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210話 墨俣城改修作戦!四の段 〜そして、父になる〜

ども、坊丸です。

墨俣城の改修の為に信長伯父さんが書いてくれた書状を柴田の親父殿と回収に行ったら、微妙に変わったトランプで遊ぶ羽目になった上に、なんと作る羽目になりました。


墨俣城のことだけでも大変なのに、余計な仕事が…。勘弁してくださいよ、お犬の方様ぁ…。


ま、叔母上様のご結婚の嫁入り道具兼自分からのご祝儀みたいなもんですから、やりますけどね。

文荷斎さん、加藤さんと福島さんに協力を頼めば、たぶんなんとか為るとは、おもうけどさぁ…。ごめんね、チーム坊丸のみんな。

あ、お犬の方様輿入れの日程も確認しとかないとな…。


こんな感じで余計な仕事が舞い込んできた坊丸です。

それはそうと、吉田次兵衛さんとチーム坊丸が墨俣から帰ってきたので、墨俣城の状況と改修に必要なら物資の量なんかを一緒に確認する予定です。


で、後刻。柴田の屋敷の大広間。


「皆さんお集まりいただきありがと…。って、福島さんが居ない!」


なんだよ!材木関連で一番のキーパーソンの福島さんが居ないってどゆこと!


「坊丸様。福島殿は、少し遅れてまいります。今しばらくお待ちを。

なんでも、奥方が昨晩産気づいたとのこと。

昨日昼過ぎにうちに報せが来ました。うちの家内も産婆の手伝いをしなきゃならないとかで、福島殿のところに出かけていきましたぞ。

真夜中には、うちの家内ももどりましたし、今朝方聞いた話だと、安産だったようですぞ。

なんでも大きな声で泣く元気そうな男の子とか。

まぁ、子供が生まれたのです。本日くるのは、厳しいかもしれませんな。

一応、うちの家内へ福島殿がした話だと、一段落したら、こちらに顔を出すつもりだとか」


と、加藤さんが福島さんが居ない理由を説明してくれました。


「いやぁ、お子さんが生まれたなら、そちらの方を優先で良いですよ。

福島さんに今日はこちらに来なくて良い、父としての勤めを果すように、と使者を出しましょう。あと、何かお祝いの品を持たせないと…」


そう言って、準備をし始めた矢先に福島さんが、柴田の屋敷に到着したとの報せです。


「やや、皆さん、お揃いで。申し訳ない。遅くなった」


「福島さん、昨晩、お子さんが産まれたんでしょ!今日は良いですよ、産まれたばかりのお子さんと出産後の奥さんとゆっくり過ごしてくださいよ!」


「いやぁ~、そうしたいのはやまやまだが、色々と、産まれた直後の子供と家内にちょっかいを出し過ぎたのと、産まれる前に落ち着かずに家の中をグルグル歩き回ったせいで、邪魔だと言われてしまいましてな…。

ここに居ても邪魔だから仕事をしてこいと、家内と家内の親族に送り出されたのです…」


あ、わかりますよ、それ。よく聞く、出産前後のお父さん居ても立っても居られないので逆に邪魔になるっていう話ですね。

福島さん、少し可哀想。よし、話を少し変えよう。


「そうでしたか…。でも、初めてのお子さんなんですよね。可愛いでしょうね。名前とか決めたんですか?」


「そうなんですぞ!本当に可愛いものですな!赤ん坊があんなにも愛おしいとは思ってもおらんかったですぞ。名前はですな、市松にしようと、思っておりますぞ」


「そうだ、いつも色々と手伝ってもらってますから、後でお祝いの品を贈りますね」


うんうん、めでたい時には、ご祝儀だよね。

どっかのお犬の方様みたいに、ご祝儀の品を指定の上、強制されるとちょっと困りますけどね。


「そうですな。柴田家と津田坊丸の連名にて、祝儀の手配をしておきますぞ、坊丸様」


あ、吉田次兵衛さん、ご祝儀の手配をしてくれるんですか、ありがとうございます。気配りのできる次兵衛さんの手配なら安心だね。


「福島市松か…。いい名前ですね!大きくなったら、自分の近習になってほしいな!

そうだ、五歳くらいになったら、柴田の屋敷に顔を出すようにしてくださいよ!

理助達みたいに柴田の屋敷で鍛錬して、自分みたいに手習いをすれば、きっと立派な武士になりますよ!」 


さらっと、そのお子さんが大きくなったら自分の家臣になってね、という希望を伝えてみる。


「ハッハッハ。その時はお願いしますよ、坊丸様」


笑いながら、そう返してくる、福島さん。

今は笑い話だけど、そのうち、本気で、お子さんを家臣にスカウトしちゃうぞ。

自分は預かりの身分だから、将来元服しても、自分の家臣団ってやつが無いからね。


「お、福島どののお子が坊丸様の家臣団の第一号ですかな?」


「文荷斎さん、それは違いますよ。自分の一の家臣で、将来の筆頭家老は加藤さんですもん。ね、加藤さん」


と、言って加藤さんのほうを見てみました。

文荷斎さんの軽口に返答する感じでしたけど、割と本気で思っていることを、いい機会だから、加藤さんに伝えてみました。


「坊丸様…。もったいなきお言葉。私のような怪我で一度、武士の道を諦めた者を、一の家臣と言っていただけるとは…。

この、加藤清忠、坊丸様が必要としていただける限りは、坊丸様の家臣として供に参りますぞ」


加藤さんは、目頭を押さえたあと、自分の方に頭を下げ、しっかりとした平伏をしてくれました。


良かったぁ!しばらく加藤さんと一緒に色々な物を作ったりしてきたし、信長伯父さんから貰うようになった禄の三割四割を加藤さんに渡してもらっているんですけど、明確に主従であると確認したことは、なかったわけで。

それでも、加藤さんとの間に、いつの間にか主従の絆みたいなものができていたようで、坊丸、ちょっと嬉しい。


そんな感じの雑談をしていたところで、吉田次兵衛さんが大きめの咳払いを一つ。


「福島殿のお子のこと、坊丸様と加藤殿のこと、いずれも良いお話ではございますが、そろそろ、墨俣城のことを話しませんか、各々方」


はい、その通りですね、次兵衛さん。すいませんでした。

墨俣城の事で、本日は、集まったんですもんね。

じゃ、そろそろ本題に入りましょうか。

後の福島正則こと、福島市松君、誕生です。パチパチパチ。


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