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115話 寒晒しってフリーズドライ製法ってことみたいですよ

ども、坊丸です。

水飴ベースで、きな粉や練り胡麻などを練りこんで三種類の飴を作りました。

主にお千ちゃんの労働力によって。

さらに、お千ちゃんの伝手で冬場にも関わらず、ところてんをゲットできそうです。


---------------------

「ちわ、魚屋です?坊丸様居ます?」


かすかに、三郎さんの声が聞こえた後、お滝さんから魚屋の三郎さんがきたとの声かけがあったので、急いで台所へ。

「あ、坊丸様。昨日、お千のやつからところてんが必要だって聞いたんで持ってきましたよ。できるだけたくさんほしいって聞いたんで、多めに持ってきましたよ」


そういうと、いつもは魚が入った籠をもってくる三郎さんが、たらいに手をいれ、ところてんを数本掬い上げて見せてくれました。


「ありがとうございます。今日、持ってきてもらったのは全部買いますよ。なんと、伯父上から扶持がいただけることになったので、今日は自分の扶持から出しますね。お滝さん、こないだ準備してもらった坊丸用の台帳持ってきてもらっていいですか?」


「あいよ。あれ、坊丸様、いつの間に台帳の表紙に『大福帳』って書いたんだい。まぁ、いいか」

ははは、和綴じの台帳をみたら大福帳って書きたくなるよね。時代劇の商人って大福帳ってかいた奴を下げて歩いてるイメージだし。


「じゃ、台帳にところてん五本お買い上げってことで、書つけておきやすね。でも、冬場にところてんを好んで食うのは自分くらいしかいないかと思ってやしたよ。坊丸様もお好きなんですか?ところてん?」


「まぁ、ね。ハハは」


言えない。ところてんが食べたいから持ってきてもらったのではなく、寒天を作る素材として購入しただけなんて言えない。ここは笑って誤魔化すしかねぇ。


で、三郎さんが帰ったあと、寒天づくりに取り掛かります。

寒晒しこと、冬場の寒さと乾燥で、ところてんを天然のフリーズドライにしたのが、寒天でしょ。


細くしたほうが体積は小さく表面積が広くなるから早く乾燥すると思うので、天突きで細くしてから乾燥へ。目の細かい干し網に細くしたところてんを入れて、家の軒先、寒風吹き抜けるあたりに吊っておきます。あとは、数日してカラッカラになれば、寒天完成のはず。


で、毎日観察すること5日。

幸い、西高東低の気圧配置が続いたのか、氷が張るような寒さと雨のすくない乾燥した日が続いてくれたおかげで、なかなかの乾燥具合に。

うん、透明感のある細い寒天完成。糸寒天ってやつですね。


これをお湯で戻して、冷やせば寒天のお菓子の素材完成。

よし、クッキングタイムだから、そろそろお千ちゃんを召喚だな。

お滝さんに手伝ってもらうのでも良いんだけど、お千ちゃん、前回頑張って飴を練ってくれたし、ところてんの伝手を作ってくれたしね。


干し網に入った糸寒天を持って台所に到着。

「あ、お滝さん、この寒天を使って、伯父上からご下命のあったお菓子を作りたいから、お千ちゃんに声かけてもらって良いですか?あと、竃を貸してください」


「あいよ。お千を呼んでくるよ。いつもの様に竃や鍋は使ってて良いよ」

と言うと、お千ちゃんを呼びにいってくれるお滝さん。

そして、そんなに離れところにいなかった様子なのか、すぐに現れたお千ちゃん。


「呼んできたよ、坊丸様」

「お千が来ましたよ。坊丸様!お菓子作りですよね!張り切ってお手伝いしますよ!」


お千ちゃんが来たところで、少なめの水を張った鍋を竃にかけ、湯がわき始めたところで糸寒天を投入です。

「寒天がしっかり溶けるまで、かき混ぜてくださいね」


「坊丸様、さっきから『かんてん』って何度か言っているけど、なんだいそれ?」


「え?お滝さん、寒天って知らないんですか?」


「知らないよ。だから何だい、『かんてん』って」


って、マジか。もしかして、まだこの時代、寒天ってできてないのか?

