表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

166/482

166話 桶狭間の戦い 第十二段

またまた、タイトルを小変更。

たいした変更ではないのですが…。

『』追加と「なんか」を一つ削りました。

これでタイトル変更はもうしないはず…。

生山で今川軍本隊の前陣、松井宗信率いる部隊を打ち破った信長は、今川義元の本陣らしき場所をついに見つけたのだった。


そして、その場所は信長が善照寺砦で受け取りった情報をもとに、今川義元がいるであろうと想定していた場所からそれほど離れてはいなかった。


逃げまどう松井隊の武者や雑兵、今川軍の新手を見ながら、信長が出した指示のもと、織田軍が動き出す。 


程なくして、滝川一益以下火縄銃に慣れたもの十数名と火縄銃を持って参戦したもの数名、それに焙烙玉を岩倉城に投げ込んだ者のうち手近に居た六名が信長のもとに集められた。


「殿、善照寺から持ってきた火縄銃は二十丁なれど、火縄銃に慣れたもの者は十五名でございます。滝川一益殿を入れても十六名。四名ほど足りませぬ。自前の火縄銃を持ってきた者は八名でございます」


「鉄砲は二十八丁しかないか…。撃ち手も足りんか…。よし、儂も撃つ。佐脇ら小姓衆も何度か河原で火縄銃を扱っておろう。小姓衆で火縄銃が得意なものから三名、儂と共に仮の鉄砲隊に加えよう。それに、火縄銃は二、三回撃つ程度とする。敵の勢いを削いだら、あとは山を降って一気に今川義元の首を狙う。良いな」


「はっ」


「焙烙玉隊は、火縄銃を撃った後、それでもこちらに向かってくる敵兵の頭上に焙烙玉を投げつけよ。焙烙玉は各自一個しかないからな、銃撃が終わったら、我らとともに敵兵にかかれ。良いな」


「はっ!」


雨でも火縄銃を使えるようにしたいという坊丸の熱意、それに応え加藤清忠も工夫を重ねてきたことにより、雨上がりであれば織田軍は特に問題無く火縄銃を打てるようになっている。 


「一益。儂も撃ち手に徹する。発射の号令を出せ」


「殿、流石にそれは…。やはり、殿が最後の号令を出していただいたほうが良いかと」


「で、あるか。では、合図をよこせ。それに合わせて、儂が射撃の号令を出す」


「承りましてございます」

そいうと、滝川一益は敵陣の騎馬武者達との距離を目測し始める。


そして、時は、前段の最初に繋がる。


今川軍の騎馬隊が生山の方に駆けてくるのを見た織田信長は、三度檄を飛ばした。


「大将として、言うべきは言った。一益、良きところで合図を」


今川軍の騎馬隊が織田の軍勢に向かうのを見て、逃げまどう兵のうち、まだわずかに戦意の残っていた者達が、足を止め、騎馬隊の後につけば逆襲できるのではと思い、向きを変える者も出始める。


そして、騎馬隊が織田の軍勢までニ町を切る程、、今で言う200メートル未満まで近づき、織田の軍勢にあと少しで一撃を加え得る距離まできたしたとき、滝川一益の合図がでる。


「殿、今です」


「者共、放てぇっ!」


本作品 63話 「浮野の戦い 第三段」でも記したが、火縄銃の殺傷射程は50〜100メートル程である。そして、有効射程は200メートル程。


向かってくるは五十程の騎馬武者であった。

開けた平地であれば、その圧は歩兵にとっては大きいものであるが、今回は火縄銃を構えた織田の軍勢は山の上に陣取り、間には低木とはいえ草木が生い茂る。更には、総大将を討たせるわけにはいかじと、馬廻りの衆も射線を避けては居るものの、控えて居る。


