異世界トリップですかーまじかー、あ、私パスで
「どうか・・・神よ・・・わが国に救世の手を、勇者を!!」
一人のローブの老人がそう叫ぶとともに足元にある魔方陣が光を出す。
暗い部屋の中ではその光は強く、王と呼ばれてる男の笑みをはっきりとうつした。
―――
「おお、勇者だ、勇者だ。召喚は成功だ!」
「え、ちょ、ま・・・え?」
なんてこったい、召喚されたようです。まじか、実在すんのか。
二次元だけの特権じゃなかったのか、いやそこはどうでもいい
いやまぁホントのホントに勇者として召喚されたなら心躍る所が無きにしも非ずだよ?
「ここ、は?」
「ええっと、貴方たちは・・・?」
私の隣にカップルなのかなー?同じ制服を着た女の子が男にピッタリくっ付いてる。
ううむ、いかにもって感じ・・・テンプレだけど。自分は「巻き込まれた」系かなー?
「ええ・・・わしゃ家でネットサーフィンしてただけなんですけども・・・?」
パーカーに長ズボン、その上にどてらというごろごろしてたな、と分かる服装の私は場違いですな。
出来るならこたつとパソコンも一緒に巻き込まれて欲しかったなぁ・・・つい、わしとか一人称使っちゃたわ・・・わしじゃなく、私
「帰れ!」
「こっちの台詞じゃわ!帰せ!」
王様の間とやらに三人で連れられ「魔王が云々」とか言われこれまたテンプレで元の世界に還る方法も
魔法に長けた魔王しか出来ないだろうとか・・・
いや、連れて来たんなら戻せよ?ていうか絶対還れる訳でも無いの?ってつっこんだら沸点低そうな王が怒る怒る
いやーねーわしは見た目こそ・・・まぁ中学生っぽく見えるけどけっこう年喰ってるんですぜ?
見た目だけでも弱弱しい女の子の言う事くらいちゃんと怒らず聞いてあげようよ。
あれか、図星なのか?さっきまでの存亡が危うい国を語った時の悲壮感消えたなー
隣のリア充も吃驚してるよー?いいのかなー?
あ、ちなみにホントに私巻き込まれただけみたいです。勇者の印だとか聖魔法なんかが私の能力に無かったから。リア充共には両方あった。
うん、帰りたい。おうちが恋しい。
「っはーん、もうういいし、第一国がヤバイってんのに王様はキッラッキラゴテゴテの服装に家臣達も悲しい表情どころか、卑しい顔じゃし、
ぶっちゃけると国とかそんなヤバく無いだろ!勇者と書いて人形と読むんだろ!」
分かりやすいように動揺してるわ・・・うっわー・・・まじかー
「き、君!王様の話聞いてたのかい?魔王のせいでこの世界が」
「魔王だけで滅ぶ世界なら滅べば良いと思う、わざわざ誘拐してまで勇者とやらを呼んで異世界の人間頼るか?自分らで何とかしようと思わなかったの?ねえ、貴方は思わなかったの?お兄さん。」
「う、それは・・・」
なんだか正義感の塊のような男が言うから自分の意見の塊をぶつけてみた。こうかはばつぐんだ。
「た、拓斗に酷い事言わないで!」
「誰だよ拓斗・・・お姉さんは思わなかったの?何で自分らなんだって」
「だって、異世界の勇者じゃないと魔王は・・・」
「や、だからっていきなり誘拐だよ?私に至っては勇者ですら無いよ?・・・おうちかえりたい」
「っ」
ふふん、こういうのって同情を誘うと楽だね、最後のとこだけ俯いて涙声(笑)で言ってやったら勘違いしてくれた。良かったー
流石勇者として選ばれるだけあって善い人だねー
「と、言う訳で帰るわ。王様」
「ふん、帰れるものなら」
厄介払いがしたいんだろうね、さっさと帰れるなら帰れと無言で訴えてくるよ。
まぁ、巻き込まれたと言っても無能じゃないみたい。
ところで《創造》って凄そうな名前やね、このスキル。
私の視線の先には半透明なウィンドウ、自分のステータスの『スキル』
まず・・・元の世界・・・家まで帰れる代物。時空間飛び越えれて・・・
魔法でも良いけど十人ちょっとと魔方陣で私達三人呼んだんだから魔力を結構消費する、のかな。多分。
でもって《創造》できるくらい私が分かるモノか・・・
んん、あれちょっと待てよ?
