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148話 会議と報告、わずかぱかりの嘘

ども、坊丸です。今年も清須城の新年の儀に出席しました。

信長伯父さんの鳴海城攻略の方針が明らかになりました。

地名と時期を鑑みるに、今年、桶狭間の戦いが起こる感じです。

そこらへんも含めて、天使級10598号のヤツにいろいろ聴かないとなぁ…。


「殿、坊丸様、お帰りなさいませ」

柴田の屋敷に親父殿と馬に二人乗りで戻って来ると、中間や馬丁の人達が出迎えてくれました。


「今戻った」

「ただいま戻りました」


柴田の親父殿に馬から下ろしてもらって屋敷内に。

表広間で、婆上やおたえさん、お千ちゃんも出迎えてくれます。


「権六、坊丸、新年の儀お疲れ様でございました」


「母上、ただ今戻りました」

「ただ今戻りました」


皆に帰宅の挨拶を済ませ、自室に戻るとお妙さんに手伝ってもらい、小姓役の為に誂えてもらったちょっと良い衣装からいつもの衣装にチェンジ。


城の様子を弟達が聞いてきたので、それに答えていると、柴田の親父殿と婆上様が呼んでいるとのこと。

なんだろう?今回は何もやらかしてないと思うんですけれども?


柴田の親父殿の自室に到着すると、既に二人とも着座しております。さらに、吉田次兵衛さんもいらっしゃる。

なんだ、この状況。


「坊丸です。お呼びとのことで、参りました」


「おう、坊丸か。そこに座れ」

柴田の親父殿の雰囲気からするに怒られるわけではなさそう。良かった。


「さて、坊丸も来たので、先程、権六からの報告の内容を確認いたしましょうか」


義母上(ははうえ)、では、私が」

ん、吉田次兵衛さんが、婆上様のことを義母上(ははうえ)と呼んだということは、親族会議ってことだぞ。


吉田次兵衛さんは、真面目な人だから、公式のときは婆上様のことを大奥様、プライベートな時や他の人が居ない時は義母上(ははうえ)と呼び分ける傾向が強いんだよね。

たまに間違うことあるみたいだけど。


吉田次兵衛さんが話したのは、対鳴海城、大高城用の砦の建設のことでした。

何か問題あったっけ?


「はぁ、柴田の家は槍働きの武勲を以て鳴る家柄。またしても、次の戦で拠点となるであろう砦の建設という重要な場面で起用されないとは…」

婆上様がそう言うと落胆の色が隠しきれないご様子。


「しかし、砦の建設を任されただけで、砦の指揮を任されたわけではありますまい」


「権六、それは甘いというもの。自分が作った砦であれば、砦の指揮もということになります。特に佐久間信盛あたりはね」

自分も婆上様の意見に賛成です。

わざわざ製作者じゃない人に指揮を任せるメリットが無いよね。

どこに何があるか、どういう意図でその場所にその施設を作ったか分かってる人が使ったほうが良いもん。


「佐久間信盛様がそう云うかは、さておき、義母上(ははうえ)の申される通り、普通に考えれば、砦の作り手が砦の主になるは道理でございましょうな」


「坊丸は、どう思う?」


「はっ、婆上様、次兵衛殿の意見に賛成です」

うん、完全に正月の柴田家の家族会議に参加しろってことですね。

預かりの身だから、こういうのには呼ばれないと思っていたんですがねぇ…。

信頼が嬉しくもあり、重苦しくもありってところですな。


「やはり、坊丸でも、そう思うか…。作っただけで、砦の主になるのは別という期待も少しはしていたのだがなぁ…」


「ですが、重臣の森可成殿や林殿、さらには最近、伯父上が重用している丹羽殿、木下殿等も選ばれてはおりませぬが」

聞いていて気になっていた点を指摘してみることにしました。


「森可成様は、美濃方面に関与することが多いですからな。林秀貞様は、武よりも(まつりごと)の方が得意なお方。昨年より丹羽様とともに上四郡の農政、地侍、少名(しょうみょう)どもの掌握等に動いていると聞き及んでおります。木下様は、それがし、あまり存じ上げない方なのでなんとも…」


そう言うと、吉田次兵衛さんが、チラっと柴田の親父殿の方を見ました。


「木下は、城の勘定方の仕事もしておるからな。そちらが忙しいのであろう」


少し不機嫌そうに言放つ、親父殿。

うん、この二人、この頃から微妙に仲が悪いのかな?


それにしても、他の有名家臣は、他に仕事が明確なのに、柴田の親父殿は特に担当など無いご様子。

それなのに、砦建設にも呼ばれないとなると、干されている感がありますね。

うん、柴田の親父殿には腐らず頑張ってもらいたいから、少し元気づけておこう!


「親父殿。今の織田家の武人と言えば、佐久間盛重殿、森可成殿、そして、柴田の親父殿の三人。鳴海城攻めの準備では出番が無いかもしれませんが、今川が攻めてくることがあれば、必ずや親父殿の力が必要になりまする。今は、ただ武を磨く時かと」


「ふっ、坊丸に励まされる様な日がこれほど早く来るとはな。まぁ、いい。砦の建設のことは諦めて、今川との大戦(おおいくさ)に備えることとするか」


「「それが良いかと」」

吉田次兵衛さんと一緒に柴田の親父殿の決断を後押しです。


「私はまだ納得できませんが、次兵衛と権六がそれで良ければ致し方ありますまい」

婆上様、柴田の親父殿の決定とやる気に水を差さないで!お願いだから! 

あ、そうだ。天使級10598号のヤツとの交信に仏間借りられないか聞いておこう!


「親父殿、婆上様、今は亡き父の信行に奇妙丸様の小姓役を務めたこと、報告致したく存じます。父信行は謀反人故、手元に位牌もございませんが、お許しがいただければ、こちらの屋敷の仏間にて手を合わせて報告させていただきたくお願い申し上げます」


そんなことを言いつつ殊勝な顔をして頭を下げてみる。


「おぁ、坊丸。そなたがそんなことを言うようになるとは…。先祖の霊に感謝し、報告することは素晴らしいこと。この婆が許します」


ちょっと驚いた様な顔をした後、婆上様が痛く感激したご様子。

ごめん、本当は天使級10598号のヤツと交信する場所と時間確保の為なんだ。


婆上様、亡き信行パパ、ゴメンね。

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