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61話 転移魔法

「さて、気を取り直して転移するぞ」


 ようやく立ち直ったキンドゥが指示を出す。

 村の広場で全員集合している。

 商人さんはもう帝国内での引き継ぎは終えて、今後の森の内部との密取引は引き継ぎ済みだそうだ。

 一緒にジーリスへと戻ってそのまま王国内でキンドゥの元で働くそうだ。

 もともとキンドゥの工作員の一人だそうだ。


「おねぇ様の肌って透き通ってて綺麗ですね……」


「フィーちゃんの肌は指が吸い付いちゃいそう……」


 何やら変な空気を放っている二人がいるが気にしない。

 変に和解して怖い。

 マサムネムラマサブラザースが真っ赤になっていてかわいい。


「ダイゴロー、まずはお前が手を置け。お前の魔力は規格外だからな」


 展開された魔道具の魔石部分に手を添える。

 魔力を吸い取られる感覚がする。そのままなんとなく魔道具に強化をかけてみる。


「チーン」


「は!?」


「え?」


「お前なにした?」


「いやちょっと魔道具に強化を……」


「ちょっとって……10人分の転移の魔力を一人で……?」


 マジさんの言葉遣いが綺麗になるほどの異常事態らしい。


「前からすごかったが、なんか別次元になってないか?」


「遭難中はずーっと自分に強化したりしてたからだいぶ魔力操作は鍛えられたよ」


「はー、ダイゴローはほんとぶっ壊れになってるニャ!」


「それが素敵なんですよ、「ね~♪」」


 仲がいいことで。


「まぁ、何にせよこれで飛べる。全員ちゃんと魔法陣内にいるな?」


 それからキンドゥは丁寧に全員の状態を確認する。


「結構危険だったりするのかキンドゥ?」


「転移事故はやばいぞ。普通に全滅だ」


「だ、大丈夫だよな?」


「ちゃんと守るべきことを守れば大丈夫だ。それじゃぁ行くぞ!」


「ちょ、直前で聞かなければよかった……」


「大丈夫ニャ!」


「おねぇ様フィー怖い……」


「よしよし、おねぇちゃんが着いてるから大丈夫だよ~」


 マジさんが言うとおり、なんかこの二人がピッタリと身を寄せている姿は、エロイ!

 スラッとしたきれいなユキミと小さめでグラマラスなフィー……

 抱き合ってる肉感などが非常に……


「おい! ダイゴロー変な魔力をかけるな安定しないだろ!」


「ああ、ごめんごめん」


 素数を唱える。移動中の安定のために魔力供給は転移中も継続する。

 一応十分な魔力は入っているけど、魔力が多いほど安定するらしい。


「よし、飛ぶぞ。ちゃんと捕まってろ!」


 ユキミとフィーが俺に抱きついてくる。

 素数だ! 素数に集中するんだ!

 周囲がドンドン白けていく、そして真っ白になった瞬間ふわっと浮遊感を感じる。

 ほんの一瞬の浮遊感から落下しているような感覚、そしてすぐに地に足がつく。


「成功だ」


 バチバチと周囲に魔力の波動が残っているが、驚くほどあっさりと転移は終了する。


「案外あっさりなんだな……」


 俺は緊張から解き放たれて安心する。

 周囲を見るとどこかの小屋の中のようだ。


「本当なら宮廷魔術師が10人位かけて2人飛ばすとかそんなもんだがな、ユキミ嬢とお前がいるからと思ったが、まさか一人でほぼ全量まかなうとはな……

 魔力切れは平気か? 気分が悪かったら言えよ?」


 キンドゥの言葉で確かめるが、魔力は体内を綺麗に巡っている。

 消費した魔力はすでに励起させて回復済みだ。


「大丈夫、もう回復した」


「はぁ!?」


 からの


「はぁ!?」


 二回もはぁ!? って言われてしまった。

 