「あ、あれならいける」
小さく呟いた言葉には強い確信をもった。
まずはー・・・パントマイム(もどき)で自分が丁度入る長方形をなぞりますーっと。
「なにしてるんだ?」
「リア充黙れ」
「えっ」
何か勇者のリア充が話しかけたが黙れ、これでも結構緊張してるんだぞ。
後はここにアレがあると思って・・・《創造》
淡い水色の光が長方形に光った。おお、そんなにまぶしくない。
「よっしゃー!でけたー!」
「え、ちょ」
「こ、これは・・・」
「・・・扉、か?」
上から私、リア充(男)、リア充(女)、王様となってます。
そう、王様の言うとおりコレは扉
ピンク色で条件を軽々とクリアできそうな素敵な秘密どうgおっと危ない、ドアですドア。
「そう!どーこーでー「いや、何でコレなんだよ!」・・・遮るなよーちぇー」
ていうかコレにしたのは思いつくのがコレだった、てダケなんですけどねえ。
「え、コレが一番創造しやすそうじゃん?」
「いや、そうかもしれないけど・・・」
「あ、私はコレで帰るけどリア充のお二人さんは勇者として頑張ってくの?」
「あやつらて・・・副静音聞こえてるわよ」
「操られるんじゃなくて、自分の意思で魔王を倒すんだよ」
ほへー、すごいなー自分の意思でやるんだー・・・まぁ流石としか言えないけど。
んーでもホントに良いのかなー?私はお勧めしないけど・・・
「ねぇ、ホントにいいの?異世界には・・・」
一旦止めるという思わせぶりな態度に目の前の二人が興味を示した。
王様はさっさと消えろよとか無言で訴えてくる。ひどいな。
仕方ないから続きを言ったら思ったとおりに衝撃の受けた表情をした。
彼女さんの方に至ってはあ、そっかとか呟いてる。
次の瞬間我関せずとしていた王様が困惑していた。
そうだろうねぇ、乗り気の筈の二人が帰る事を決意してるもんねぇ。
「ま、私を巻き込んだのが運のツキってことでー、さいならー」
ドアノブを持ったまま境界を跨ごうとしている私の後ろにはリア充二人。
王様が慌てて二人を引きとめろとか言ってるけど私には関係無いもんねー。
私は私の意志で帰るだけだし。二人は勝手にくっついてきただけだもんねー。
―――
「こ、ここは・・・?」
「おお、勇者よ・・・」
意識を覚醒させたのはとある中学生三年生。手には願書を持ってます。
まさかの願書提出中に召喚です。
「え、あれ。高校は・・・?」
「いきなり召喚してしまってすまなんだ。そなたは勇者なのだ。」
「え、は・・・?」
どこか必死な様子の王様に更に困惑していく中学生。可哀想。
「ともかく、アレが出てくる前にそなたに魔王を!」
「いや、ちょっと待ってください!」
「待てぬ!早くせんとアイツが「呼ばれて出てきて何とやら~」・・・出た」
「出た、とはヒドイですよ、王様。」
全くわしは幽霊か何かですかねー。
「どもどもー・・・ハァ召喚まだやってんですか・・・何回目だよ、これ」
やれやれと首を軽く振ってるのはかつて巻き込まれた異世界人・・・を両手で持てるくらいの人形の大きさに縮めた存在。
本人は妖精さん的な存在だと自称してる。実際は電話みたいなものだが。
元の世界の本体が諦め悪い召喚を何とかするために自分とコッチの世界を妖精さんを通して干渉しているだけで。
「とりあえずーこの国は魔王によって滅びそうでなくふざけた政治をする王に対する怒りをもった国民によって滅びそうなだけだから
わざわざ勇者やらなくえもいいよー少年」
イライラとしてる王様を無視しながら帰るのを促す妖精さん。
「えっ帰れるんですか?」
「そうそう、このドアを使えばね!」
ばーんと何処からか聞こえてきた効果音と共に例のドアが出てきました。
「うわ、どっからどう見てもアレだ・・・」
ぽつりと少年が呟きます。
異世界の住人である王様はこの勇者態度が毎回されるけど分かりません仕方ない。
「でも・・・困ってるんですよね、この王様」
「うわ、めっちゃええこやんけ」
ぱあと顔と瞳が輝く王様。ええい、おっさんの希望なんていらんわ。
「魔王よりかこの王様を倒した方が平和に・・・といつもの言葉言うの今回忘れてた」
いつもの言葉という言葉に王様が青ざめる。忙しいなこの王様。
「はいはーいっと・・・少年異世界で勇者として生きていくのも良いよ?お勧めしないけど止めもしないよ。
でもさ異世界には・・・
一つ!美味しいご飯が無い!」
ぴく、と少年の目が変わる。いやあ、大抵の人はここで考えが変わるんだよね、美味しいご飯食べたいもんね。
「一つ!風呂が今までのように入れない!!」
少年は完全に私の声を逃さないと耳を澄ます。王の聞くな悪魔の声を!とかいう言葉を無視して。
ちなみにここで女の人は帰ると決意します。
「一つ!ネットが存在しない!」
ちなみにわしはコレで帰るのを決意を・・・あ、またわしになってる。
「最後の一つ!人間関係リセット!あ、んでもって君は高校受験するんでしょ、いいの?今までのコト
異世界にいたら全部やり直しだよー?」
少年はフッと笑って例のドアをくぐる。
だよねー、意外と不便よね、異世界。
「王様ー今度はさー、召喚魔法使う魔法使いの怒りを買って益々滅びやすくなるよ?この国」
お前のせいだ!と言う王様の叫びは虚しく王城に響くだけだった。
妖精さん?ああ中の人がニコニコする動画見るからって通信切った瞬間存在が消えたよ。
「異世界トリップしてもさー・・・」
というと
「何で異世界行く心配してるの」
と友人に言われ出来たお話です()