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209話 墨俣城改修作戦! 幕間(弐ノ後)~閑話休題 或いは坊丸の巻き込まれ型の日常~

ども、坊丸です。

お犬の方様が、知多半島は大野城の佐治家に嫁ぐことになったそうです。桶狭間の戦いの前までが刈谷の水野家同様に織田家、今川家の間で揺れ動いて独立色を保った家ですから、この婚姻で織田家の勢力下に入ったとみていいのではないでしょうか。

信長伯父さんは、妹のお犬の方という存在を尾張安定のための政略結婚に使ったのはよくわかるんですが、自分の見知った人が政略結婚で嫁ぎ先が決まるのは、ちょっと複雑な気分です。


「母上、坊兄は、父上からいただいた『カルタ』を一緒に見るのに呼んだのです。叔母上の話が大事なのはわかりますが、あとで大人だけでお願いします」


おおぅ。奇妙丸様、なかなかの自己主張だねぇ。でも、自分が呼ばれたのも、そっちがメインの目的なんだから、自分的にも奇妙丸様に賛成ですね。それに、『カルタ』てのも気になるし。


「奇妙丸様。『カルタ』とはいったいなんですか?」


自分が知ってるのは『犬棒かるた』なんですが、同じものなんですかね?ここはひとつ知らないふりを…。


「はやく『カルタ』をだして!坊兄!茶筅!五徳!一緒に見よう!」


奇妙丸様の催促で奇妙丸様の後ろにいた腰元さんが朱塗りの小箱を出してきました。

え?『カルタ』ってそんなに大切に扱うものなの?


「坊兄。これはね、最近、父上のもとに出入りしている堺ってところの商人が父上に献上したものなんだよ。父上が、『小奇麗ではあるがよくわからん』って言ってたから、いただいたんだ」


ふむふむ、今の話だと、この『カルタ』は堺の商人が持ち込んだ南蛮渡来の品と言うことですね。

では、拝見させていただきましょう。どれどれ、失礼してっと。


って、これ、『トランプ』じゃん!


マークがなんかちがうけど。そして、枚数もなんか微妙に少ない気がするけど。

マークは、剣、コイン。あとの二つはこん棒?そして杯?なのかな。

剣はスペード、コインはダイヤ、こん棒はクラブなんだろうね。杯がなんでハートの代わりかはわからないけど…。


「奇妙丸様!とても美しいものですね!せっかくですからすべて並べてみても良いでしょうか?」


「坊兄ぃ!この、木の板の絵、すごくきれいだよね!全部みたいんだね!良し!並べてみよう、茶筅も手伝って!」


男の子三人で、全部を出して並べ始めます。自分の手元にきたカードの絵柄はコインが三つだからっと。

茶筅丸様は適当に出してはおいていくだけですが、奇妙丸様は自分が並べるときに法則性があるのをわかってきたご様子。

そして、奇妙丸様は並んでいる絵柄をよく見て統一性があることに気が付いたみたい。並べるときに絵柄を見てから並べるようになりました。うんうん。信長伯父さんに負けず劣らず聡いですね、奇妙丸様。


「奇妙丸様。お気づきになりましたか。この『カルタ』とやら、四種類の絵があるようですぞ!それに、この刀や杯のようなものが、一つからどんどん増えていく様子。せっかくですから、絵柄や数に注意して並べてみませんか?」


「そうだね、坊兄ぃ。せっかくならきれいに並べたいよね」


その結果、茶筅丸様は箱から一枚一枚出す係、自分と奇妙丸様が綺麗に並べる係になりました。

あとは、ジャック、クィーン、キングがどうやら、普通の人、馬に乗る人、王冠をかぶった人に代わっている様子。


「坊兄ぃ。剣を持ってこの馬に乗った南蛮人はどこに置く?」

「それは一人で剣を持って立っている南蛮人と剣を持った冠をかぶって髭のある南蛮人の間で」


いや、普通の人、騎馬の人、王様っぽい人が本当にジャック、クィーン、キングかは知らんけど、とりあえず自分の中でそう仮定します。あ、王様とキングは確定か。


あれ?この『カルタ』ことトランプ、48枚しかない。何故だ。11,12,13に相当する三種類の絵札はあるんだからっと。あ、10を示す札が無いのか。1~9までの札と、三種類の絵札ね。だから48枚。理解した。