「マジ! ちょっとマジ! こいつの魔力量見てくれない?」


「えー、あれ疲れるんだよなー……」


「頼む、おかしいぞこいつ絶対!」


「わーったよ。まぁ、ここは空気が良いから精霊の機嫌もいいだろ」


 俺はマジさんに言われるがままに椅子に座って目を閉じる。

 探られる感覚がしても抵抗するなと言われた。


「万物の母なる精霊よ、彼の者が秘めし魔力を我に告げよ、内なる力を世に顕現せよ」


 ああ、なるほど。なんか探られているようなくすぐったい感覚がする。

 抵抗するなと言われているが、笑ってしまいそうになる。

 

「ふひ……」


「気持ちわりー声出すな、もうすぐ終わるから我慢しろ男の子だろ!」


「くすぐったい……」


「はい、もういいぞ、あとは精霊が……紙に……は?」


 目の前に置かれた紙に精霊が言葉を焼き付けて行く、精霊言語は読めないが、浮かび上がっていく文字を見たマジさんが絶句している。


「どうなんだマジ?」


「ありえねぇ……測定不能なんて始めてみた、ユキミでさえ大精霊級なのに、つまり精霊王、精霊神よりも多いってことだぞ!?」


「私の力は奪われたはずだよな?」


 ネズラースが頭上から問いかける。


「間違いなく奪われたね、やっぱりあの遭難中にずっと強化してたせいかな……?」


「まぁ、化物ってのがわかっただけでも……ところで魔法は?」


「ああ、相変わらず体外には放てない。ただ、いろいろと面白いことは出来るようになった」


 それから弓に紐つけて弓を強化したり、人間相手に強化や診察の応用などを説明した。


「ちょっとさ、マジの手を握ってマジが魔法使ってみるとどうなるんだ?」


「そしたら強化してみるね」


 俺はいつも通り強化をマジさんにかける。


「おお!? 凄いなこりゃ……ああ、これは……やっぱりか……おう、ありがとう」


「何かわかった?」


「ああ、ダイゴロー、お前便利な奴だな。

 さっきの状態、俺は魔力を使わずに大抵の魔法を使えるし、しかも威力も凄まじく上がる。

 精霊も喜んでいたぞ、こんなに力あふれるのは久々だーって」


「じゃぁ、ちょっとダイゴローこれ握って俺に強化かけてみろ」


 キンドゥが普通に荷物を縛る縄を俺に渡してくる。

 キンドゥの腰紐に結んである。

 まぁ、こういうのも何度もやっている。

 俺は紐を通じてキンドゥに強化をかける。


「お、おおお! こんな紐でいいのか……ってことは……」


 なにやらキンドゥがブツブツ言い出す。

 いつものあれか、懐かしい。こうなったらもうひとりの世界に入ってしまう。


「どうしたのかな?」


「まー、キンドゥのことだ何か思いついたんだろ。

 気にしても仕方ない。取り敢えず、荷物を運んじまおうぜ、この上が俺たちの宿泊場所だ」


 外に出ると小屋と思った場所は半地下に作られた空間だとわかる。

 結構立派な建物がその上に建てられていた。

 俺が落ちてからすぐにキンドゥは控えている部隊を村に入れてこの拠点を作ったそうだ。

 それこそ私財を投げ売ってかなり無茶をしたらしい。

 魔物や狂い人病などの流行もあって、この村としてもキンドゥを受け入れることにしたそうだ。

 今では村は大きく切り広げられて、周囲を堀で囲まれた立派な街になっている。


「キンドゥちゃんはあの調子だし、今日は解散にしましょう。

 また明日、打ち合わせをして地下神殿攻略に挑みましょ!」


 ルペルさんが年長、いや、年齢は関係ありません。

 仕切ってくれて、解散となる。

 俺も一部屋部屋を与えられる。

 懐かしい、王国で過ごしていた一般的な部屋。それでも最近の俺からしたら超一流のホテルのように感じる。

 ベッドがあって、シーツと布団がある。

 洋服も用意してある。

 俺は手作り感溢れる服から着替えを選ぶ。


 コンコン


 色々と興奮して準備していると部屋をノックされる。


「はいはーい」


 扉を開けるとユキミとフィーがいた。

 フィーはユキミの部屋で過ごすそうだ。


「お、二人してどうしたの?」


「皆でお風呂に行くニャ!!」


「お、いいねー!」


 この軽い気持ちで答えたことで、後の、悲劇(?)へと発展するとはこの時の俺には予想もできなかった……

 

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