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100話 投扇興、献上させていただきます

ども、坊丸です。

信長伯父さんに、スダチ入り柳蔭を献上しましたが、井上殿に功績を譲ったのをとがめられました。

まぁ、そんなに怒ってるわけでもなさそうなので、オッケーぽいですが。

さて、今度は帰蝶様や奇妙丸様のところに行きますか。

中村文荷斎さんとの約束だしね。しかし、焼酎を信長伯父さんに献上する流れの間は、中村文荷斎さん、完全に空気になっていたな。


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信長伯父さんに、帰蝶様から依頼された品を献上するために奥に向かうことを告げ、了解いただき、広間を後にしました。


柴田の親父殿、中村文荷斎さんと三名で奥向きに参上しました。


奥向きの広間に通され、待っていると、帰蝶様と奇妙丸様、吉乃殿、お犬の方様、お市の方様が女中さんに先導されて広間に入ってきました。


「柴田殿、坊丸殿、本日はご苦労様です。それと、そちらに控えるのは…」


「はいお方様、こちらのものは、飯森城の城番で、中村文荷斎殿、と申します。坊丸の農業の改革の補助もしております」


「ほう、そうでしたか」


「は、帰蝶様におかれましては、お初にお目にかかります。飯森城城番を務めております、中村文荷斎と申します。坊丸様の農業改革の補助ということで、坊丸様のお手伝いを柴田様からご依頼を受けております。本日は、その縁にて、こちらにまかり越した次第にございます。以後、皆様にはお見知りおきのほどお願い申し上げます」


「こちらの、文荷斎殿には、この坊丸の至らぬところを助けていただいております。

伯父上からのご下命にて、農業の改革、早合の試作といろいろやっておりますが、それがしは見た目が童でございますから、貫目が足りないことのほうが多うございますれば、文荷斎殿にはお世話になっております。

此度も、投扇興の改良に骨を折ってくれた由にて、帰蝶様達への献上の際にご同道いただくようお願い申し上げました」


「そうでしたか。私からも感謝申し上げます。して、改良された投扇興は、どのようなものですか?」


「はっ、こちらにございます」


文荷斎さんが、改良型投扇興を風呂敷から出すと、女中さんがすかさず帰蝶様の前に運んでいきました。


「坊丸、あれは何だ?」

柴田の親父殿が小声で質問してきます。

あれ?柴田の親父殿に見せたり、遊んでもらったりしてなかったっけ?

石田村で試しにやった後、みんなで改良したけど、屋敷ではやってないかも?


「あれは、先日、奇妙丸様とご一緒する流れになったときに考えた的当て遊びのようなものです。左手を火傷いたしましたので、片手でもできる遊びを、と考えたところ、帰蝶様やお市様のほうが気に入られたようで、改良を頼まれました」


「それでか。殿に早合の試作の披露と焼酎の献上にあわせて、帰蝶様に坊丸からの献上品があると伝えたら、何を献上すると言ってないのに、速やかに参上するように言われたので、不思議じゃった」


柴田の親父殿と小声でやり取りしているうちに、帰蝶様が改良型投扇興の蓋を開けます。

中には、見返り美人図っぽい絵が描かれた的と絵奉書を張り付けた銀杏の葉っぱが他の的、一本の扇子が入ってます。扇子も女性が好みそうな四季の花々を加藤さんにセンス良く書いてもらったものです。

どうです、この女子受け狙い。坊丸だって、これくらいできるんです。エッヘン。


「おや、文箱の蓋に四季の花が描かれた山道らしいものがあったので、何事かと思ったら、的が振り返った女性になっているのですね。こちらの絵奉書を張った的も可愛らしいものですね」


よし、帰蝶様に褒められた。的にはる絵奉書を選んだ文荷斎さんもほっとしている様子。

絵奉書なんてしらなかったから、完全に文荷斎さんチョイスに任せたからね。

そして、取り出した二つの的と扇子をみながら四人でワイワイやってます。

あ、奇妙丸様が、完全に置いてきぼりになっているから、死んだ魚の目で畳のヘリを指でなぞって時間をつぶしてます。うん、なんか不憫やね、御曹司で嫡男様なのに。

女性陣が可愛いに夢中になると、こんなもんなんですかね、戦国時代でも。


で、すべてを取り出すと、箱の底にガシャドクロかと思われるような大きな骸骨と山姥が描かれています。そして、蓋の裏には墓場っぽい風景。

それをのぞきこんでしまった、奇妙丸様。


「ひゃ!」


うん、幼子が、髑髏や山姥の、墓場の絵を見たら驚くよね。ごめん、奇妙丸様。


この作品は100話まで到達することができました。

継続していくモチベーションが維持できたのも、読者の皆さんがいたからです。

素直に感謝を!


ただ、100話くらいで桶狭間の戦いにする予定だったので、予定は大幅に遅れていますが。

はやく、浅井・朝倉戦で津田信澄として活躍させたいのですが…

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