そして、最初は男の子たちが札を散らかしているとしか思っていなかったようすの帰蝶様達も30枚を超えたくらいから、徐々にその規則性のある配列と美しい絵柄に目を奪われ始めました。

よし、48枚並べ終わったぞ!百人一首とは違った趣の規則性のあるカードだからね。7並べのゲームが終わったときとか、綺麗だよね。


「信長様に『カルタ』を見せていただいたときは、南蛮渡来の小奇麗な絵の板としか思わなかったが、これはこれは。このように並ぶと美しいものですね」


「帰蝶様、これはそれだけではありません。この『カルタ』いろいろと遊ぶことができまする。例えば、貝合わせと同じように遊ぶ、とか。」


「坊兄ぃ!それ、やろう!」

って、やっぱり食いついてきましたね、奇妙丸様。


「では、失礼して」

48枚全部でやると大変だから、1~4までのカード、16枚で神経衰弱を開始です。それに、自分もこの『カルタ』の絵札にまだ慣れてないし。


裏返した状態でカルタをめくって数を合わせる貝合わせのような遊びと説明しましたが、皆さんイマイチ、ぴんと来ていないご様子。

知らないカードで知らないゲームの話をされても、そうなるよね。


ただし、たった16枚の神経衰弱なので、自分、奇妙丸様の順で二回もめくれば、何処に何があるか記憶できましたし、自分の三回目で「1のコイン」と「1の剣」をめくりあて、一組成立。

その瞬間に、周りで声が上がりましたので、やっとどんなゲームかわかっていただいたご様子。一組成立させたは、そのカードを手元に回収してもう一度めくれることを説明し、わざとカードを外します。

偉いでしょ。接待モードを忘れない坊丸の気配り。誰か、褒めて。


奇妙丸様の三回目は「杯の3」でした。

「奇妙、丸が三つはそこですよ!」

帰蝶様、外野からアシストは反則ですよ?今回は見逃しますが…。

奇妙丸様は帰蝶様の言うとおりにカードをめくって、一組成立。うれしそうです。

さて、しょうがない、ここで注意を。


「帰蝶様。今は見逃しましたが、本来は、それがしと奇妙丸様の勝負。このような小さな友誼ではございますが、勝負は勝負にございます。外から答えを教えるのは、やはり狡いかと」


「ふぅむ。そうですね。出過ぎた真似をしました。次は声を出しません。奇妙、坊丸。続けなさい」


奇妙丸様が次の札をめくった時に今度はお市様が「それは、あそこ…」と声を出さしましたので、「お市様」と声をかけた後、首を振り、それ以上の発言を制しました。

「めくった札を全部覚えることができれば…」っと、帰蝶様が呟いていますが、それができるなら勝利確定ですよ。

今みたいにカードの数が少ないなら可能でしょうが。48枚フルで使ったときにそれができますかねぇ?帰蝶様?


徐々に大人も真剣にどこに何のカードがあるのか見始める有り様なので、白熱してきました。


ええ、きちんと今回も、奇妙丸様に勝ちを譲りました。

その後、大人のアシスト有で茶筅丸様と五徳姫様が神経衰弱を楽しみました。

とくに五徳姫様は「楽しい!坊兄ぃ!こんなの知っていてすごい!」と目をキラキラさせながら喜んでくれました。


「奇妙丸様。今は一から四の札しか使いませんでしたが、九の札や絵札まで使えば、もっと難しくなりますので、皆様でお楽しみください」


そう言って、頭を下げる坊丸です。よし、今日はいい仕事した。さて帰るぞ!ってこの時は思ったんですよ。思ったんですがね。


「坊丸。私の輿入れの嫁入り道具として、これに似たものを作れませんか?お願いします」


って、今日、ずっと静かだったお犬の方様が、丁寧に頭を下げながら、最後の最後で無茶振りしてきましたよ…。トホホ。

やります。やらせていただきます。だって、叔母上の結婚祝いだもんね。坊丸、頑張るさ。




奇妙丸様の持っている「カルタ」は、「天正かるた」の前身である「ラテンスートのプレイングカード」です。南蛮貿易が始まっている時期なので、同様の品は既に国内にはいってきていると考えてます。


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