211話 墨俣城改修作戦! 伍の段
ども、坊丸です。
福島さんのところに男の子が生まれたそうです。
織田家はこれからどんどん強くなっていくし、『信長公記』の情報だと、信長伯父さんが浅井長政を討伐した後に、自分は磯野員昌って人の養子に入って近江の高島郡を領有するらしいです。
なので、その時のための家臣候補として、福島さんのお子さんにつば付けときました。信行パパの謀反のせいで自分には譜代の臣とかいないしね。
文荷斎さんにからかわれたついでに、加藤さんも自分の家臣として将来的に取り立てる予定だよって伝えておきました。
加藤さんから、家臣としてついてきてくれる流れの返答をもらえたので、ほっとしました。
それはさて置き、吉田次兵衛さんからそろそろ仕事のの話をしましょうよと言われたので、仕事の話をします。
「で、墨俣の状況はどうでした?皆さん?」
「では、それがしより墨俣城の改修について説明させていただきます。ご存知の通り、墨俣城は長良川に犀川が流れこむところに立っております。東側と南側は、川がすぐ近くにあり、天然の堀となっております。
北西側は平地ですが、周囲の土地は泥や砂などが多く、少し歩きづらいですな。湿地や田んぼの様に足を取られるというほどではありませんでしたが。丹羽長秀殿の希望としては、やはり北西側に堀か柵、塀などをこしらえてほしいとのことでした」
分かりやすい報告ありがとうございます、文荷斎さん。
「さて、材木関連は自分の担当だな。墨俣城が立つ中州の北西方向は五十間ほど。一町まではいかないな。北東方向も改修するとすると、そちらにも二十間程は柵か塀を作る必要があるな。大垣の城の方から中州につながる平地のほうにも柵を作ってほしいといっていたが、そちらは直線で三町ほどにもなる。坊丸様の言っていた、八寸ほどの丸太を立てるとなると、北西方向は四百本弱、北東方向は百五十本ほどは必要になる。大垣側の平地、三町を同じよう丸太を立てるとすると千二、三百本も必要になるぞ」
福島さんが、現場を確認して、丸太の本数の概算も出してくれました。
あ、この人、脳筋で呑兵衛の木工職人の人だと思ってたけど、意外と数字に強いのかも。
「そうですか…。墨俣城の北西方向五十間は丸太で作りたいですね」
「で、坊丸様。材木を長良川の上流から流すとして、どのようにお考えで?」
次兵衛さんが、会議の仕切りをしてくれます。自分は、あまり得意でないので有り難いことです。
「丸太を十本から十二本程度まとめて筏にしてもらいます。ただの丸太でなく、杭の状態にしたものを縄で結んで筏にしてもらいたいのです。
可能なら、その筏のまま立てて、塀にしたいですね。無理なら一度ほどいてからになりますが…。なので、杭で作った筏を三十五から四十ほど作って、上流から流す必要がありそうですね。
それ以外は、竹を組んだ馬防柵で良いかと。三町の長さに馬防柵を作るとすると、すぐには計算できませんが、五間ほどの長さのものを六十から七十本、十尺ほどのものを千から千二百本ほど必要になりますね。
これも二、三十本をまとめた竹束として、筏とともに流せばいいと思っています。加藤さんには、筏を元にした塀を繋ぐの大きめの鎹を作って欲しいのです」
「承りました。鎹で筏を繋ぐことで、長い塀とするのですな」
加藤さん、理解が早くてありがたいです。
「そうです。あとから、内側に板を張ってしっかり補強するとして、改修作戦当日は、筏の塀を鎹で繋ぐことで、それなりの強度で隙間のない塀が急に出来上がるというわけです」
「ですが、筏のままでは立てて安定できませんぞ、坊丸様」
はい、さすが、質問をつかっての誘導が上手ですな、次兵衛さん。
「そうですね。墨俣城の周りは砂地や湿地のようですから、すこしだけ掘って材木を立てることができれば、あとは大きめの木槌で上から打てばそれなりの深さまで入るはずです。木槌で上から打った後は塀の両側に河原で採ってきた砂や小石を両側に入れれば、安定するはずです」
「ふむ、それならば、可能ですな。前日に塀を立てる場所に浅い堀を掘ってもらっておけば大丈夫ですな」
「後は、実際に筏を作ってみて、塀にしてみましょう。明日明後日、柴田の屋敷の庭で試しにやってみましょう。福島さん、杭にした材木と縄を準備してください。筏が作れるくらいの感じで。加藤さん、鎹も数個作って持ってきてください。中間や若侍の衆に手伝ってもらいましょう」
で、数日後。
柴田の屋敷に福島さんとその仕事仲間の大工さんが、杭にした材木五、六本を運んできてくれました。
庭に材木を運びこんでもらって、大工の皆さんに筏にしてもらいました。
その後は、中間や若衆の出番です。
まずは庭にそこそこの深さの穴を掘ってもらいました。墨俣ではそんなに深い穴を掘らなくていいと予想していますが、柴田の屋敷だと深く掘らないとダメなんだよね。
お、数人で筏状にした杭を立ててくれました。二人が押さえてっと。本来ならば、この後、木槌で打ち付けるんですが…。
木槌を持った中間の人が困った感じで筏塀の前で困っています。あ、梯子待ちですか。
うん、実際やってみると、必要な機材や人員の有効な配置が分かるってもんですよ。
ぶっつけ本番は良くないよね。あ、梯子で筏壁の上に登ってそこで叩くんですか。
自分の予想していないやり方が発見できたので、これは採用。一人は木槌を持って杭の上で叩くのね。
でも、薄暗い中でできそうか後で確認だな。
え、鎹を打ち付けるのに木槌が必要?うん、そうね。木槌も複数本必要と…。
そんなこと感じで何度かリハーサルをしていると、吉田玄久さんがフラッとやって来ました。
「お、坊丸殿。面白いことをしているらしいな。儂もまぜてくれるか」
お、良いところに。玄久さん。
あ、そうだ、せっかくだから、玄久さんに墨俣の現場監督、やってもらうのも良いかな。
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