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49話 一日

 その日から村の防衛のための改築と、村人の治療が俺の日課となった。

 皆出来る範囲の治療とは言え、魔法の力は偉大だ。

 特にワースの腕に関しては毎日少しづつでは有るものの確かに腕が延長しており、奇跡と言うしか無い。

 魔力で構成した肉体が受肉する際に身体の他の部分から少しづつ細胞の材料を集めて構成していくだろうという予想はつくが、どのような機構でそういった事が起こるのかはわからない、いくらなんでも治癒で説明するには『常識』が邪魔をしてしまう。

 何かの番組でミトコンドリアか何かの粉を付けたら指が生えてきたとかやっていたような。

 生物は不思議だ。

 ま、免疫に指向性を持たせているのも大概だが……


「そもそも、魔法ってなんだよな……この時点で根底となる物理法則が異なっているんだもんなぁ、考えるだけ無駄かなぁ……」


「考えることをやめたら、人であることを辞めるのと同じだぞ」


 ネズラースに痛いところを突かれてしまった。

 考えることは続けよう、理解できないかもしれないけど、理解が深まればいい。

 治療も、治った。じゃ良い獣医師とはいえない。治した。が良い獣医師だと師匠も言っていた。

 ま、治っちゃうんだけどな、動物ってすげーよな。までが飲んだ時の師匠の口癖だ。

 

 閑話休題。


 今は村の水の確保に利用している小川を村内に引き込む水路を作っている。

 ちょっと上流まで登っていってそこから木をくり抜いて作成した水路を村の中央まで延ばす。

 こうすることで高所からかけ流しの場所を作り水を組みやすくする。

 もちろん元の小川に戻すようにも水路を作成する。

 少し貯められる場所を作れば、今までスプーンと大差ない物で必死に細い小川から水を得ていた状態をかなり改善できる。

 そして水を使う時は必ず煮沸を徹底させる。

 自分の魔道具で産生する水分は、確かに衛生的だけど、俺が常に魔力を供給しないといけない。

 周囲の魔力を吸収して自動稼働する魔道具を作るには材料が足らなすぎる。


 下水側も出来る限り決められた場所で行い土と混ぜて少しでも衛生状態を悪化させないように務める。

 堆肥化も考えたけど、確か人糞は難しかったように記憶している。

 周囲の森を切り開き、根も掘り起こして農作物を育てるエリアを作成する。

 将来的な食料の安定供給にやはり農業は避けて通れない。

 

「なんか、対策を取ってから村を探る気配も減っているし、このまま諦めてくれるといいんだけど……」


 今は個人での森の中の活動は禁止している。

 出来る限り周囲の気配を探れる俺か、ネズラースと二人組で出かけてもらっている。

 知能の高い狼の群れであるなら、ここのような対策を取りつつある村を襲うよりそこまで対策のない村を襲うほうが理には適っているのかもしれない。


「そう思わせて油断させている可能性まで考えておいたほうがいいんだろうなぁ……」


 人間よりも知性の有る狼の話はなんかの本で読んだことが有る。

 自分のためにも、患者たちのためにも気を抜かずに対策をすすめる。


「しかし、ダイゴロー殿の強化はとんでもないな……なんでこの速度で穴が広がっていくんだか……」


 石材で作った粗末なツルハシで村の周囲に堀を作成している。

 そこからネズミ返しのような木製の壁を作る。

 堀を掘って出た土は内部側の盛り土にする。

 これで野生動物ならかなり防げるはずだ。

 落ちた動物は可哀想だけど、堀の下には木で作った槍を移動して設置している。

 自然と人々との闘いなのだ……

 強力な自然に対抗するためには人の知恵で挑むしか無い。


「しかし、ダイゴロー随分と大きく堀を掘っておりますな。

 農地を含めても我々が住むには広すぎる気が……」


「ゴルデさん、この近くで位置が把握しているこういった集落はありますか?

 俺は、出来ることなら人を集めたいと思っているんです。

 皆さんを見て、治療できるなら治療さえ受ければ今よりもいい暮らしを過ごせる人は多いと思いますし、何よりも人が多ければ安全面も増す。

 せめてこの森でひっそりと過ごす人々が安心して暮らせるぐらいには村を大きくしたいんです」


「……志は素晴らしいと思うし、ダイゴロー殿の治療を受けた私が言うのも何ですが、中には本当の悪党も多いですから……難しい問題かもしれません」


「そうですね、すぐにと言うわけには行きません。少なくともこの村の人達が飢えること無く、余裕を持ててからの話ですから」


「わかりました。ダイゴロー殿のお気持ちは皆で話し合いましょう。

 まずは安全に過ごせる場所を作らないとですね!」


「その通りです!!」


 俺はツルハシを持つ手により一層力を込める。

 この一振りが皆の安心を築き、この一振りが皆を恐怖から守るんだ!

 そんな気持ちでツルハシをふるっていたら、いつの間にか半分ほど終わっていた。

 ゴルデさんには重ね重ね無理をしないように言っていたので、明日は俺が土を溝の内部に運ぶとしよう。

 木製だがシャベルも数を揃えてある。

 強化しながら壊れたら交換で数こそパワー状態で働けるはずだ。

 

 その日バルドさんとスフィアさんが集めてきてくれた野草や芋などを畑にも分けて植え替えた。

 食べられる食物は農場で増やしていく。

 果実なども種を植えておく。文字通りこれらの事が芽を出すのはだいぶ先になる。


 夕方日が傾いたら皆村で過ごす。

 俺は日が沈むまでの時間を使って狩りに出る。

 早朝と日没前には狩りをして少しでも動物性のタンパク質を確保する。

 

 俺の一日はだいたいこんな感じで過ぎていくのだった。


 

 

 

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