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103話 収穫の後は、酒盛りですか

ども、坊丸です。


仁左衛門さんに案内のもと、柴田の親父殿、文荷斎さん、玄久さんとで収穫量の確認をしていましたが、そのころ、加藤さんと福島さんに千歯扱きを準備してもらいました。

加藤さんに至っては千歯扱きの設営3回目なので、速やかに準備していただいたようで、既に準備万端です。


「加藤さん、福島さん、千歯扱きの準備ありがとうございます」

二人に感謝して、軽く頭をさげます。


「坊丸様、こちらは、なんです?」

と仁左衛門さんに質問されました。


「農作業の効率を上げるための農機具第三段ですよ。今まで扱き箸で行っていた脱穀を一気に楽にする機会です」


「ほぉ、脱穀が楽にできるのですか!それは良いですな」


「実際やるのを見たほうがわかりやすいですから、脱穀する状態の稲穂をお願いします」


で、加藤さんにいつものように千歯扱きで脱穀してもらいます。

数回、千歯扱きの歯の部分に稲穂を通しただけで、脱穀が完了するのを見た、仁左衛門さんが目を見張って、唸り声をあげています。

そして、最初は、遠巻きにみていた村の顔役の人たちがいつの間にか、千歯扱きの傍にきて、千歯扱きで脱穀された籾を検分して、いろいろ話し始めました。


「坊丸様、これは、良いものですな!ぜひ、ぜひ、このまま、うちの村に置いておいてください!これがあれば、脱穀に使っていた時間が大幅に減ります!あと、麦にも使えますかね?」


はいはい、そのつもりで持ってきましたからね、大丈夫ですよ。

麦用に千歯扱きの歯の幅、隙間を調整したものを作れば行けると思います。

きっと多分。


「麦用に千歯扱きの歯の幅を変えたものって作れますかね?加藤さん?」


「そうですな、麦用のほうは歯の幅が広くつくるようになるでしょうな。麦用のものも作りましょうか?」

そういって、眼を細め、顎を手でさする加藤さん。


「歯の部分だけ替えるようにできないですかね?土台の部分は同じものを使って、歯の部分だけかえるんです」


「ふむ、米用、麦用と別々に一台づつ作るのではなく、歯の部分だけ替えるのですか…。面白いですな、工夫のしがいがありそうだ」


「おいおい、正左衛門、大丈夫か」


と、今までの流れを横で聞いていた、文荷斎さんが加藤さんを心配します。


「加藤さん、面倒くさいかもしれないですけど、よろしくお願いします」


加藤さんの気持ちが変わらないうちに、作ってもらう流れにしたいので、よろしくお願いいたしますって言いながら、また頭を下げます。


「坊丸様、そう頭を下げずとも、いいですよ。信長様の前で、坊丸様の考えたものを作ることで尾張のためになると、啖呵を切った身ですので、全力でやらせていただきますよ」


加藤さん、そんな決意を身の内に秘めていたのですね。

加藤さんの気持ちが変わらないうちに…、とか考えていた自分が小さく感じてしまう。


「おぉ、加藤殿、歯を変えることで、麦にも米にも使える千歯扱きをつくってくれるのですか、ありがたいことです」


そういって、仁左衛門さんが、加藤さんに大袈裟に頭を下げると、村の人たちも、後ろでありがたい、ありがたいと感謝の言葉を各々、口にしまています。


その様子をみて、まんざらでもない様子の加藤さん。

自分が作ったものでみんなの喜ぶ顔が直に見えるっていいよね。


あれ?そういえば、文荷斎さんと加藤さんは一緒に千歯扱きの実演を手伝ってくれたけど、いつの間にか、福島さん、柴田の親父殿、玄久さんがいないですよ。


これは、あれですね。

焼酎を作りに行ったに違いない。だって、蒸留器は石田村にしかないからね。


千歯扱きを実際に使ってみている村の人々を置いておいて、仁左衛門さんの家の竈のほうに行くとやっぱり、三人が蒸留を開始しています。


「まだ流れ出てこんか、福島殿」


「柴田様、今しがた火にかけたところですから、まだまだですぞ」


やっぱり焼酎造りはじめてましたよ、この三人。

そして、千歯扱きのところから自分が離れたのに気付いて、ついてきた仁左衛門さん。

仁左衛門さんが、竃のところで、勝手に焼酎を蒸留し始めた柴田の親父殿たちを見つけて、ため息が聞こえました。


「柴田様、焼酎をご所望ですか?」


「お、おぅ、仁左衛門。ここで焼酎ができると聞いてな、福島殿が作り方がわかるとのことで、作り始めてもらっておるのだ」


「わかりました。ですが、いまから蒸留を始めますと、焼酎が出てくるのしばらく先になりまする。私のうちに少しづつ作ったものがありますので、そちらをどうぞ」


「おお、すまんな、仁左衛門。玄久、福島殿、二人も仁左衛門の好意に甘えるとしよう」


四人で焼酎で酒盛りをはじまってしまうようです。

やれやれ、この幼児のからだでは、焼酎は呑めないから、文荷斎さん、加藤さんのところに戻ろっと。

四人で酒盛りしている途中で、仁左衛門さんが焼酎を村の名産にしたいと言い出しますが、柴田勝家が酒蔵から安く手に入れた酒粕で作った焼酎のことが知れると、酒蔵や酒造りの座ともめる原因になるから止めとけって諭す話になるんですが、坊丸は酒盛りに参加しないので、知りません。

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