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144話 奇妙丸様と遊んで土産もらったよ

ども、坊丸です。

奇妙丸様の小姓役ですが、他の三名と一緒に奥御殿で奇妙丸様と馴染む目的で少し過ごす様です。

しかし、後ろの腰元の人、気配は微かにすれど足音がしないので、何か怖い。

もしかして、腰元は仮の姿で、くノ一の人が護衛役でもしてるんでしょうか。


何度か奥御殿には入らせて頂いておりますが、今回は奇妙丸様の私室扱いのお部屋に案内いただきました。


ちなみに、長谷川さんは奥御殿の少し前の廊下にて離脱。

そこで控えているから、四半刻程経ったら声をかけて欲しい旨、お桂殿に言うと、奥御殿に背を向けて片膝立てて控えました。


その脇を抜けて、奥御殿にGOです。

他の3名は、奥御殿に入る意味わかってるのかな?

信長伯父さんや奇妙丸様のかなりプライベートエリア入るんですよ?

信頼度が高くないと許されない行動なわけです。

ま、元服前の子供だから許される面もあるかもしれませんが。


奇妙丸様の私室に入り、一同が着座するとお桂殿から名乗りを上げるよう指導が入りました。つまりは自己紹介みたいなもんでしょうか。


理助がちょっとムッとした顔を見せますが、今は重臣の子息と織田家の使用人という関係性ではなく、小姓と乳母と言う立場なの分かってないのでしょうか?

森虎丸君がそこらへんを察して、自分から自己紹介を開始します。


「森可成が嫡子、森虎丸です。新年の儀での奇妙丸様の小姓役、宜しくお願い申し上げまする」


まだ少しムッとしてますが、理助も続きました。

「佐久間盛次が嫡子、理助です。奇妙丸様、宜しくお願いいたします」


座り順なのか歳の順なのか迷ったらしく、牛助くんがこちらを見てきましたが、先を譲る仕草をすると、ホッとした様子の後、自己紹介。


「佐久間信盛が嫡子、佐久間牛助です。よしなにお頼みします」


最後に自分。自分を最後にしたのは、やっぱり自分は柴田家預かりの身だからね。三人とは立場が微妙に違いますから。


「今は亡き織田信行が嫡子にして、柴田勝家殿預かり、津田坊丸です。奇妙丸様、お桂殿、宜しくお願い申し上げまする」


「さて、奇妙丸様。四名にお声をかけてください」


そう促されて、奇妙丸様が発声。


「織田上総介信長が嫡男、奇妙である。ここに居る四名、新年の儀にて小姓役、しかと務めよ」


「さて、挨拶は済みましたので、ここからは堅苦しく過ごすのは無しといたしましょう。奇妙丸様はこれまで、そこに居る坊丸殿以外、同じくらいの歳の童とはあまり遊んだことがないゆえ、宜しくお願いしますよ」


今までクールビューティーの様な佇まいだったお桂殿が、急に朗らかな笑顔になり、そう言い出しました。


すると、多分隣室に控えていたらしい、さっきの足音を立てない腰元の人が投扇興のセットを運び込みました。


うん、自分が作ったやつだね。

確かにミニゲームひとつやると仲良くなるよね。その人の個性も見えるし。


「こちらは投扇興と言う遊具です。そこな、坊丸殿が奥方様や奇妙丸様のために献上したものになります。男の子(おのこ)五人ですから、皆で駆け回りたいところとは存じますが、こちらは奥御殿になりますし、先日一の姫様がお生まれになったばかり。あまりうるさくされては困りますゆえ、本日はこれで一遊びして親睦を図っていただこうかと」


