ドッペルゲンガー 一
もし、こんな事が実際におきたら、どうするのが正しいんだろう。君なら、分かる・・・。
暗い、暗い地下で、光が一瞬、満ちあふれた。そして光が消え去った後に、一人の人間が裸体で起きあがった。
「吾は、この国を治める皇帝。 なり。」
そして、尿を漏らした。
「これは何なのだ。ほう。ここにぼろ切れがある。拭かせてもらうぞ。博士よ。」
それは先ほどの光で亡骸になった博士に対して発せられた言葉だった。
「この機械で吾は生まれたのだな。ならば、そうだ。これをつかって、地上と地下を入れ替えるというのもまた、一興だな。ふふふ。それではこのぼたんを・・・・。」
そして、ボタンを押した。
それから三週間後
真紅の闇で包まれている弐気夜街道。誰もいない夜の町で、何人かの人が、マンホールからぞろぞろとわき出てきた。彼らは口をそろえてこう、つぶやいた。
「我らがクローン王国、レヴェリアに栄えあれ。我らがクローン王国、レヴェリアに栄えあれ。我らがクローン王国、レヴェリアに栄えあれ。」
そして、一つの民家に入っていった。
「きゃあぁぁぁぁぁあ。」
女性の声が響き渡る。けれども誰一人として出てこない。黒猫が、塀から塀へとわたる、シュタタン、シュタタンという音だけが弐気夜街道に響く。ただこれだけ。
その黒猫には、鈴が付いていたので、鈴の音も、同時に鳴り響いていた。
偶然と言えば偶然。必然と言えば必然に、塾帰りの少年、松岡鷹斗はみてしまった。
親友の、須貝のいえに謎の男・・・・それも自分の学校の教師軍が、一家全員を誘拐しているところだった。そして、みている最中に、須貝夫妻の母が、鷹斗に気が付いた。眼で訴えていた。
「こっちにきてはいけない。貴方だけでも逃げて。」
婦人はそう、訴えていた。
鷹斗は足が振るえた。動かない。
「反逆人発見。データ不明。直ちに捕まえ、レヴェリアに連行いたします。」
クローンの一人は向きを変えて鷹斗の方に歩み寄ってきた。電撃棒のスイッチを入れて、鷹斗に当てようとして、空振りした。鷹斗の股間にも少しどころかかなり当たっていて、尿を漏らし、ズボンがっぐっしょり重くなっているということに家の近くまできてやっと気が付いた。
何とか家に帰ると待っていたのはやっぱり先ほどの黒服の大人達・・・・今度は子供までいる。鷹斗はまた、ぐっしょりと濡れるズボンを着替えるでもなく、走って逃げた。その間も、町は本物はいなかった。
ぐっしょりっと濡れたズボンが、夜風に当たって冷たかった。
鶏冠公園で、電撃に当たった股間をみてみた。
「ううぇ・・・・ちょっと焦げた色じゃねーかよ・・・どーしよおう。」
「ホンとじゃ、焦げた色じゃのう。みてると気分が悪くなる色じゃ。肝鋳とかいうやつじゃな。」
いつの間にか、ズボンを引っ張られ、じっくりとみられていた。冷たくないのだろうか。それよりも、何勝手に人のものみてぶつくさ言ってるんだろう・・・・。
「って、おじいさん、何勝手にみてるんですか。」
おじいさんはこっちを向いてこういった。
「かわいいから・・・・。」
ライトで僕等が照らされた。
「居た。反逆人と、反逆罪人。」
やばいです。ピンチです。助けて・・・・。
「おじいさん、こんな時なんだから握るのやめて下さいい。」
「にぎるのかえ。」
ぎゅ、ぎゅ、ぎゅ・・・
うう・・・・僕、おじいさんに握られた。赤の他人の・・・。
この後、君ならどうするの。