表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

172/482

172話 奇妙丸様と将棋盤と伯父上と

ども、坊丸です。


蕎麦切りを作ったのは良いんですが、醤油がないので、麺つゆが作れず、味噌汁に麺が入った状態になっちまいました。


なので、茨城名物のけんちん蕎麦みたいになったよ。

美味しいかったから問題ないけど、これだと蕎麦の香りを楽しむのは、無理かなぁ。

虎哉禅師は、結局蕎麦がきのほうがお好みのようです。


とりあえず、味噌溜まりを意図的に作れるようになれば、醤油づくりの第一歩になるんですが…。


五年後に奴に醤油づくりのレシピみたいなものを教わるまで待つか…。味噌づくりに手を出して、そこから醤油づくりの試行錯誤。するか…。

迷うところです。


どっちにしても、美味い蕎麦つゆと蕎麦切りを作っていつか虎哉禅師を唸らせてやるんだ!きっと。 


天麩羅うどんや天麩羅蕎麦も、素材自体は揃ってるんだけど、醤油が無いから麺つゆ、天つゆがね…。

ええぃ、ままならん。


と、蕎麦栽培からの蕎麦切り作り&美味しくいただいていたら夏と秋があっという間に過ぎ、またしても、年末が近づいてまいりました。


そう、この季節は、新年の儀での奇妙丸の顔見せに合わせて、奇妙丸様の小姓役の予行演習です。


って、まだ、奇妙丸様の顔見せ自体二回しかやっておらず、小姓役四人でのフォーメーション練習は昨年が初めてだったんですがね。


たぶん、来年も顔見せするから、今年の年末もフォーメーション練習すると思うんだよね…。


で、案の定、12月上旬に呼ばれました。

今年もメンバーは不変のようです。

森可成殿の嫡子の虎丸君、佐久間盛次殿のところの理助、佐久間信盛殿の嫡子の牛助君、そして、自分です。


昨年同様、大広間までは親が同伴。その後、昨年は奥向きの小広間まで親と一緒でしたが、今年はから大広間で別れる動き。


あ、自分については、柴田の親父殿は預かり親なので、親って言うと語弊がありますね。


それはさておき、小姓の岩室長門さんに先導されて子供達だけで小広間に移動。

小広間には、奇妙丸様と滝川一益殿の従妹で奇妙丸様の乳母役のお桂さんが既に待っていました。


「森虎丸、佐久間理助、津田坊丸、佐久間牛助。皆、息災だったか。新年の儀の小姓役、よろしく頼むぞ」


「「「「ははぁ〜」」」」


奇妙丸様、今年はあまり会う機会が無かったけど、ちょっと見ない間に随分と落ち着いていらっしゃる。

それに、四名の名前も覚えていてくれたんですな。おいちゃん、嬉しいよ。

って、今はそれほど年齢、変わらないんだった。

時々、平成令和の二十代後半の目線になっちゃうから気をつけないと。


その後、小姓の岩室長門さんと加藤弥三郎さん、乳母の滝川お桂さんに厳しく指導を受けながら小姓役のフォーメーションを確認。

一年前にやってるからできるだろうって思ってたけど、結構姿勢とか直されたよ。トホホ。


でも、岩室長門さんって『信長公記』のデータだと犬山城の支城、小口城ってとこの攻防戦で死んじゃうんだよね。

しかも、来年、永禄四年六月に。

これって伝えたほうがいいのかな?

でも、何をどう伝えれば岩室長門さんの戦死を回避できるか皆目見当もつかないってやつですよ。

しかも子供の戯言だと思われるよね、絶対。


そんなことを思いながら岩室長門さんの指導を受けてたわけですが、今回も懇親を兼ねて、奥御殿の奇妙丸様のお部屋にお呼ばれ。

昨年は奥向きに呼ばれるってことの意味を理解してなかった様子の理助も今年は少し緊張気味。


やっぱり、今年も、ほとんど足音を立てない静かすぎてくノ一なんじゃないかなぁ…って疑っている腰元さんが我々の後ろについています。


綺麗な人なんだけどね、くノ一疑いの腰元さん。

貼り付いたような笑顔で細かい表情が読めない感じなんだよね。


何はともあれ、奇妙丸様の自室に到着。

牛助君は調度品などに気が向いている気がしますが、まぁ、静かにしているから気にしない。


「みんな、今年は父上から将棋の一式をもらったから、見て!」

うん、もらったものを自慢したいんですね、奇妙丸様。


でも、将棋って始めるとかなり時間使うから、短時間の懇親には、向いてないんじゃあ…。

しかも、二人でやるゲームだし。


結果、将棋崩しになりました。

多人数で遊べる将棋盤を使ったゲームってこうなるよね。


今年はみんな接待モードなのか、キチンと奇妙丸様を勝たせました。

途中まで理助が気づいてないっぽくて、ヒヤヒヤしたけど、自分と虎丸君が連続で失敗して、明らかに調整開始したのを見て気がついた様子。

大人になったな、理助。


でも、この将棋変なんです。醉象っていう変な駒があるの。

こそっと虎丸君に聞いたら、森可成殿のところにある将棋一式にも含まれているとのこと。


真後ろ以外には全部動けて、成ると「太子」に変わるんだって。

太子に成ると、全方位動ける上に、王将や玉将が取られても、太子が居れば試合継続なんだと。


自分が知っている平成令和の将棋には、存在してない駒なんですが、まぁ、この時間線では普通なのかな。


何回か将棋崩しをして楽しんでいたら、ドタドタと大きな足音が近づいてます。


うん、知ってる。

これ、信長伯父さんが、ワザと周囲に自分が来ていることを知らせるときの歩き方や。

何も起こらなければ良いけど…。

それと、加増の御礼するタイミングあれば良いんだけど…。

奇妙丸様が持っていたのは、小将棋ってやつです。

現代の本将棋と少しルールが違いますが、酔象を使わなければ両方対応できるので、お得ということで、これを奇妙丸に贈った信長公でした。



少しでも「面白い!」「続きが気になる」と思った方は、下の★でご評価いただけると、作品継続のモチベーションになります。

宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