170話 中村三郷って文荷斎さんと加藤さんの実家あるとこですよね
ども、坊丸です。
桶狭間の戦いから少し経って、柴田の親父殿から、戦いの色々な話を聞きました。
直後は、結構バタバタしてたからね。
あ、戦に出ていた人達が帰って来た直後に婆上さまはじめ皆で戦勝おめでとう!って祝賀はしたよ。
この時間線では、「桶狭間の戦い」って田楽狭間から桶狭間にかけて戦場が動いてたんですね。
確かに、『信長公記』の桶狭間の戦いの記載では、今川義元の討ち取られた場所が桶狭間って書いてあるもんな。
討ち取られた場所がメインの戦闘地点とは限らないよね。
桶狭間の戦いの結果、柴田家については、良いことと悪いことが一つづつ。
良いことはもちろん、柴田の親父殿が末森城代から正式に城主になった上に中村のうち中村南郷を領有することになったこと。
そして、悪いことは柴田の親父殿のお妹さんの旦那さん、つまりは柴田の親父殿の義弟、佐々政次殿が討死してしまったこと。
戦が始まれば、戦場に居る誰しもが戦死の可能性があるわけで、「悲しいけど、これ、戦争なのよね」ってやつなんですよね。
稲生の戦いで次男の佐々孫介殿が、桶狭間の戦いで嫡男の佐々政次殿が討死してしまったので、三男の佐々成政殿が急に家督を次ぐことになるみたいです。
ちなみに、佐々政次殿には、お子さんが二人居るんですが、まだまだ乳飲み子という事で、家督は継げないとのこと。
それどころか、佐々成政殿に気を使って柴田の親父殿の妹さんとそのお子さんは柴田の屋敷に戻ってくるか、佐々の家に残るか揉めてるらしいですよ。
まだまだ喪に服す時期なのに、家督争いの原因にならないように家に居るか戻るか揉めるなんて、なんだかなぁ。
ちなみに戻ってきたら、柴田の屋敷は幼稚園状態ですよ。柴田の親父殿の実子は居ないのにな。
あ、そういえば自分もまだ、五歳やった。
それは、そうと、良い報せ方のお話。
柴田の親父殿が、末森城城代から、正式に城主になりました!
パチパチパチ!
ちなみに違いがわからないって言ったら、周りの大人から深い溜息を一斉にいただきました。
ま、簡単に言うと、城代は、あくまで代理。
防衛や軍事についての指揮権は城代でもあるらしいんてすが、行政についてはあくまで代理なので信長伯父さんの了承を得なければならないし、所領ではないので、城のある地区の年貢は得られないとか。
城主になると、行政の権限がかなり拡大した上に年貢も得られるって。
すごいよ、すごいよ、凄すぎるよ。
さらに、中村三郷のうち南郷を頂いたようで。
あれ?
中村って、中村文荷斎さんの生家と加藤清忠さんの仕事場&ご自宅がある場所ですよね。
て言うことは、加藤清忠さんが年貢を納める相手は、今後、柴田の親父殿って言うことになるんでしょうか?
よし、確認しておこう。
ええっと、今は、自室にいる時間帯だな。とりあえず、祝賀の言葉を伝えつつ、突撃だ。
「親父殿、末森の城主就任と加増、おめでとうございます」
「おお、坊丸。戦の後から、忙しくてな。元気にしておったか?」
「はっ、それは恙無く過ごしておりました。親父殿こそ、城主就任後から色々と忙しいご様子」
「うむ。この本領の屋敷を引き払うって末森城の御殿に移るか、この屋敷から末森まで通うか、或いはこの屋敷は今のまま残して、自分と必要な人員のみ末森の屋敷に移すか迷っておる。
それ以外にも中村の石高や住人の数の確認などやることが山積しておってな」
「お屋敷のことですか…。それは悩みどころですね。自分達兄弟は預かりの身ですから親父殿の決めたとおりにいたします。ただ…」
「ただ、なんだ?言うてみい」
「聞くところによると、伯父上は、勝幡、那古野、清須と居城を変えておられるとか。今後も居城を変えることがあるのでは、と。
松平、今川を攻めるのであれば、安城、岡崎と移すやも。美濃斎藤を攻めるのであれば、小牧山あたりや犬山に、と。そのおり、家臣の屋敷も移すことになるのでは、と思います」
ま、永禄六年に小牧山城に居城を移すって『信長公記』に書いてあるんですけどね。
さらに、そこに家臣の屋敷の縄張りもしたらしい表現があるんだよね。
つまり、今、柴田の屋敷を末森に移すのは、二度手間になるってこと。
「信長様なら、本拠地を移すことはありえるか…。しかし、そうなるやも知れんし、違うやもしれんからな。さてさて、どうするか…」
「最後は、親父殿の意見に従いまする。ただ、今、屋敷の皆で末森に移るは二度手間になる可能性もあり、余計な出費になるかと」
「ま、坊丸の意見、含み置く。で、何用じゃったかな」
あ、加藤清忠さんの年貢のことを聞くんだったっけ。
「加増されて、中村の南郷が親父殿の所領になったとか。自分の専属鍛冶師の加藤清忠殿ですが、たしか、そこに住んでいたはず。年貢は如何様になるのかと、疑問に思いまして…」
「そのことか。坊丸は当家預かりの身ながら、殿から扶持を得ておる。
ただし、坊丸の扶持は儂がまとめて預かっている状態じゃ。
つまり、坊丸は儂の寄騎のようなもの。
加藤殿は、坊丸の専属鍛冶であるからな、寄騎の家臣格となる。つまりは陪臣のようなものじゃ。
陪臣から年貢を取ることはできまいよ」
あ、そういう扱いなんですね。とりあえず、年貢のことホッとしたよ。
しかし、こういう感覚はまだまだ分からないから、聞いておいて本当に良かった。
年貢が取られないなら、実質的に加藤清忠さんとこの家計に余裕ができるからね。
「では、加藤殿に伝えます」
「おお、それと、信長様が、焙烙玉を戦場に持ってきたこと、褒めておった。お陰で火縄銃を善照寺砦から持って出ることにもなり、敵の騎馬隊を討ち果たすことができたからな。
しかし、火縄銃や焙烙玉が雨上がりの湿気が多いところでも使えるようにしておったとはな。まぁ、実際に手を動かしたのは加藤殿だろうがな。
そう言えば、信長様が、坊丸の扶持を増やしてやれと言っておった。城主になり、中村三郷の一部も拝領致したからな。坊丸の扶持も五人扶持くらいにしてやるから、加藤殿にもしかと回せよ」
柴田の親父殿は、そう言うと俺、太っ腹やろって感じでドヤ顔。
ま、扶持が増えることは良いことですから、有り難くいただきましょう。
「ありがたき幸せ。伯父上にも親父殿から宜しく伝えてください」
「ハッハッハ。それも良いが、鉄砲の修練や奇妙丸様のお相手の時にでも直接言うのが良いぞ」
今回はあまり話が動きませんでした。
桶狭間の戦い以降のプロット、まだ固まりきっておりません。
桶狭間の戦いの話を作るのに注力し過ぎた感じですね。さてさて、どうしよう。
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