姫様誕生してたのか。生母は吉乃殿かな。いつも奇妙丸様の側にいる印象なのに居ないし。


「奇妙丸様、妹君お誕生おめでとうございます」

すかさず、虎丸君が祝辞を述べます。

「「「おめでとうございます」」」

それにつられて、祝辞を述べる、自分を含む残り三名。


「うむ、皆のもの、ありがとう。でもまだ三回しか会ってないから…」


あ、そんなもんなんですね。


「それはさておき、投扇興の準備が出来たようです。さて、どのように遊ぶものか説明をと思いましたが、こちらには制作者の坊丸殿がおられる様子。奇妙丸様と坊丸殿で三投ほどの短めの一勝負行うのがよろしかろう。それを見ながら簡単に遊び方など話しましょう」


その言葉が終わるや否や、奇妙丸様がこちらに来ました。


「坊にぃ、久しぶり。奇妙は、投げるの上手くなったよ。早くやろう!」


そういうと、奇妙丸様から自分の手を取ってたかと思うと、奇妙丸様に少し引っ張られる様にしてセットされた投扇興の側まで移動。


奇妙丸様が扇子を投げると、扇子がひらりと舞い、台上の駒に命中。

本当にうまくなったご様子。自分はあれからやってないけど、大丈夫かなぁ…。

落ちた駒と扇子の位置を腰元さんが確認。

「末摘花 2点にござります」

あ、点数判定もしてくれるんですね。


自分も投げてっと。よし、命中。

そして、奇妙丸様と同じ形に。

「末摘花 2点にござります」


二投目は、奇妙丸外すも、扇は、毛氈の上

「手習 1点にござります」


ここははずした方が良いかと思いながら投げると、命中しちゃいました。

「末摘花 2点にござります」


奇妙丸様がちょっと悔しそう。

ま、これも勝負の綾ってもんです。

が、ここは接待モード。次は意図的にミスのコツリを狙います。


「奇妙丸様。末摘花 2点にござります」

よし、奇妙丸は命中。自分がはずすか、コツリを出せばokです。

そして、自分が投げた扇子は狙い通り台座に当たりました。


「坊丸殿。コツリ。1点減点でご…」

カタリと倒れる台座の蓋。そして広がる墓場と骸骨達。

後ろからちょっとビックリした様子が感じ取れます。

牛助君とか「ヒッ」って声漏れてた。


「野分に変わりました。減点50点にございます」


ちょっとホッとして溜め息一つ。その後、悔しがる様子を意図的に演じておきます。


「坊にぃ。僕が勝ったよ!やった!坊にぃも二回当てて上手だったね!」


勝利を喜びつつも他人を気にかける優しさ。奇妙丸様は、良い子やぁ。


そして、簡単にルール説明を三名にしているお桂殿。

一瞬、こちらを見たときに、軽く目礼された気がしますが気のせいでしょ。


その後は、奇妙丸様と虎丸君のチームvs理助と牛助君チームに別れて数投。

奇妙丸様チームで理助、牛助君が入った状態でも行い、計三戦。

その間は、自分は点数を確認したり告げる審判側になりました。


結論から言うと、虎丸君はそこそこ上手い上に奇妙丸様に勝たせるように気配りあり。


理助は、パワープレイで当たるか、大外しか、減点対象の野分ばかり。うん、理助は理助でした。


牛助君は、急速に上手くなりましたが、奇妙丸様に気配りするまではいかない感じ。最年少だしね。

牛助君と組んだ時の奇妙丸様は先輩風、お兄ちゃん風が吹き荒れてました。

弟や妹が大きくなったら一緒に遊べると良いよね。


時間となったところで、きな粉が練り込まれた飴をいただきました。

いやぁ、気を使った体に飴が甘いくて旨い。

って、これ、自分が作ったやつかな。

土産に少しもらえたので、他三名は結構嬉しそう。

そんな感じで、少しずつ打ち解けて帰路につきました。


しっかし、自分が納入したもので遊んで、自分が信長伯父さん上洛の際に手土産になるようにって作った飴を土産として持たされると、なんて言うか微妙な気分。


さ、気持ちを切り替えて、新年の儀頑張ろう。

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