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閑話その4 ラーニャ、大忙し

「ええと、こっちの結界は展開したまま、神魂回収装置はちゃんと稼働してるし、あとは周囲の結界に以上はない、バックドアもついてないし……」


「にゃーん」


「また、メール……って場面転換!? 今までの設定をやり直し……!

 ああ、もう。そしたら、やりやすいように広くて、フラットな場所にすれば楽になるわね。

 ステージ構成して、結界を選定して、同じように装置を紐付けして……」


 いくつものチェック項目をひとつひとつ調べながら確実に作業を行っていく。

 これをしくじると、結構たくさんの大神級の方々がカランでいるらしい……

 ど、どうして私が、こんなことに成ってるのよー……


「よ、よし! 転移っと! ふー、これで一息つける。

 さっき見つけたのよねー、ベルガモット社の紅茶があるのよねー。

 それにゴダイバ製のお菓子も……」


 指示をこなして、ちょっと手が空いたのでお茶を入れようとする。


「にゃーん」


「はいはーい、ちょっと待って下さいねーお茶とお菓子を取ったら見ますよ~」


「にゃーん」


「はいはーい、今お湯を注いでー」


「にゃーん」「にゃーん」「にゃーん」


「もう! 待っててば! ……な、なによ雰囲気がないからやり直しって!!

 魔王との対決っぽいステージ? 雰囲気出して?」


 ムキーーー!! 


「……追伸。今日は あ の ヘスティアのプリンが食べ放題……

 直ちに作業にかかります!!」


 こうなったらメッチャ凝ったステージにしてあげるんだから!

 ほーら、こんなサイズの巨像なかなかないわよー!

 赤絨毯も無駄に最高級品使ってやるんだ!

 あー、またこのチェックやるのかー、でもプリン、プリンのためよ!!」


 猛烈な勢いでデータを作成してチェックをこなす。

 どれもこれも、レディオウス、堕天して魔神へとなったアニモルト作成の神々の一人を施設送りにするための準備だ。

 アラセス様の兄弟子、ここから閲覧できるデータだけでも胸糞悪い人物だ……

 特に自分が関わった世界の子たちに対する対応は本当に酷い。

 あと、実力もないのに、周囲にすごい人がいたから自分の力と勘違いしているのか、非常に痛い人物だ。


「友達にはなりたくないなぁ……まぁ、施設送りってことはほぼ別人になって返ってくるだろうけど」


 プリンという明確な餌を吊るされて私の指が疾走る。

 あっという間にデータを組み上げて、すべてのチェック項目をクリア。


「よっし! 転移っと! さぁさぁさっさと倒しちゃって祝賀会と参りましょうねー!

 頑張ってねー大五郎さんにユキミちゃん!」


 この大規模な作戦にはアニモルトを作り上げた数々の古神、大神さらにはアラセス様の師匠に当たる最上神様も噛んでいるらしい。

 自分の弟子の不始末に頭を悩ませていたらしい。

 妙に敏感ですこしでも強い神が絡むと見事に逃げおおせるその一点だけは文字通り神業らしい。

 ようやく、世界全体を籠としておびき寄せる、なんて大規模な作戦で舞台に引き釣りだすことに成功した。

 戦闘を見ていると、たしかに、逃げる以外の技量はからっきし。

 いくら大五郎さんやユキミちゃんが強いと言っても神が、世界の住人に圧倒されるなんて普通あり得ない。


「だって、あたしでさえもう少しまともに渡り合えると思う……」


 ただ、大五郎さんのユニークスキルは本当にレディオウスさんの天敵と言っていい。

 『分け与える慈愛の魔力』。『怠惰に傲慢に喰らう物』を完全に無効化するその能力はこの日の闘いのためにあるようなスキルだ。

 実際天才的な逃亡を阻止している結界もこっそり大五郎さんから魔力を提供してもらっている。

 この世界のべグラースさんと私の世界の大五郎さん。

 2つの魔法回路を合わせる。

 しかも、べグラースさんをレディウオウスさんに操らせ尖兵とさせそのスキルを解析する。

 こんな針の穴を通すような作戦のために数百億年準備してきたっていうんだから、アラセス様たちの情熱もすごい……


「にゃーん」


「んーっと、どうだ? って、ああ、もう戦闘ほぼ終わってるんですね……

 えーっと、まだ、捉えられてもいないし、逃げてもいなさそうですね。

 まだの模様です、油断しないように。っと」


 しかし、大五郎さんの攻撃はえげつないなぁ……

 神経攻撃とか私なら泣いちゃうなぁ……

 

「えっ、ちょっと、それだと太陽ができちゃう……

 まずいまずいいくらなんでも皆消し飛んじゃうって……」


 私は大急ぎでフィールドへと介入してビックバンだけは起こさないように調整していく。

 リアルタイムで変化する状況に対応して片っ端から当たっていく、この時が一番たいへんでした……


「ピーーーーーー」


 機械音が鳴る。神魂回収に成功した音だ!


「すぐに解析して、……うん、うん、総量も間違いない、個体識別番号も問題なし。

 よし、間違いなく全て回収できました!っと」


「にゃーん」


「お疲れ様、今日は好きなだけ騒いでくれ……よっしゃー!!」


 人目もはばからずガッツポースですよ!

 これで、これでこんばんはヘスティア様の料理と、あのプリンの食べ放題ゲットです!!


「にゃーん」


「ん? なんだろ? えーっと、事後処理終わったら、ヘスティアのお店においで……

 は~~い。うふふふ、楽しみ~。……事後処理?」


 ブー。入室の音だ。誰かがこの部屋に入って来た事を示している。

 私は立ち上がりその人物を目にする。


 神格第4柱、究極神 ゼリウス様がそこに立っていた。





 事後処理という名の膨大な資料のまとめや、各種書類の処理。

 今回の一件の顛末をまとめて、提出する。

 私のような末端の神がお見かけすることもないような高位な神々が次々と訪れて私に仕事を指示していきました。

 お声を聞くだけで吹き飛ぶかと思いました。

 全てが終わって、パーティ会場に移動だーと、その神々と一緒に移動している時の周囲の怪異を見るような目。嫉妬、羨望、いろんな感情の篭った視線……

 怖い……怖いです……どうしてこうなったの……?


 乗ったこともないような高級な神車に同乗させていただいて、ヘスティアの店へと到着する。

 まさか、パーティって……こんな凄いメンバーと一緒……?


 味なんてわかるはずもない。

 終わった……私は気を失いそうになってしまった。


「ラーニャ様!」「ラーニャ様ニャ!」


 聞き覚えのある声が聴こえる。

 私を心底安心させてくれる声が……

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