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60話 大修羅場

「あの地下に何かあると?」


「いや、確信はない。むしろダイゴローのほうが詳しいだろ?

 そう言えば、あの後何があったか聞いてなかったな。何があったんだ?」


「ああ、そういや言ってなかったな。

 俺も実はあの地下はほとんど見てないんだ。

 下に川みたいな水の流れがあって、それに流されてしまったんだ。

 そのあと巨大な空洞にその水が滝のように流れ込んでいて、なんとかその縦穴の壁に空けられた、たぶんビッグワームか何かが掘った穴に飛び込むことができたんだ。

 たぶん、あのまま縦穴に落ちていたら……死んでたと思う、底も見えなかった……」


「よく落下する滝から横穴へたどり着けたな……」


「いやー、木が一緒に流れてきてくれたから空中に放り出された瞬間にこうバーーーッって走ってえいやっってジャンプしてさぁ、間一髪だったよ……」


「……やっぱダイゴローはおかしいニャ」


「俺もユキミ嬢の感想に一票だ……」


「いやいや、それから大変だったんだよ……足は折れてるし肩は外れてるしアイテムボックスは壊れるし、吐き出されたアイテムをなんとか組み合わせて光も食事もない地下の穴を当てもなく進み続けたんだよ……」


 それから俺はミミズを食べながら生きながらえた話、フィーと出会った話、やっとのことで地上に出てトットと出会って今に至る話をかいつまんで説明した。


「大変だったニャあダイゴロー、それはゴリラから手長猿になってもおかしくないニャ……」


「ほんと、お前は想像を遥かに超えることをしているな……」


「まぁ、話を戻すと。そんなわけで俺はあそこの地下をよく知らない。

 言えることはあの深さの下に何があるのかは想像もできないってことだね」


「あの事故の後周囲は立入禁止にしていたが、その後落盤は報告されていない。

 そして、奇妙なことに、あの周囲に帝国兵の暗部が訪れているという報告がされている」


「暗部?」


「まぁ、皇帝直属の裏仕事をする部隊で実際はどれほどの規模かもわかっていない。

 しかし、今まで王国よりな帝国側からしたらかなり深部まで急に来るようになったのは明らかにおかしい」


 キンドゥはたてがみをぐりぐりとねじりながら話す。

 こうしている時のキンドゥはいろんなことを考えながら話している。


「ダイゴローの落下事故、急に帝国に現れたアリスト、王国の病気、そして暗部の暗躍。

 それら全てが同時期に、そしてあの神殿跡を中心に起きていることは偶然にしては出来すぎている。

 それが、俺があそこを調べると決めた推移だ。わかってもらえたかな?」


 キンドゥの鋭い眼差しは決意の炎で燃えている。

 こういう目をした時のキンドゥは決して引かない。


「わかった。俺もその調査に協力する。

 どっちにしろ、俺はキンドゥの部下だ。リーダーに従う」


「ああ、そのことだけど、今回の狂い人病の拡散、蔓延防止にダイゴローの感染症対策マニュアルが非常に有用に働いてくれたので、君は王より叙勲を受け、国内の健康管理を司る新しい組織のトップとしてキリキリ働いてもらうから。立場的には俺と同等だ、やったな大出世だぞ!」


「え、ちょっと俺のいない間に勝手に……」


「大丈夫、あのバカ息子には俺からしっかりとお前の手柄を説明して、快く作ってくれた!

 利権に取り繕った奴らもついでに排除できてほんと助かった!」


「もう、ほとんどクーデターだったニャ! 前王が円満退位した後にクーデターとか聞いたことないニャ!」


「あのバカ息子がグダグダとツマラン奴らを侵入させる隙を作るのが悪い!」


「そのあとなんだかんだで子供の中で優秀なのを大量に送り込んでおいて何を言ってるニャ!

 異母兄弟に囲まれてまた王様の胃が痛くなるニャ……」


 かわいそうに……


「まぁ、ワシの子どもたちは優秀な奴らが多いからな!」


「事実なのが悔しいニャ……」


「流石キンドゥ様……」


「話を戻そう。それでは、早速地下神殿へと移動しよう」


「そうは言ってもキンドゥ、ここから戻ってってなるとかなり準備が必要だぞ、そもそもこっちから行くのか? それとも一回王国へと戻るのか?」


「ふふーん。そこは平気ニャ!

 これでひとっ飛びニャ!」


 ユキミが取り出したのはなにやら複雑な構造の魔道具だ。

 

「これは空間転移用の魔道具だ。対となるものがジーリス村へ設置してある。

 つまり、すぐにでも地下神殿へ突入することは出来る」


「そ、そんな凄いものがあるんだ……」


「国宝級の代物だぞもちろん。国家の一大事だから使わせてもらっている」


「事後承諾でな、ひゃっはっっは!」


 マジさんの危険発言は聞かなかったことにしよう……


「取り敢えず、大量の魔力を使うから向こうへ戻っても2日くらいは休まないといかん。

 準備ができたら出来る限り早く飛びたい。どうだダイゴロー?」


「……わかりました。ネズラース、森の方の奴らはどう?」


「どうやら諦めて一度帰還したようだ。取り敢えずの危機はないと思うぞ」


「それでは、行きましょう。少しでも早く問題を明らかにしたいです」


「おう! なら準備ができ次第跳ぶぞ」


「ちょっとこの村の人達に事情の説明だけしてきます」


 それから改めてリヒトさんたちに事情を説明する。

 もしかしたら帝国軍が森内部へと侵入してくるかもしれないから気をつけるよう重ねて注意喚起しておく。

 

「ダイゴロー、私も行くからね」


「いや、フィーはダメだ。危険すぎる。この村にいるんだ」


「今まで通り、これでいいじゃん」


 そういうとフィーはイタチの姿へ変身して首に巻き付いてくる。


「あーーーーーー!! なにするんだこの泥棒狐!!

