち、我ら織田の血には神官として織田剣神社にて須佐之男尊の祭祀を司っていた神職としての血も流れておるのです。

織田は、決して天神地祇、尾張三山の神々を疎かには致しませぬ。

伯父信長に成り代わり、この津田坊丸、皆様にお誓い申し上げまする。

そして、坊丸が元服したあかつきには、このたび伐採した土地に植える為の苗木を奉納させていただき、尾張三山の山々とそこにおわす神々に感謝の想いを伝えさせていただきたく存じます」


「坊丸殿、面を上げてくだされ。坊丸殿の赤心、確かに受け取り申した。津島だ熱田だ尾張三山だとこだわっていたそれがしが小さく見え申した。大懸神社、尾張浅間大社の御二方は、どうですかな」


「白山神社の大山殿と同じ思いでございます」

「それがしも同様ですな」


「ならば、こたびの伐採の件、お許しいただけますので?」


平伏した状態から、顔だけを上げて、神主さん達を見上げます。


「坊丸殿の言を受け、伐採の件、ご了解申し上げます。ただ、さすがに坊丸殿が元服するまで待つのはいささか時間がかかります故、苗木の件、少しばかり早くお願い致します」


「然り、坊丸殿の元服待ちだと十年近くの待つことになりそうですからな」


「違いない、ハッハッハ」


そう言うとは、三人の神主さんたちは、軽く笑いました。

なんか、場が和んでいる。伐採の了承ももらえた感じだし、良かったぁ〜。


「伐採の許諾、ありがとうございまする。苗木の寄進の件、この勝家が速やかに行っていただけるよう、信長様に掛け合いまする故、万事宜しくお願い申し上げまする」


三人で神主さんに今一度、頭を下げ、和やかなムードで会談は終わりました。


いやぁ~、本当に良かった。

最近はアイデア出すだけだったけど、本気の交渉事って、疲れるんだなぁ〜。


いやぁ~、いつもの幼い坊丸の代わりに交渉事をしてくれる文荷斎さんに感謝だわ。

織田氏が平氏だって言うのは、信長が天下取りに近づいてから言い出したものです。

源平交代説って奴に基づき、急に言い出した感じですね。

なので、信長より古い世代の織田氏の公式文書での名乗りは藤原姓ばかりみたいです。


ま、家康も三河守が欲しいときは藤原氏になり、征夷大将軍が欲しい時は源氏なりますから、ここらへんは、いい加減ですよね。


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