たかだか三十弱の鉄砲隊ではあるが、かなり有利な運用状況であったため、滝川一益も敵の騎馬武者が有効射程に入るまで十二分に引き付けてから合図を出せた。


生山の頂上から騎馬武者に向けて、乾いた射撃音が一斉に襲う。

黒色火薬特有の煙が立ち上り、殺意の体現者たる鉛玉が騎馬武者と馬達に無慈悲に激突する。


打ち下ろしであることと、一益の合図から信長の僅かな号令の僅かな間に騎馬達が突き進んだ事で彼我の距離は詰まり、十分に殺傷射程距離となっていた。


その結果、最初の射撃だけで、敵騎馬武者の半数弱が動きを止めた。

武者自身が死傷したもの、馬が音や煙に驚き落馬したもの、騎乗した武者は無傷でも馬が死傷したもの、様々ではあった。


しかし、後続の騎馬隊がそこに殺到してしまう。

残念ながら、味方の馬に蹴り殺され、踏みつけられる者も多発。


それでも、愛宕神社出世の石段を騎馬にて登り降りした曲垣平九郎並の馬術の冴えを見せ、生山の頂上を目指す豪の者も居た。


「焙烙玉、投げつけよ!」


そして、火縄銃によって発生した混乱が収まり切らぬうちに、信長の号令にて焙烙玉が投げつけられる。


現在の高校球児のトップクラスは遠投100メートルを超す。プロ野球選手で肩の強い選手ならなら130メートルは普通に投げると言われる。


この時、焙烙玉を投げたのは、岩倉城攻めで選抜された織田家でも特に投石が上手い兵達六名。先程も記載したが、高低差がある状態である。

100メートルとまでは行かないが、それに近い距離は、出た。


火縄銃にも怯まない今川軍でも指折りの優れた騎馬武者達が味方を避け、或いは踏み抜き、織田の軍勢に近づこうとしたその時、その前方や頭上で焙烙玉は炸裂する。


再びの炸裂音と、煙。


火縄銃による前方からの衝撃を味方が盾になってくれたお陰で避けられた者共に、頭上から降り注ぐ高速の石礫と陶器の破片。

鎧兜を身に纏った武者はまだしも、馬にとっては先程の火縄銃よりもさらに辛い攻撃である。


こうなると馬は制御不能になり、どんなに優れた馬術の技量を持つ騎馬武者も振り落とされる。振り落とされなかった幸運なものでもただ馬にしがみつくのみである。


そして、そこに、火縄銃の第二射が襲う。

焙烙玉の攻撃で混乱した騎馬武者は、速度とそれに伴う衝撃力を失ってしまっている。

こうなると馬の分だけ大きい的に成り下がる。


第二射の後のそれは、まさに、阿鼻叫喚、地獄絵図であった。


今川軍にも火縄銃のことを知る者は、少なからず居た。

しかし、何度も戦場にて運用してきた織田軍とは比較にはならない。


知識として知っている者、試射を見たものは居ても、戦場で火縄銃が自分達に向けられるということがどういうことかを理解してあるものは、居なかったのだ。


そして、そんな状態で三回の射撃音、破裂音、煙。

信じがたいことに、三度それを見聞きした後に、自分達の前を走る勇壮な騎馬武者五十がほぼ殲滅されている事実。


実際には二度の射撃と再装填する時間に焙烙玉を使用しただけではあるが、事情を知らない今川軍からすれば、ただただ、謎の連続攻撃である。


騎馬武者達が織田の軍勢に向かう事で立ち直りかけていた今川軍の軍勢は、再び恐慌をきたした。


そして、それを見逃すような織田信長では、無い。


「いまだ、皆の者、かかれぃ!武器の分捕りなどはせず、ただただ、敵の首をあげよ!今川軍を撫で斬りじゃあ!鏖殺(みなごろし)じゃあ!義元の首、あげてみせい!」


信長の四度目の檄が、飛ぶ。

それは、味方に勝利を確信させ、鏖殺(おうさつ)へと駆り立てる大音声(ウォー・クライ)であった。

あと少しで、桶狭間の戦いも終幕となるところまでやってきました。

桶狭間の戦い、書き終わったら可及的速やかに投稿の連載モードもあと少しです。

頑張れ、俺。


少しでも「面白い!」「続きが気になる」と思った方は、下の★でご評価いただけると、作品継続のモチベーションになります。

宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