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54話 ウーズ村

カルテチックなの、大した情報量ないのでここから省略します。

申し訳ありません。

 トットに呼ばれて招き入れられた家は頼りない柱と薄い板張りの粗末と言っては失礼かもしれないが、まぁ、あまり立派ではない家だった。

 薄暗い部屋の中、段々と目が慣れてくると3人の人間が居ることがわかる。

 一人はトット、そして部屋の奥に座っているのが多分この村のまとめ役、そしてその隣に厳つい男が睨んできている。二人共、人間なようだ。


「リヒト、彼が先程話したダイゴローだ。

 ダイゴローこちらがここ、ウーズ村の長のリヒト、隣がオーバルだ」


「ダイゴローです。よろしくお願いします」


「リヒトだ。帝国に侵入しようという無謀な奴の顔を拝んでやろうと思ったが、なかなかどうしてやりそうじゃないか……なぁ? オーバル」


 リヒトさんは50歳位の初老の男性。白いものが交じる長髪を後ろで束ねている。

 体つきは引き締まっているが、老人のソレではなく鍛えられている。

 目つきは鷹のように鋭く、俺を観察するように光っている。

 オーバルさんは40歳くらいか、短く刈り上げられた髪に猫科動物のような鋭い目つき、鍛え上げられた肉体がはちきれそうだ。昔の自分を見ているようだ。


「そうですね、手長族の優位を利用し鍛え上げられた「人間です」……ん?」


「私は人間族です」


「ば、馬鹿な!? 嘘をつくな!」


 リヒトさんもオーバルさんもお互いの顔を見合わせて何度も俺の顔を見ている。

 そこまで驚くことないだろ!


「いや、リヒト……彼は人間だよ」


「そ、そうなのか……ならばさらに無謀、いや大馬鹿者と言ってもいいな。

 人間が帝国でどういう扱いか聞いているだろう?」


 リヒトが肩をめくると激しいやけどの跡がある。


「それは……」


「奴隷の証、奴らにつけられた物を、上から焼いた後さ……

 帝国では人間は奴隷、さらに奴隷の中でも身分が低い……

 人間の男が皇帝に逆らったからということでな、何の罪もない他の人間も全てあの帝国ではこうだ」


「その傷だと、かなり肩がつっぱりませんか?」


「お、おお。おかげで腕を上げるのもままならんようになってしまった……

 しかし、この傷があることで帝国への……」


「ちょっと失礼」


 俺は傷をよく観察する。そっと触れて診察も開始する。

 熱傷、やけどだよね。しかもこれはⅢ度、肩の広範に渡って上皮が壊死している。

 壊死組織デブリー除去トメントして、皮膚移植なんだけど、魔法が有るから周囲から上皮化させてしまうのが一番早いな。


「あのー、この傷ってわざと残してるならほっておきますが、治しますか?」


「は? この傷が治せるわけ無いだろ!」


「いや、治せますよ? やっていいなら今やりましょうか?」


「リヒト、ダイゴローは素晴らしい医者だぞ、そうだ、見せてなかったな。

 ほら!」


 トットが背中を見せる。

 以前治療した瘢痕化した傷の跡だ、まぁ傷だったことはわかるが綺麗に仕上がっている。


「な、なんだと……!? 傷は、いや、傷は有るが、なんだ、きれいな皮膚が……」


「もう背中が突っ張ることもないぞ。騙されたと思ってやってもらえ!」


「最近痒いですよね? 細菌感染起こし始めているので腕を切らないといけなくなりますよ?

 むしろ、これが今までこの状態で維持できていたほうが凄いですよ。

 どうします?」


「……トットの傷を見てしまったらお願いするしか無い、あと、俺の後にオーバルも診てくれ」


「もちろん、それじゃぁ少し温かくなるので驚かないでくださいね」


 俺は以前と同じように壊死部と正常部を離開させまずは壊死部を取り除く。

 それから傷の辺縁の組織を刺激すれば周囲から上皮化が開始される。

 壊死部を取り除くとやはりグチュグチュとした感染巣が散在している。

 魔法で作り出した水で丁寧にそれらを流し、細かな細菌感染は免疫を刺激して攻撃させる。

 文字通り、魔法のように、魔法で傷口が塞がっていく。

 ワースの治療の経験が俺の魔法治癒をまた一つ上のレベルへと引き上げてくれた。

 自分の体による上皮化を待たずに、魔力によって上皮を形成できる。

 ものの30分くらいで治療は完了する。


「まだ出来たばかりの皮膚なので、絶対に無理はしないでください。

 1週間もすれば落ち着きます。お疲れ様です。次はオーバルさんどうぞ」


 リヒトさんは狐にでもつままれたように肩をツンツンしている。

 オーバルさんは少し背中側に広がっていたが、基本的に治療方法は変わらない。

 動物、特に犬、猫と人間や豚の皮膚の構造は異なるが、この世界に来てたくさんの患者を治療してその差異は理解した。

 獣人の場合、身体にその動物の皮膚と、人間に近い皮膚が混在するので、事前の診察が非常に重要になったりする。

 

 少し範囲は広かったが、同じように30分ほどで治療は終える。

 

「なんというか……幻覚でも見ているようだ……」


 おそるおそるリヒトさんは肩を回している。

 どうやら引きつりも出てないようだ。


「他にもなにか病気で困っていることがアレば言ってください。滞在中はお手伝いします」


「な? だからダイゴローは凄いヤツだって言ったろ?

 今のうちの村に来たらびっくりするぞ!

 そして、ダイゴローがこの村にいる間、きっと皆驚きっぱなしだ!」


 トットが自分のことのように俺のことを誇らしげに褒めてくれて気恥ずかしい。


「ああ、それと。遅れましたが手土産が外にあるので確認してください」


 外に置いた台車に積まれた様々な品物、食料品を含めて貴重な毛皮や魔石など、気がつけば村の人々が皆集まってきていた。


「ダイゴロー殿……数々の無礼をお許し願いたい」


「いやいや、よそ者を警戒するのは当然ですから気にしてませんよ。

 逆に迷惑をかけないように気をつけます」


「頭を上げてください。皆の者、しばらくこの村に滞在してくれる医師のダイゴロー殿だ。

 どんなものでも、なんと無償で治療してくださるそうだ」


 村の人々がざわつく、そりゃそうだ、この世界でも、特に帝国では医療は非常に高価な一部の貴族向けと言ってもいい状態だそうだ。それを無償で行うのだから皆の驚きもわかる。


「ダイゴローです。出来る限り協力しますので皆で病気を治していきましょう」


 なんとも気の抜けた挨拶をしてしまったと自分でも思っている。


「皆、見てみろ!」


 リヒトが両腕を高々と上げる。

 それだけで村人たちが驚きの声を上げる。

 そしてリヒトが肩をめくりあげるとその声がさらに大きくなる。


「この通り、ダイゴローの医者としての技術はたぶん、司祭クラスだ!」


 一気に俺に視線が集まる。


「が、頑張ります! み、皆さんお腹すきません? 食料も持ってきたのでどうぞ……」


「ほんと、お前はもうちょっと堂々とした方がいいぞ……」


 ネズラースからも怒られてしまった。

 村人たちは俺が持ってきた食料に腸詰めなどの品があるとわかると皆涙ながらに握手してきた。

 やはり、食事って大事だよね。

 そんなこんなで、新しい村での忙しい日々が始まるのであった。

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