だとしたら、革新的なお菓子ができる可能性があるってことだよね。

て言うことは、信長伯父さんの無理難題、クリアできる可能性が高いぞ!ってね。


「少し前に、三郎さんからもらったところてんを寒さに晒して乾燥させたもののことですよ」


「ああ、ところてんを寒晒ししたから、『寒天』ね」


「へぇ、この透明な細い麺みたいなものが、もとはところてんだったんですねぇ」


そういって、寒天を温めて溶かしていく、お千ちゃん。

均一に溶けきったところで、水あめ投入。泡ができたときは竹串でつぶしてもらいながら、煮詰めてとろみが出てきたところで、金属バットに移して…。って、金属バットなんてものは、戦国時代にねぇ。


「溶かした寒天を固めるのに、何か器に移したいんですけど、器ないですか、お滝さん?できればそこそこ深くて、均一な深さのものが良いんですが…」


「う~ん、枡にでも入れるかい?正月なんかに使う塗り物の一合枡が何個かあったはずだね。それに入れてみるかい、坊丸様」


グッドです!お滝さん、そのアイデア、採用。

「いいですね。塗り物の器なら、この熱くて溶けた寒天にも負けないし、何より寒天の表面がツルリンと綺麗になりそうです」


「あいよ、じゃあ、ここに並べておくから、そこに注ぎ入れると良い」


「お千ちゃん、よろしくお願いします。あ、注ぎ入れるのは半分くらいの量にしてくださいね」


「は~い」


よし、今回は、お千ちゃんのドジッ娘が発揮されずに問題なく、寒天は塗り物の枡に注ぎ入れられている。

正直、思いっきりこぼすイベントを起こすんじゃないかと不安でしたよ。

本当は、残りになにか着色したいんだけどなぁ~。とりあえず香りづけにまた、柚子でも入れてみるか。


「お滝さん、昨日、飴の香りづけ、味付けに柚子を使ったんだけど、まだ残ってます?これにも柚子の香りつけたいんで」


「あるよ。柚子の搾り汁で香りづけするんだね。今絞ってやるよ。ほい、こっちの小皿に搾り汁、こっちには柚子皮を刻んだのだ」


「ありがとうございます。でも、透明感を出したいから、搾り汁だけで良いですよ。じゃあ、お千ちゃん、残りに柚子の搾り汁を少しづつ入れてみて」


「は~い」

といいつつ、柚子皮の方を手に取るお千ちゃん!


「って、そっちじゃないよ、お千ちゃん!」


「え?」

と言って、こっちを振り向く勢いで柚子皮が少し鍋の中に。流石や、ね、お千ちゃん。ここでドジッ娘イベントかよ。

そして、鍋の中をのぞき込むお千ちゃん。


「あ、あぁぁ!どうしましょう、坊丸様!柚子の搾り汁のはずが、柚子皮が入ってしまいました!」

うん、知ってる。その瞬間を、こっちからは良く見えたから。


「とりあえず、柚子皮の小皿を置こうか、お千ちゃん。そして、搾り汁の方を少しづつ、鍋に入れて」


「は、はい」

今度は、ドジッ娘イベント特に起こりませんでした。やれやれ、だぜ。

今から柚子皮を一個一個取るのは面倒だし、このまま固めちゃおう。

すこし煮詰めてもらったところで、柚子皮、柚子の搾り汁入り寒天を一合枡に分注してもらいました。

よし、後はまた涼しいところで固めれば、琥珀糖の原型は完成です!

寒天作るのに、名古屋の冬の気温じゃ無理なんじゃないか?とお思いのそこの貴方!貴方ですよ!


気象庁のデータで名古屋の一月の最低気温を調べてみてください。1890年ごろからデータありますので。

しかも、このころよりも戦国時代は寒いはずです。

何故って?

小氷期、小氷河期、ミニ氷河期といったワードと最新ってワードを入れてgoogle先生で検索してみて下さい。最新の小氷期が何時から何時までかわかりますよ。


ここで答えを教えてもいいんですが、自分で調べた知識の方が、学習効率が高いですからね。

検索、検索!

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