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127話 焙烙玉とホットケーキ

ども、坊丸です。


自分が作った琥珀糖が山科卿に受けたらしく、本能寺から火薬の供給を受けることができるようになったそうです。そのご褒美で信長伯父さんから砂糖と火薬をいただいたわけですが、結局、火薬は焙烙玉の開発に使う羽目に。

 開発しただけでなく量産体制整えるまで、坊丸のところで作れってご下命いただいたときは気が遠くなりましたよ。結局、吉田次兵衛さんに壺の手配頼んだり、理助・伊介たち柴田家関連の子供たちに小石を拾い集めてもらったりしたうえで、加藤清忠さんと二人で石交じりの火薬を詰め込みまくりました。


しかも、柴田のお屋敷一同謹製の焙烙玉は、信長伯父さんの手で岩倉城攻めにてすぐさま使用されたご様子。柴田の親父殿が無事帰宅した後、城攻めの様子を夕食時に身振り手ぶり付で教えてくれたのでわかりました。


信長伯父さんは、城門の内側に焙烙玉を投げ込んで炸裂させ、城門の攻防を一瞬で終結させたらしく、城門に突撃したら、城門の内側は死傷者多数の凄惨な様子だったそうです。戦争映画で見る敵の籠る場所に手榴弾投げ込む感じだったんでしょうか。


いやはや、そんなことしていると城攻めの概念が変わっちゃうでしょ、信長伯父さん。城攻めで手榴弾みたいな感じで焙烙玉使ってたら、自分で名乗る前に、第六天魔王って呼ばれかねないですよ。ていうか、平城はめっちゃ堀を長い距離取るか、城壁を高く作らないとダメな時代を呼び込みかねないんですねど。


ま、自分じゃなくて、信長伯父さんが始めたんだから知ぃらないっと。科学や技術は悪くない、それをつかう人間が悪いんだ!って言って、言い訳しながら現実に目を背けていいですか?

あ、駄目ですか、駄目ですよね。ハハハ。


なにはともあれ、これで信長伯父さんは尾張の大部分を手に入れたことになるわけです。

尾張九郡のうち実に七郡以上に及ぶ支配地域です。


現状、支配できてないのは、知多郡、丹羽郡の一部、海西郡の一部。知多郡はその大部分を領有する水野家と鳴海城付近を領有する山口教継・教吉父子などが支配中。


まぁ、水野家は織田家の同盟者の立ち位置だけど、今川に攻められれば寝返るかもしれないし、配下や部下って感じではない印象。山口父子は信長伯父さんが当主になった頃に今川に寝返ってそのまま敵対関係らしい。


それに、丹羽郡にある犬山城とその周辺を領有する犬山織田家。当主の織田信清さんは信長伯父さんの従兄弟な上に、信長伯父さんのお姉さんを嫁に迎えているから義理の兄弟なんだけど、織田弾正忠家と一心同体というわけではなく、半独立状態って感じ。敵ではないし協力関係にあるけど、連枝衆って感じではない印象。


最後に海西郡の一部を服部党。ここは明確に敵対関係。今川と通じているらしいです。


桶狭間の前に順調に勢力を伸ばしている信長伯父さんですが、それ以上に岩倉城攻めで柴田の親父殿とその与力衆はほぼ無傷。柴田の与力、義理のお父さんが豆腐屋の玄久さんも無傷で帰宅できたらしいです。いや~、良かった、良かった。


さて、柴田の親父殿が無事に帰ったので、信長伯父さんからもらったお砂糖で先勝祝いに甘いもの作っちゃうよ。婆上とそういう約束だったから。


まずは、神棚に上げて置いた砂糖の壺を確認。うむ、誰も封を切っていない。壺の蓋を開けても、誰かが使った形跡なし。みんな真面目に柴田の親父殿が帰ってくるまで使わないっていう約束を守っていた様子。偉いぞ、柴田のお屋敷で働く人、一同。


蓋を開けると、茶褐色の砂糖、ブラウンシュガーが壺の中にぎっしり。

思わず、指をつっこんで一舐め。甘~い。


よし、このお砂糖をつかってなにか作るんですが…。

洋菓子作るのによく使う、バターと牛乳が手元にないからね。うどん粉すなわち小麦粉、卵、砂糖だけで作れるものは…


パンケーキかな。

重曹由来のベーキングパウダーとか戦国時代に無いので、フワフワに作るのが大変そうですな。


モン・サン=ミシェル風のスフレオムレツみたいに頑張って卵の白身をメレンゲにして作るしかですよね…。


でも、大丈夫。柴田のお屋敷には、ドジっ娘だけど単純作業に滅法強い、あの人。お千ちゃんって言う人がいるから。


白身と黄身を分けた上で、白身をメレンゲにしていきます。泡立て器とかないから、加藤さんにそれらしいもの作ってもらってあります。自分のイメージを大雑把に伝えると鍛治屋のスイッチが入ったらしく曲げた鋼線を束ねてかなりイメージ通りに仕上げてくれました。


さて、器具と素材の準備をしたところで、お千ちゃん召喚。


数滴酢を入れた卵の白身を器に入れて、お千ちゃんに泡立て器渡して、メレンゲ製作開始。


自分はうどん粉を篩にかけて、さらさらにして卵黄と攪拌。本当は牛乳を入れたいけど、無いので、水を少量追加。


お千ちゃんが泡立て器の付属品のようになってひたすら攪拌している横で杓文字で滑らかになるように混ぜ混ぜ。


滑らかになったら砂糖を少しずつ投入。

お菓子作りなんて、ほぼやったことがないから、少しずつ入れて甘味を確認。


お千ちゃんは、メレンゲを作るために無心で四半刻ほど混ぜてくれたので、めっちゃ良いメレンゲが出来ました。

さすがです、お千ちゃん。


「坊丸様、卵の白身を混ぜて、フワフワにしたのは本当に美味しい物ができるんですか?」


む、お千ちゃんは、信じていただけていない様子。もう少し、もう少しだから、信じて。

で、作ってもらったメレンゲにこれまた砂糖を少し追加して混ぜてもらいました。


そして、お千ちゃんに卵黄とメレンゲを混ぜてもらって、フライパンが無いから雪平鍋でパンケーキを作ってみました。


「坊丸様、黄色くて良い香りがしますよ。食べて良いですか?ねぇ食べて良いですか?」


お千ちゃんもう少し待って。しっかり火が入ってからね。

うん、裏返して両面が狐色になってきましたよ。美味しそう。


メレンゲで膨らませているから、焼き上がった後は少しづつしぼんでしまうんですが…


とりあえず、一枚は、お千ちゃんと二人で食べました。まだフワフワのうちに。


ちなみに、夕食の時に、婆上様と柴田の親父殿にも食べていただきました。

だいぶペタンコですが、美味しくいただきました。






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