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178話 吾輩は、勘八丸である。帰蝶様には、まだ会ってない。

ども、坊丸です。

帰蝶様の私室にて奇妙丸様、他の小姓衆たちと一緒に茶筅丸様、五徳姫様に面会中です。


いやぁ~、五徳姫様、寝姿だけど可愛いったらありゃしない。


理助はちょっと顔を見たらすぐ離れてったけど、牛助君は結構長い時間、お顔を見てましたよ。


五徳姫様、大人になったら、きっとお犬の方様やお市の方様に負けないくらい綺麗になるに違いない。

政略結婚とはいえ、この子をお嫁さんにもらえる徳川家康の長男、信康は幸せ者だぞ。


ま、その後、五徳姫と信康が仲違いしたせいで、信康は信長伯父さんから切腹要求出されるんだけどな。


「坊兄ぃ、虎丸、理助、牛助。五徳は可愛いでしょう!」


「「「はっ、真に」」」「はぁ~」


おい、理助、たとえどんなに五徳姫様に興味無くても、返事くらいはキチンとしろっての。


「ところで、茶筅丸様と同じくらいの弟御はいらっしゃいませんか?」


「ん?坊兄ぃ、弟は茶筅丸だけだよ?」


あれ?織田信孝って織田信雄と同い年じゃなかったんか?

それとも何か、奇妙丸様にはその存在が知らされていないのか?


うぅ、帰蝶様の方からなんか凄いプレッシャーを感じるんですが。なんだ、このプレッシャーは!ってやつですよ。

あれ?これって、もしかして、余計なことを言っちまったパターンなのか?


「坊丸。もう一人の子のこと、どこで知りました?」


うわぁ~、帰蝶様、静かで落ち着いたような声だけど、その奥になんとも言えない感情と力強さを感じる声色ですね。とっても怖いです。


本当は、帰蝶様の方を見たくないけど、ここは向き合うしかない…。

そして、本当は「信長公記」の知識だけどどうにか誤魔化しておかないと…。


「はっ、伯母上。確か伯父上たちと河原で鉄砲の練習をしているときに、小耳にはさんだような気がいたします。伯父上と柴田の親父殿が話していたのか、あるいは小姓衆の誰かの噂話か…」


「ふぅむ。さもありなん、というところですね」

そういうと、少し困ったような顔になる帰蝶様。


「そうですね。奇妙丸、茶筅丸。これから母が言うことをしっかり聞いておくのですよ。

坊丸。そなたが質問したことですから、この場では答えます。

そして、虎丸、理助、牛助。この場で聞いたことは、しばし忘れるように。よろしいですね」


なんだろう、織田信孝って名乗ることになるはずの男子がどこにいるか聞いただけなのに、帰蝶様の雰囲気だと何やら重大な秘密の暴露みたいになってきましたよ。

しっかし、どうしてこうなった。ちょっとした疑問を口にしただけなのになぁ…。


「さて、坊丸。そなたが先ほど奇妙丸に聞いたもう一人の弟、そのものはおります。ですが、ここにはいません」


「伯母上様。では、どちらにおられるので?」


「坊丸。まずは、(わらわ)の話を聞きなさい」


あ、ちょっと冷たいの視線を帰蝶様から向けられました。

すこし背筋がゾクッとしました。美人の冷たい視線、痛気持ちいい。

はっ、そんなことより謝っとこ。


「はっ、伯母上、申し訳ありません。気が急きました」


ちょうどいいタイミングで質問したつもりだったんだけど、帰蝶様の話の腰を折るような真似になってしまったようです。少し結論を急ぎ過ぎたでしょうか。すいません。


「茶筅丸の弟は、勘八丸と申します。と言っても、私もまだ会ったことはございません。信長様から、茶筅丸が誕生するすこしばかり前に、もう一人、子が生まれると聞かされました。

信長様にどう言うことなのかよくよく問い詰めると、津島の天王祭りに先年赴いたときに、堀田道空が休憩のためとして準備した屋敷にて、その娘を見初めたとのこと。

その後も、津島に赴いた際にはその娘のもとにも通っていたと白状なさいました。

やむを得ず、その娘の氏素性を調べさせますと、伊勢の豪族の坂氏の縁者の娘であることがわかりました。

茶筅丸が生まれてまだ間がない状態でしたし、吉乃の産後の肥立ちも思わしくありませんでしたから、吉乃の心労を考えると、すぐに清須に連れているのは如何なものかと思いました」


「して、どのようになさったので?」


「娘の氏素性を調べた際に、その娘の母方の縁者に津島衆の岡本良勝殿がいることがわかりましたので、無理を言って津島の岡本殿の屋敷にて(みごも)ったその娘を預かっていただき、岡本殿の屋敷にて無事に出産したと聞き及んでおります。

いずれは、その子には正式に信長様のお目見えの機会を与えるつもりですが、五徳も生まれたことですし、五徳を生んだ後の吉乃の産後の肥立ちも良くありませんからもう少し先のことになるでしょうね。まぁ、出産後に信長様は何度か母子に会いに行ったようですが」


「そのようないきさつがございましたか。それがしはそのことをたまたま耳にしてしまったのですね」


「そうなります。鉄砲の修練の際には、女子衆の耳目がないこと良いことに、きっと津島に行って母子の顔を見る算段でもしていたのを小耳にはさんだのでしょう。

奇妙丸、茶筅丸。今の話、聞いておりましたね。話の通り、いずれその子を弟として迎えなければなりません。先のこととはいえ、そう遠くない時期を考えております。その時は、兄としてその子を教え導くつもりでおりなさい」


「はっ、母上のお言葉の通りにいたします」

「はい。そのうち、弟ができるのですね。わかりました」


奇妙丸様は年が離れた兄だからいいとして、茶筅丸様はほぼ同い年なんでしょ。

絶対比べられる奴じゃん。まぁ、今の返事の感じだと、茶筅丸様はまだ小さいからそんなことわかってないかもしれないけど。


しかし、信長伯父さん、帰蝶様と吉乃殿がいるのに、津島のお祭りを見に行った時に、そこの娘さん見初めちゃったのかよ。

リオのカーニバルの時に開放的になりすぎて、一晩のアバンチュールが一発必中で妊娠しちゃう人多いって話は聞いたことあるけどさぁ。

帰蝶様と吉乃殿から離れた津島で気が緩んだ上に、お祭りの浮かれた気持ちで、やっちゃんたんだね。いろいろな意味で。


しかし、史実だと「本能寺の変」の後、勘違いなのか姑息に小さい手柄でも立てようとしたのか知らんが自分を殺しやがる織田信孝こと勘八丸に会うのは、まだ先になるのか…。


どうしよう?仲良くできるかな?

それとも小さいうちから色々、対策をしておくのがいいのかぁ…。

ま、今決めることじゃないな。おいおい、考えとこ。

信長、英雄だから色を好むってやつですね。

織田信孝の母の出自、織田家家臣津島衆の岡本良勝の屋敷で信孝が誕生したこと、津島天王祭りの古記録である「大祭筏場車記録」にある信長観覧の記録、「信長公記」の信長とその家臣が津島村での盆踊りに参加した記録などを勘案して、こんな感じになりました。


やっと「織田信孝」を登場させることができました。まぁ、まだ坊丸君には会ってすらいませんが。


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