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閑話その3 ラーニャの憂鬱

 あの日、私のミスで多大なる迷惑をかけてしまった大五郎さんとアラセス様と一緒に作ったユキミちゃんをロストしてから、毎日、二人のいない、平和な世界の記録をつけて大神様へと報告する業務が続いている。

 アラセス様とは相変わらず連絡が取れない。

 この異常事態なのに、恐ろしいほど天界は通常営業だ。


「ラーニャ様本日の報告です」


 部下の天使たちがいつもの報告書を持ってくる。

 異常なし。

 大五郎、ユキミへのアクセスは失敗。


 毎日同じ文章だ。


「監視対象ロストしていて、異常なしもないわよね……」


 今だにあの日の異常の原因がわからない。

 それどころが異常があったにも関わらず、異常なほど何の検査も捜査もされている様子がない。

 このアニモルトっていう世界も不思議な場所だ。

 複数の神が作った世界で3000億年以上という非常に長く続く世界の一つ。

 初期の神にはアラセス様も名を連ねており、とても穏やかな世界が続いているケースだ。

 ここ最近と言っても数百億年くらい前から魔物が現れるようになって、何度かその調査の形跡があるが、どうも毎回結論が出ていないのに打ち切りになっている。

 そして、しばらくある程度の平穏が訪れて、問題が起きる、調査して、結論が出ないで中止。

 この繰り返しが起きている。

 詳しいことを調べようとしても、かなり上位の権限で内容が秘匿されている。

 

「こんなの調べようがないんだよなー……」


 最初の頃はいろんなツテを使って探ろうとも思ったんだけど、これ、アラセス様ぐらいの権限がないと入り口にも立てない……

 肝心のアラセス様は消息不明だし……

 特に新しいこともわからないけど、アニモルトの世界史に目を通す。


「そう言えば他の神様って誰なんだろ?」

 

 もしそっちからアプローチできればアラセス様のこととかアニモルトについて話が聞けるかも……

 そう考えて調べ始めると、まぁ見事なほどに今の自分がお目にかかれるような方々ではなかった……


「この方……名前しらないなぁ……」


 ポチポチと検索をかけてみる。


「ビーーーー」


 名前の検索だけで警告が表示される。

 閲覧に一定のランクが必要な情報なようだ……

 ただ、そんなに強い警告ではないので自分でも閲覧できる。


「神ナンバーを打ち込んで、Okっと……」


 その神の情報が表示されるが、何よりも目を引くのが巨大な堕天の文字だ。


「えっ……闇落ちした人が創設メンバーにいるなんて……」


 堕天、要は天からの失墜。神から魔神へ、天使から堕天使への転落だ。

 神にふさわしくない言動によってより上位の存在に貶されると、聞いている。

 実際例はよほど有名な話以外知らない。

 この元神の人もどういう行動によって堕天したかは閲覧できなかった。

 どこの誰かという情報もかなり厳重にプロテクトされている。

 そして、この魔神の変わっているところは、地国じごくへも行っていない。

 所在不明。

 まぁ、そういう魔神も多いけど。

 

 天国や地国も純粋な例えば自分がいた地球で言う善だ悪だと言うくくりでなっているわけじゃない。

 天国という集団で、好ましくない行動を取り続けると他所でやってくれと貶される。

 地国は天国よりもルール的なものがなく好き放題出来るってだけで、別にガツガツ戦争してるとか対立しているわけじゃない。

 まぁもちろん天国側のやることを地国側が邪魔している場合などは対立することもある。

 世界を作るのにも、天国側のほうが基本自由度が広かったりする。

 ただ、自由だからこそある程度のルールを決めているのだ。

 そのルールを破りたいなら、少し不自由な方で神として生きてください。

 これが天国と地国の関わり方だ。


「ロールプレイとして対立してる神同士を受け持つこともあるからね……」


 もちろん中には本物の外道もいるから基本天国の人間は積極的に地国とは絡まないことが多い。

 こういう、天国から落ちて、地国へも行かない人物は要注意だったりする。


「……レディオウス……」


 目立った伸展もなく、勤務時間も終わっているので今日は家に帰ろう。

 そう思い、端末の電源に手を伸ばそうとした時。


 にゃーん


 と、可愛らしい。音がする。

 ん? なんだっけこの音?


「アラセス様からのメッセージだ!!」


 急いで吹き出しをクリックする。


【しばらくすまなかった。

 これから忙しくなるぞ。

 気がついたら中央端末Ωー8735A207へ来てくれ。

 Passは『三毛猫のオスは珍しい』だ。

 次元停止して待ってるからなるべくなら急いで欲しいな~♪】


「ちゅ、中央端末のΩ!? わ、私なんかが入っていいの!?

 て、次元停止!? アニモルトに異常は無いけど……いや、でも急がないと……」


 私は急いで指定された場所へ移動する。

 中央端末はデーターベースの大本にアクセスできる非常に高次な場所だ。

 一応入るぐらいは出来るけど、私なんか申請してもα区画の仕様でも数百年は待たされる。

 それがΩ区画……巨大世界規模の作成なんかに上位神たちが利用するような端末だ……


「こ、ここだよね……」


 入り口のコンソールに手を乗せると、本当に扉が開く。

 

「うっわー、すごい……こうなってるんだ……」


 ずらりと並ぶ座ったこともないような立派な椅子。

 カフェコーナーに軽食も自由に注文できる様になっている。

 これ、全部タダという伝説を聞いたことがある。


「こ、ここだよね。えっとパスは『三毛猫のオスは珍しい』っと」


 目の前にどんどんウインドウが展開されていく。

 

「こ、これは……アニモルト……!? ち、違う! って大五郎さんにユキミちゃん!」


「おー、久しぶりだねラーニャ。

 疲れるから端的に説明するけど、今から俺の長年の憂いを取り除く手伝いをしてもらうから、指示通りによろしくね」


「え、あっアラセス様! いままでどこに!?」


「説明はあとあと、最初の仕事だ。

 今俺が触れている対象に下にあるファイル⊿とθをぶち込んじゃってー。

 あとはこっちでやってくから順次指示する!

 よろしくねー! 終わったらヘスティア貸し切りでパーティだから頑張ってねー」


「……なんですと……?」


 私の中のスイッチが入る。

 ファイルを素早く対象へと放り込む。

 ところで、画面に映っっているここはどこ? なにがどういう状態なの?



 こうして私の最後の戦いもいつの間にか始まったのだった。

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