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147話 永禄三年 新年の儀 後段

ども、坊丸です。

清須城にて奇妙丸様の小姓役をしてます。

新年の儀で、信長伯父さんが今年の方針を家臣の皆さんに力説中ですね。

うん、とりあえず、キリッとして聞いていましょう。


「山口教継を降す」

と、信長伯父さんが少し高い声で宣言する様に言い放ちました。


「おそれながら。殿、降す、でございますか?討つではなく?」

と、少し困惑したような声色で佐久間盛重殿が質問しました。

うん、自分もそこはちょっと気になっていた。


「降すだ。山口教継、教吉親子は、鳴海、大高の地形を良く知っておる。出来うるのであれば、討ち取るのではなく、降したい。

それに、しばらく前に裏切ったとはいえ、かつては味方だったものだ。

それなりにこちらの手の内も知っておる。しかも、守りに徹されるとなかなかに面倒な者共である。

天文二十一年に古鳴海、赤塚で戦ったおりは儂は彼奴らを撃ち取ることができなかった。」


「おそれながら。しかしながら、あの時は殿も家督を継いだばかり。また、兵もあちらの方が五、六百は多かったかと」

と、信長伯父さんの機嫌を取るように佐久間信盛殿が意見を述べました。


「信盛、確かに、あの時は兵も少なかった。しかし、勝てなかったのは紛れもない事実。

故にこたびは、硬軟両面で行く。

秀貞、お主は父信秀の下、山口とも働いたことがあったな。返り忠を許すので織田に帰参するように調略せよ」


「承りましてござりまする」


「信盛、鳴海城の付け城を命じる。丹下にある古屋敷、善照寺の寺跡、中島村を砦とせよ。水野帯刀、梶川高秀はこれを補佐せよ」


「佐久間信盛、承りました」

「水野帯刀、承りましてござりまする」

「梶川高秀、ご下命、承りました」


「盛重、大高の東にある丸根山に柵を築き、砦にせよ。

秀敏の大叔父(じい)には、大高城の北東、鷲津山を同様に任せたく思う」


「佐久間盛重、ご下命、承りましてござりまする」

「織田秀敏、承った。ただし、信長様、それがしは年でござりまするので、甥の飯尾定宗とともに行いたく、お願い申し上げます」


大叔父(じい)、許す。合力して存分に働くがよい」


「「ははっ」」

連枝衆の席の織田秀敏殿が信長伯父さんの方を向いて平伏すると、申し合わせた様に部将格の席に居る飯尾殿が平伏していました。


「佐治殿には正光寺、水野殿に氷上辺りに砦を築いて欲しい旨書状を送っておる。

沓掛城のことも気にはなるが、まずは鳴海、大高の両城である。これら二つの城を取り囲むように付け城に築いて今川から切り離す。


付け城に恐れおののき、山口父子が帰参すればよし。帰参せぬ場合は、兵糧攻め、力攻めのいずれかを付け城とした砦を用いて行えばよい。


さて、今年も奇妙丸の顔見せを兼ねて新年の挨拶を受ける事とする」


信長伯父さんの今年の施政方針演説も終わったようだし、ここからが自分のお仕事時間ですね。


今までは、信長伯父さんの話を聞きながら、織田家の家臣の皆さんの様子を見ていたけど、ここからは真面目に行かないとね。


そういえば、歴史好きの友達が桶狭間の戦いが迂回奇襲だったのか正面強襲だったのか解説してくれた時に、鳴海とか善照寺って地名が出てきていたような…。


天使級10598号のヤツと転生直後に話したときも五歳くらいみたいなこと言っていた気がするし…。


約束の五年間隔もクリアしてそうだし、近々、天使級のヤツと連絡を取るか…。

確か、真摯に祈れば応えるみたいなことを言っていた記憶があるんだよね。


そんなことを考えながら、信長伯父さん、奇妙丸様が新年挨拶を家臣の皆さんから受けてるのを小姓として側に控えて見ております。


挨拶は重臣から開始。

重臣筆頭は、佐久間盛重殿。

森可成殿、佐久間信盛殿、柴田の親父殿、林秀貞殿。

うん、重臣衆の席次は変わらないですね。


部将格は、丹羽長秀殿から開始。

坂井政尚殿、蜂屋頼隆、木下秀吉殿。

って、木下秀吉こと豊臣秀吉が五、六人抜きで部将格の四番手に躍進しておる。

その後に、佐々政次殿や千秋季忠、さっき名前があがった梶川殿や水野殿などなど。


昨年はこのあたりで奇妙丸様と一緒に中座しましたが、今年はそのまま残ります。


その後は、母衣衆。

知らない人も多いですが、お桂殿の親族の滝川一益殿や上洛の時に一緒に行ったと伝え聞く金森長近殿等等。


馬廻り衆や吏僚になると前世知識でも知らない人が増えてきて、だんだん飽きて来ました。

目を開けたまま、居住まいを維持したまま意識が飛び始めるたところで、奇妙丸様退室の声がかかりました。

よし、あとは、粛々と退出するだけだ!

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