133話 日々是好日 あるいは感謝の日々
ども、坊丸です。
よく知りませんでしたが、油は大山崎ってとこの油座が独占販売状態らしいです。
信長伯父さんこと、織田信長の楽市楽座ってこういう座の独占販売の否定なんですね。
うん、この世界に生きていると、楽市楽座をした意味が身に染みてわかります。
虎哉禅師に色々相談したわけですが、養蜂も製油も牛乳もまだまだどうにもならないわけですよ。
前世知識があったとしても、所詮、幼児だし。
自分で何か作れるわけでなし。
鍛冶関連は加藤さん、木工関連は福島さん、色々交渉事が必要なところでは文荷斎さんの協力があってこその坊丸です。
あ、食べ物関連は、お千ちゃん、お妙さん、お滝さんも協力いただいてましたね。お千ちゃん達にも感謝。
ちなみに、毎日、加藤さんは圧搾機の試作品を柴田の屋敷に持ってきてくれます。
一応、イメージや改良点を話すと書き付けにメモを取っては、明日また直してきますと言って帰っていきます。
ついでに、福島さんの進捗も教えてくれます。
信長伯父さんから自分に扶持が出ているから、加藤さんが実質、坊丸の専属鍛冶屋として働いてくれるわけです。
あ、自分の扶持は、柴田の親父殿と吉田次兵衛さんが管理してくれてます。
なので、加藤さんが色々作るのに必要な材料費とかは、自分と圧搾機についてディスカッションしたあと、時々、吉田次兵衛さんに会ってお金をもらっているご様子。
そこら辺は柴田の親父殿達を信じてるので、お任せです。
そんなわけで、ここ数日は、朝の鍛練、朝食、吉田次兵衛との勉学、加藤さんとの面会等で時間が過ぎていきます。
加藤さんとの面会の後は、次兵衛さんとこの伊介や佐久間盛次さんとこの理助、久六達と相撲とったり、石合戦したりしてます。
あ、一回、虎哉禅師が柴田の屋敷に来て講義をしてくれました。大山崎の油座関連という事で、岩清水八幡宮からの八幡信仰についてでした。
宇佐八幡、岩清水八幡、鶴岡八幡ときて、武家の守り神の立ち位置になった話とか、道鏡と和気清麻呂の話とか。
ちなみにその回は次兵衛さんとこの伊介もたまたま来てたので、一緒に聞いて行くはめに。
理助と久六の声も近くに聞こえたけど、虎哉禅師が屋敷に来ていることに感づいたらしく、逃げやがったみたいです。
こういう嗅覚はすごいんだよな、あの二人。
そんな日常を過ごしていると、福島さんから養蜂の為の巣箱が仕上がったと連絡が。
まだ三月後半ですが、とりあえず受け取って、石田村に設置です。
加藤さんに柴田家の馬を貸し出して、文荷斎さん、加藤さんと三人で馬で移動。
斎藤家に武士として一回仕官している加藤さん、乗馬はなんの問題もなくこなしてます。
自分は、吉田次兵衛さんの基本と文荷斎さんのスパルタ式での乗馬訓練でどうにかできるようになったわけですが、加藤さんの様子を見るに乗馬も自転車と同じで一度出来るようになるとしばらくぶりでも身体が覚えているってやつなんですかね。まぁ、いいけど。
石田村に到着し、加藤さんに持ってもらっていた巣箱を菜の花の側に設置です。
「坊丸様、こちらでよろしいですか?」
石田村の人達が養蜂の為の巣箱を直に地面におかなくて済むように、土台を作ってくれています。
「そうですね、その土台の上に置いてください」
「ふむ、先日の虎哉禅師が言っていた様に日陰になるような場所ですな。で、それがし、蜜蝋で作った蝋燭をこの日のために仕入れて参りました。坊丸様は石田村の近辺で蜂の巣が取れたらその蜂の巣から蜜蝋を取って塗るおつもりの様子でしたが、はたしてそう都合よく取れるとは思えませんでした。なので、知り合いで文具や蝋燭を取り扱う商人に蜜蝋で出来た蝋燭を手に入れるよう頼んでおきました。坊丸様、こちらです」
すごいよ、文荷斎さん。
蜜蝋は、石田村の人達に頼んで蜂の巣が取れたら分けてもらおうと思ってた程度だったのに!
「ありがとうございます、文荷斎さん。蜜蝋、使わせてもらいます」
「しかし、蜜蝋ですが、どのように塗るのですか?」
「ああ、これはですね。ここがこう外れるのです」
巣箱の上をパカッと開けて、巣枠を引き抜いて見せます。
「あぁ、これは単なる箱ではなく、葛籠のように蓋がついているのですな。この枠のようなものも取り出せるのですな」
その様子を見た加藤さんが、文荷斎さんに巣箱の説明をしてくれたので、後はお任せ。
その間に石田村の人に頼んで蜜蝋蝋燭に点火。
説明が終わった加藤さんに火のついた蝋燭を預けて後は巣箱のなかに溶けた蝋を適当に垂らしたり塗ったりしてもらいました。
お巣箱の回りに頼んだツツジ科の植物が。植樹されてます。
近くをとおった石田村の人に聞いたら、ドウダンツツジやシャシャンボ、ウスノキ等を山や林から持ってきたとのことでした。
ツツジの仲間達はまだ花芽が少し膨らんだくらいですが、分蜂の時期に花を咲き誇らせてくれるのを期待です。
菜の花は、そろそろ花のピークが過ぎてきた感じでしょうか。一部分は花の時期を過ぎ、莢に実がつまり始めてます。
菜種の収穫まで後、20日くらいかな。その後乾燥させて、搾るから、加藤さん製作の圧搾機もそろそろ完成させとかないとね。
今年は、蜂蜜、蜜蝋、油でゆっくり鉄砲の改良と美味しいもの作りの工夫だな。
このときは、そんな風に思っていたんですがね…。




