179話 年越しと言えば、お蕎麦でしょう。
ども、坊丸です。
来年の年始も清須城で奇妙丸様の小姓役をする予定の坊丸です。ま、それもあと数日後なわけですが。
で、小姓役の準備と練習に清須城に行ったら、信長伯父さんに会ったので、清須同盟の話と斎藤義龍が死ぬ話をしたら訝しがられました。
その後、奇妙丸様の弟、妹に会った時、織田信孝の存在は?って、帰蝶の伯母上に聞いたら、訝しがられました。
あっれ〜?今まではカタカナを会話にできるだけ出さないようにするだけで良かったのに、なまじっか「信長公記」の知識を得てから、余計大変になっている気がする…。
どうしてこうなった…。解せぬ…。
それはそうと、年末です。
年越しと言えば、年越しそば。
いや、起源や由来は江戸時代の人が、細く長くと長寿の縁起を担いだり、金細工職人が金の欠片を集めるのに蕎麦粉を使ったから金運に縁起がいいって話は知ってますが。
時代がずれているのも知ってはいますが、それはそれ。
だって、年越し蕎麦食べたいもん。
醤油が無い問題は、味噌に塩水を入れてかき混ぜて、それから絞るという味噌溜まりを意図的に作る方法を考案してみました。
ちなみに、自分が考案したやり方を近くで見ていたお滝さんから一言。
「坊丸様がまた何を始めるのかと思ったら、垂れ味噌づくりみたいなことをしてるんだね」って言われました。
後で、垂れ味噌の詳細をお滝さんに聞き取り調査せねば!
しかし、この促成の味噌溜まり、微妙に味が醤油とは違うんですが、何が違うんだろうか?
大豆を発酵させるときに塩水を足して作るのが醤油なんだとばかり思っていましたが…。
四年後の天使級10589号の面談の時は醤油の作り方を脳にダウンロードしてもらおうかと本気で思案。
まぁ、促成の味噌溜まりは、味噌溜まりと醤油と塩水を足して3で割ったような何かができたわけで。
旨味は結構あるから、これで、麺つゆ作っちゃうよ。
ちなみに蕎麦切りは、お滝さんに「蕎麦粉に小麦粉を少し混ぜて、細うどんぽいのを作って欲しい」って言ったら、あっさり作ってくれました。二八蕎麦より蕎麦粉が少な目に見えるから三七蕎麦くらいでしたが。
それでも、あっという間にそれなりの形にしてしまったお滝さんの料理人スキル、ハンパないっす。
さて、次は麺つゆ。
お滝さんは、昆布と鰹の合わせ出汁を取るのは既に熟達しておりますから、美味しい合わせ出汁は安定して作ってもらえます。
お滝さんの料理スキル、ハンパな…って、二回言わなくて良いですか、そうですか。
先程作った促成の味噌溜まりと柴田の屋敷では常備してもらえるようになった味醂を一対一の割合で混ぜて、合わせ出汁に混合。
鍋で沸き立たないくらいに温めて、後は少し冷まします。
フッフッフ。ここらへんは小中学生の頃、爺ちゃん宅に年末年始に行くと爺ちゃんが自分でお好みの麺つゆを作っていたからね。見知っております。
爺ちゃんの蕎麦つゆはめっちゃ出汁が強くて塩辛かった上に鯖節を入れてたのが特徴だったけど。
しかし、自作してみると、平成令和の美味しいバランスが良い麺つゆがボトルに入っている売ってるのってめっちゃ楽だったんだなぁ…。
味見味見と。うん、すこし塩辛い。促成の味噌溜まりがしょっぱかったからな…。
水と出汁でちょい薄めて、と。
うん、コクが足りない。信長伯父さん報奨で貰った黒砂糖を少しだけ足してみるか…。もったいないから一欠片っと。
お、少し甘口だけど、自分好みに仕上がったぞ。
ウンウンうなずいていると、後ろに気配が。振り返るとお滝さんは当然として、お千ちゃんがいつの間にか後に立っております。
「坊丸様。何作っているんですか?お千にも食べさせて下さい!」
「麺つゆを、ね。蕎麦切りをお滝さんに作ってもらったから、このつゆにつけて食べようかと」
「へぇ〜」
「坊丸様。その汁の作り方は見ていたからなんとなくわかったけど、とりあえず味見させてくれないかい。味見して味を覚えないと同じように作れたかわからないからね」
「わ、私も味見したいです」
「どうぞ、どうぞ。後で蕎麦切りにつけてたべるから、ちょっと濃いかなってくらいにしておくのが肝ですよ」
「確かに、少しだけ濃いね。旨味と塩味、一欠片足した砂糖の甘みが良いね」
「美味しいです。もっと甘くてもいいかも」
だから、これ単体で食べたり呑んだりするもんじゃないんだって、お千ちゃん。
お滝さんは、この麺つゆのことをよくわかってくれた感じ。
お滝さんのことだから、次から細かいこと言わなくても多分これに近いものは作れちゃんだろうな。
さて、蕎麦切りと麺つゆはそれなりに出来上がったから、次は天麩羅。
お蕎麦と言えば、天麩羅蕎麦でしょう。
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