141話 火縄銃の練習会、終わったと思ったのに今から呼び出しですか?
ども、坊丸です。
蜂蜜と蜜蝋を手に入れました。
加藤さんには、蜂蜜関連ではいろいろ負担をかけましたね、いやほんとに。
自分が偉くなって城持ちクラスになったら、家老格として処遇するからね。きっと。
ただ、蜂蜜は、柴田家の女性陣に無加工のまま、ただただ舐めるという消費方法でそこそこ消費されてます。特に消費が多いのはお妙さんなんです、いやほんと、勘弁してください…。
そんなわけで女性の甘味に関する執着は、平成令和でも戦国時代も変わらないようです。
あ、自分もですか?自分もですね。
まだ、乳製品を手に入れていないので、なかなかきちんとした洋菓子は作れないわけですが、砂糖、水飴、蜂蜜と各種甘味は手に入れたので、時々、試作品は作ってます。
まぁ、どんな感じのを作ったかは、いずれそのうち。
火縄銃の防水、特に火縄が湿気ると火が点かない問題については、蜜蝋を手に入れたことで、一応の解決をみました。
橋本一巴さんの残した対応策、火縄に乾いた杉の葉の粉を練り込む方法に加えて、湯煎した蜜蝋に火縄を一瞬通して、蜜蝋でコーティング。この工夫で火縄の中には湿気が入らないように工夫しました。
雨や湿度の高いときも、使用時には火縄を切れば、蜜蝋で守られた状態で、乾燥した新しい面が出てくるって寸法。
雨が入りづらい火蓋の形状や開閉の工夫と早合による火薬と弾丸のカートリッジ化で、装填時及び保存時に火薬が濡れたり湿気ったりするのを可能な限り減らす工夫もしたしね。
銃身が濡れることによる発射不良は、撃つ前まで油を染み込ませた布巻いておくくらいしか思いつかないないんだよね。
そんな感じで火縄銃の雨対策を秋から冬にかけて加藤さんとやっておりました。
変なものを作らせたり、蜂の巣を回収させたりしたときよりも、火縄銃の改良については加藤さんの意欲が段違いに良かったりしています。
加藤さん、こういう事の方が好きなんだね、ウンウン。
数週に一度、これらの成果を確認したり試したりするのに、清須城そばの河原で行われる信長伯父さんの火縄銃の修練にも参加しております。何事もトライ&エラーで改良していくわけですよ。
まぁ、柴田の屋敷も十分広いので、屋敷内に巻き藁や板を立てて試射してもいいんですが…。
ほら、柴田の屋敷だと、周囲に迷惑になるし。
ついでに成果や現状を信長伯父さんに近くでお目通りして、報告できるし。
さらに、試射で使った分の火薬の請求をその場でできるし。
良いことづくめなんですよ、火縄銃の修練会参加は。
うん、そして、社会人として、ホウ・レン・ソウは大切だしね。ま、実際は信長伯父さんに相談事って感じになることはありませんがね。
え?本音?
そりゃあ、火縄銃を使って信長伯父さんを狙撃しようとしているとか言う感じの噂が出ないように気を配ってるに決まってるじゃありませんか。
謀叛人を父に持つというレッテルはまだまだ完全に剥がせたわけじゃないしね。
元服後の諱をいただいたり、清須城の新年会に呼ばれたり、世継ぎの奇妙丸様の相手をしたりしているおかげで、以前ほど白い目で見られないのは、ありがたいですがね。
それに、信長伯父さんとその家族に何かあれば、後継者争いに担ぎ出される可能性もまだ消えた訳じゃないだろうしさ。
信長伯父さんに猜疑心を抱かさないように気を配りつつ、使える人材だともアピールする手段なわけですよ。
意外と考えてるでしょ、自分。
そんな感じで、信長伯父さんの火縄銃の修練に参加後、柴田の親父殿に見守られつつ、橋本一巴殿から贈られた形見の短筒を加藤さんと一緒に片づけていると、小姓の佐脇さんが我々を呼びに来ました。
「柴田様、津田坊丸殿。殿がお呼びです。陣幕の方へお越しいただきたく。あ、加藤殿は、そのまま。火縄銃の片づけをお続けいただきたく」
火縄銃の片づけの手を自分と加藤さんが止めて立ち上がると、佐脇さんは加藤さんの方に掌を向けて制止しました。
どうやら、柴田の親父殿と自分だけを信長伯父さんが呼んでいるご様子。
むぅ。何事でしょうか?最近は何かやらかしたこともないと思うんですが。
菜種油の製油と養蜂業については、中村文荷斎さんが報告したって言ってたから大丈夫だし。
甘味は牛乳やバター、生クリームを手に入れてからが本番で、まだまだ試作だから信長伯父さんに献上できる品ではないって柴田の親父殿には口を酸っぱくして言ってるし…。
「「失礼いたします。お呼びにより、参上仕りました」」
陣幕をくぐったところで、柴田の親父殿と息を合わせてご挨拶。
信長伯父さんの前まで進んで、片膝をついて控えます。
「勝家、坊丸。片づけの途中に呼び立ててすまんな。む、坊丸。指先に煤がついておるな。一巴の形見の品の片づけ、加藤とやらに任せきりでないと見える。感心感心」
「は、お褒めにあずかり光栄でございます。火縄銃の準備や片づけは自分一人でもできるようになるよう橋本一巴殿の遺言状に書かれておりましたゆえ、心がけております」
「で、あるか。一巴の言葉を守ろうとする姿勢、重ねて感心である。それはさておき、勝家、坊丸。そなたらに10日後、二人で清須城に登城することを申しつける。詳細はその時に伝えるが、年明け、新年の挨拶に奇妙の顔見世を今年も行う。その際、奇妙にも小姓衆が必要じゃ。その小姓役の一人を、坊丸に申しつける。本来なら、後日書状にて呼びつけるところであるが、本日の火縄銃の修練に顔を見せた故、今ここで簡単に伝えることにした。良いな」
「「承りましてございまする」」
今ひとたび、柴田の親父殿と呼吸を合わせて頭を大きく下げつつ、了承の意を伝えます。
今年も新年早々清須城に登城か…。すこし気が重いな。
ちなみに、河原で片膝ついて控える体勢をしていると、足がめっちゃ痛いので、つらかったです。
ドラマ「新・信長公記」を応援しています。原作読んでないけど。
予約投稿で、放送時間前に投稿したから、まだ見てないけど。




