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195話 親族会議?みたいなもの 其の弐

ども、坊丸です。


佐々成政さん、佐久間盛次殿が来たので、現在、柴田家の書院の間にて婚姻関係のある人達での家族会議みたいなものが始まってます。


て言うか、自分居て良いのか?と思うわけで。

でも、柴田の親父殿は、居ていいというわけで。

むしろ、居たくないわけなので、ちょっと困るわけで。

そんな感じの坊丸です。


「義兄上、どうぞ、そちらにお座りください」

と、柴田の親父殿が佐久間盛次殿を書院に招き入れます。


「ん、権六がわざわざ義兄上などと呼ぶとは、どうした」

と答えながら、部屋の様子を見て、吉田次兵衛さんの傍に座る盛次殿。


「いえいえ、成政の奴が、それがしを義兄と呼ぶので、一応、それに合わせました」


「ん、お主の妹が政次のところに嫁いでおったな。すると、まぁ、義兄と呼んでもおかしくはないのではないか?」


「その理屈でいうと、うちの次兵衛と盛次殿も、成政の義兄になり申す」


「それで、権六はわざわざ儂を義兄上などと呼んだのか。こそばゆかったわ」

と言って、顎をさする盛次殿。


「勝家の義兄ぃが、そう言うので、これからは佐久間盛次殿と吉田次兵衛殿も義理の兄として敬う所存。今後とも宜しく頼みまする」

そういって、二人の方に頭を下げる成政さん。


「成政殿、あい分かった。こちらこそ、今後とも宜しく頼む」


「成政殿、もったいなきお言葉ありがとうございます。それがしは柴田の家中のものですので、織田の直臣の御二方とは違い、陪臣の身。そのような対応は私事の場のみで結構ですぞ」


すこし困ったような表情で次兵衛さんは答えました。

そんなに直臣と陪臣だと違うんかね。ここら辺の感覚は、転生して数年してもまだよくわからんのですよ。


「次兵衛殿、そう畏まるな。柴田の家宰であるそなたは、小身の直臣よりよほど織田の為に働いておるであろう。それに、権六の奴が清須に居るときは、末盛の城代を務めているのであろう。武に偏った権六のところを取り仕切り、家中のこと、柴田の領内の(まつりごと)を回しておるのはそなたであるのは、まぁ、知っておるものは知っておるよ」


はっはっは。小身の直臣とは自分のことですか?

あ、違いますか。少し自意識過剰でしたか。


「盛次殿、もったいなきお言葉ありがとうございます」


と、恐縮する次兵衛さんでしたが、自分も基本は盛次殿の意見に賛成ですよ。


「それはそうと、柴田の義兄ぃ、梅ケ坪では、命を救ってもらい、ありがとうございました。後から出てきた若侍がまさかあれ程の手練とは思わんかったわ」


「親父殿、成政殿。その手練れの若侍とはどんな感じでした」


「ん?誰ぞ小僧が座っておると思ったら、そなたが巷で噂の坊丸か。そうか、そうか。

話題の手練れの若侍の奴、本多平八郎とか名乗っておった。若いのになかなかの気迫での。

練り上げられた武の気配がした。そうそう、鹿の角のような脇立てが付いた兜が見事であったの」


成政さん、巷で噂の坊丸ってどういうことですか?少し気にはなるけど、いまはどうでもいいけど。


うん、本多平八郎で、鹿角の脇立てなら本多忠勝で確定ですね。そりゃあ、若くても強いわけだ。戦場では生涯無傷で、西の立花宗茂とならぶ東の本多忠勝で、天下無双だもんね。


あれ?天下無双は天下に一人ってことだから、立花宗茂と並んだら、無双じゃないじゃん。

東国無双か東国一の武者っていうのが正しいのか?まぁ、そこらへんの二つ名はどうでもいいけど。


「あ奴、本多平八郎というのか。後から分け入ったから名乗りを聞くことはなかったのでな。

松平の本多平八郎か。儂と互角近くの戦いをできた若侍ゆえな。この先どれほど伸びるか…。

末恐ろしいな。その名、覚えておこう」


そう、つぶやく柴田の親父殿。

清須同盟が成立して史実通りなら、織田と松平改め徳川の同盟は信長伯父さんが死ぬまでつづくはずだから、戦場で戦うことはないはずですよ。きっと、たぶん。


「ふぅ。権六も成政も戦場での働き、素晴らしいものよな。それに比べて、儂はどうにも槍働きでは活躍できん。いつまで家老として遇してもらえるか…」


「義兄上。義兄上は戦働きでもきっちりと仕事をしておられるではないですか。此度の梅ヶ坪攻めでも挙母金谷城の周辺での働きや伊保城での働き、きちんとされておりましたぞ」


「権六。そういってくれるのはありがたいが、金谷城の周りの確認なんぞ誰でもできる。伊保城を落としたのも、お主ら柴田勢の活躍があればこそじゃ」


「盛次様。槍働きのみが仕事ではございませんぞ。内政や外交に盛次様は仕事をなされております」


「次兵衛、そう言ってくれるのは有り難いがな。それらの仕事では、村井貞勝や島田秀満の奉行衆にはかなわん。外交も林殿の方が伝手が多い。しかも、丹羽や木下らもそういった仕事は着実にこなしておる。佐久間の主な六家のうち、今は亡き、盛重のところを入れれば三家までも家老格で遇してもらっておるが、いつまでそれが続くのやら…」


「義兄上。そう弱気なことを申されるな。ここにいる、柴田、佐久間、佐々は婚族関係とは言え、いわば一門。どこか一つの家でも名をあげれば、その家がほかの家を助け、助けられた家はほかの家を支えることで一門の繁栄をなせばよいのです。我ら三家は互いに支え合っていくことで、束になって織田を支える。それでよいではありませんか」


「権六。少し見ぬ間に良いことを言うようになったな。男子三日会わざれば刮目して見よ、か」


「三国志、呂蒙の逸話ですな。武に偏ったうちの殿にはこれ以上当てはまることはありますまい」


そういうと、呵々と笑う次兵衛さん。

それにつられて、成政さん以外の三人が笑い出しました。

あれ、成政さん、呂蒙の逸話知らないのか?まぁ、いいや。


「権六も大人になったのぉ。今日は良いことを聞いたし、良いものを見れた」


「義兄上、そこに座る坊丸に以前言われたのです。

信行様の謀反の後、干されたようになっておりましたそれがしは、だいぶ腐っておりました。その時、それがしの武人としての才が必要になる時が必ず来るから、今の状況で織田のためにできることを全力でやり続けるようにと。それが忠義だと、坊丸にそう言われたのです。

いやぁ、次兵衛に言われるならまだしも、坊丸にそこまで言われましたら、織田への忠義と思い、武を磨き、日々を大切に生きるようになり申した。

だから、義兄上も忠義第一で奉公なさってください。理助たちのためにも」


「そうよな、権六。色々、ありがたい」


「義兄ぃ、俺も頑張るぜ!」

うん、成政さん。それもいいけど、まずは『呉下の阿蒙』の逸話や故事を勉強しようか!

佐久間六家は自分の造語です。

尾張の佐久間氏は主要な系統が6つあったとされています。

御器所、山崎を領有した2家、そこから派生した佐久間大学盛重につながる系譜、佐久間信盛・信栄親子につながる系譜、佐久間盛次・盛政親子につながる系譜、佐久間河内守家の4家。

合わせて6家なので、佐久間六家です。



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