 何勝手にダイゴローに巻き付いてるニャ!!」


「前みたいに守ってねダイゴロー、ちゅっ」


「あーーーー!! ダイゴローもなに鼻の下伸ばしてるニャ!!

 早く解くニャ!!」


「痛い痛いよぉ、助けてダイゴロー……」


「ちょ、ちょっと落ち着こうユキミ。

 フィーも無理だよどんな危ない闘いになるかわからないから、てか、その格好でも話せるのね」


「今までだってたくさん危ない目にはあったけど、いつも守ってくれたよね?」


「いや、まぁそうだけど……」


「ダイゴロー! はっきり言うニャ!! 足手まといだって!!」


「あーら、おばさん。私はダイゴローの役に立つわよー。

 幻術だって使えるし~」


「え、そうなの?」


「そうよ。ダイゴローも覚えているでしょ?

 妙にリアリティのある夢……そしてネズラースさんも気が付かなかったでしょ?

 私が、 ひ と の す が た で ダイゴローを癒やしていたことを……」


「……にゃ”!?」


「え……ま、まさか……」


「驚いた。私の目を誤魔化すほどの幻術が事実なら凄い使い手だぞ!」


「鼠野郎黙ってろ、おい、キツネ、お前今なんつったニャ?」


「ダイゴローはすごかったわよぉ お ば さ ん。

 やっぱり若い身体の方が熱くなるのかしら、ね? ダイゴロー……」


 ふっと耳に息を吹きかけられ、ゾクリと背中が泡立つ。

 それよりも、今、とんでもないことを言われているような……


「あ、あ、も、もしかして、夢じゃないの……?」


「ええ、そうよダイゴロー。思い出してもゾクゾクしちゃう……」


 耳元で囁かれる声が悩ましい。


「ダイゴロー……どういうことニャ!!」


「い、いや待ってくれ! 俺は夢だと思ってたんだ!

 それにゆ、夢ではツキミだったぞ!!」


「ま、まさか、このキツネ……謀ったニャ!?」


「……しーらない。おばさんには答えないわー」


「も、もう限界ニャ! ダイゴローそのキツネをこっちに渡すにゃ……」


「……すまなかった」


 俺はいわゆる土下座の大勢で頭を下げる。


「夢と思ったとは言え、心配してくれるユキミを裏切ったことはどうやら事実なようだ。

 そこに言い訳はできない。

 全ては俺の意志の弱さが原因だ。

 攻めるなら俺を攻めてくれ」


「や、止めるにゃダイゴロー……全部このキツネが悪いニャ、頭を上げてにゃ……」


「いや、俺が悪いんだ。

 すまない、ユキミ……」


「……なんでよ……なんでそのおばさんにそこまでするのよ!!」


「すまないフィー……君にも謝らないといけない。

 知らなかったとは言え、君にも手を出したのは事実だ。

 それでも、俺は君の気持ちには答えられない。

 俺はユキミが好きなんだ……」


 バッと俺からフィーが離れるのが感じる。


「……ばっかじゃないの!! やってないわよ! 夢を見せただけよ!!

 やろうと思ったら手を出さなかったわよダイゴローは!!

 完全に幻術にかかってるのに! 私の術は完璧だったのに……手を……出してくれなかったのよ……」


 背後でフィーが泣いているのがわかる……たぶん、人の姿で……

 それでも俺は慰めることは出来ない。

 そんな資格はない……


「……ごめん……」


「ふええええええええええええん!!」


「……ダイゴロー!!」


「はい!!」


「こんないい子泣かして!」


「ええ!?」


「健気で良い子じゃないの!」


「いや、ちょ、ユキミさん?」


「わかったニャ。私も女ニャ! 2号くらい認める器量ぐらい持ってるニャ!」


「お、ユキミ嬢もやっと儂と……」


「キンドゥは一生黙っとくニャ!! 決めたニャ!! フィーちゃんはウチラの家族ニャ!

 同じダイゴローを愛する者同士仲良くするにゃ!!」


「ユキミ……おねぇ様……?」


「フニャ! も、もう一回、言ってみるニャ!」


「ユキミおねぇ様?」


「フニャーーー! いいにゃ! そうニャ! 私は姉みたいなものとして仲良くするにゃ!

 何ニャ、ゾクゾクしてきたニャ……」


「まぁ確かにロリ巨乳とスラッとした姉か、百合百合してるじゃねーか! な? マサムネ?」


「あれあれ~ムラマサちゃんもどうしたのかなー?」


 マサムネとムラマサは耳まで真っ赤にして下を向いている。

 マジさんとルペルさんにいじられている。

 キンドゥは先程のユキミのツッコミに凹んで部屋の隅で小さくなってゴーザに慰められている。


「……結局、どうなったの?」


「ま、私に言えるのはダイゴローがこれから苦労するって話だな」


 紆余曲折あったが、どうやらユキミとフィーは和解したようだ?

 なんか二人の距離が異様に近い気もするけども、良しとしよう。


 こうして、俺達は神殿近くの村、ジーリスへと出発する準備が出来たのであった。


 めでたしめでたし。なのかなー?

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