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47話 新発見

--------------スフィア------------

種族 ネコ型獣人

年齢 30歳

症状 結膜炎、涙量の増加、それに伴う目の周囲の皮膚炎

鼻汁も多く常に鼻をすすっている。

-------------------------


「小さい頃からこういう状態なの?」


「実はうちの母は奴隷でね、理由は私と同じ。

 でもいい家に使われていたから妾だったけど私はそれなりに幸せだった……」


 な、なんかすごい話になってしまった……


「でも、本妻の息子が力を持つようになってから、私は……道具にされたの……」


「それは……言葉もないね……」


「腹違いの妹に欲情するような変態だったけど、逆らったら生きていけないと思って我慢してたんだけど……母が亡くなってね、その時思ったんだ。

 私の味方は誰も居なくなった……

 気がついたら森にいたわ、そして、見つけたこの村へ転がり込んだってわけ……」


「なんか、申し訳ないことを聞いたね。では小さい頃から症状は出ていたんだね」


「小さい頃は今考えれば恵まれていたの、毎日ごはんはあったし、硬かったけど今考えれば素敵なベッドで眠れた。

 あいつからの仕打ちに耐えてさえいれば、それで安全でいられたの……」


「えーっと、その、大変つらいお話だし、無理に話さなくていいよ。

 その目とか鼻は小さい頃から?」


「あいつは本当に酷いやつで、嫌がる私を楽しむかのように要求が大きくなっていったの……


「えーっと、バルドさん。先に診ましょうか?」


 俺は自分語りにすっかり酔っているスフィアの相手をするのを止めた。

 たまにいたなぁ、聞きたいことには一切答えないで関係のない自分が話したいことを延々と話す人。


「ちょ、ちょ、ちょっと! まだ私の話、終わってないわよ!」


「こっちの質問に答えないなら診れない。今は診療しているんだ。

 俺の質問にちゃんと答えない人間を診察する気になれない」


 あーーーー、こんなにはっきり言えたらあの頃も楽だったろうなぁ……

 俺は患者にどうしても下手に出てしまうから……

 こっちでは本音ぶつけるように言えるけど、どうしてもたくさん人を物理的に傷つけてしまった負い目が影響しちゃってな~……


「わ、わかったわよ。症状だっけ? 小さい頃はそんなでもなかったけど、疲れたり、酷いことされた後とかに出たりしたことはあるわ」


 猫風邪とも呼ばれるヘルペスウイルスの持続感染は免疫力の低下やストレスによって再発症する。

 現在の過酷な環境で症状が慢性化してしまったんだろう。

 たぶん、そこに別の複合感染もしてそうだ。


「口痛かったりする?」


「ええ、最近は口の中も腫れちゃって……」


 ううむ、口の状態も結構悪いな……レディーには言わないが、口臭も悪化している。


「そしたらまず手を触るからね……」


 そっと手を当てて診察を開始する。

 猫風邪の複合感染で多いのはカリシウイルスやクラミジアだ。

 薬が使えない以上、今は免疫に頑張ってもらうしか無い。

 口内炎が、猫エイズでないといいけど……ウイルスを診断するキットも無いからなぁ……

 猫エイズ、正しくは猫免疫不全ウイルス(FIV)による感染症。

 猫後天性免疫不全症候群、簡略化してFIVとか猫エイズと呼ばれる。

 文字通り、発症すると免疫不全状態を引き起こす恐ろしい病気だ。

 残念ながら特定の治療方法はない。感染していたら、体調不良、ストレス等が少ない生活を心がけて発症を起こさせないことが大事だ。

 もし発症期へと移行してしまえば、あとは各症状に対症療法をしていくしかない。

 

「ん……?」


 俺がそんなことを考えながら身体を探っていると、なんとも言えない感覚が『視える』。

 ボワッとしたようなホワッとしたような光が体内に視える。

 そして、色の濃淡を感じる。

 症状が酷いところは少し光が強い、それ以外にも顎の下や胸の中央なども……

 今までこんな事なかったぞ?

 さらに深く集中する。

 そして気がつく。これが今考えていたウイルスに反応しているのではないか?

 試しにヘルペスウイルスのことを意識してみる。

 先程よりも光の位置が顔面周囲とその近位の反応が強くなる。


「これは!?」


 カリシウイルスには反応がない。

 クラミジアでは特に目の周囲の反応が強くなる。


「間違いない!」


 同時に嫌な事実が確定してしまう。

 スフィアさんが猫エイズに感染しているのだ……


「でも、今の俺なら……」


 俺はスフィアさんの身体の免疫を直接刺激して方向性を持って強化させることが出来る!

 中和抗体を作ったり、T細胞やNKナチュラルキラー細胞を操るなんて現代医療でも出来ないことが出来るのだ! 魔法ってすげー!

 さっきの力と合わせれば、感染症もほぼ治せるじゃないか!

 今、まさにチート能力を手に入れたぞ!

 今更な気もするけど……

 免疫を誘起させ、リアルタイムでウイルスの増減までわかる。

 魔導治療とでも呼ぶべき検査、治療は俺を大いに興奮させる。


「な、なんかダイゴローハァハァ言って怖いんだけど……襲わないでね?」


「ああ、ごめん。今すごい治療方法を確立して、興奮してしまった」


 問題は、病気の原因をちゃんと理解していないといけないってことだね。

 この世界独特の病気や原因だと、たぶん俺は見えない。

 今回たまたま知っている病気だからいいけど……


「そんなことより、今は治療だな!」


「なんのこと? 大丈夫なの?」


「ああ、これからは目周りを清潔に保って定期的に俺の診療を受けること。

 あとは栄養面や環境面の整備なんだよね……」


 また村作りだな。


「さて、バルドさんお待たせしました」


 スフィアさんの処置を終えたので次の患者さんの診察を開始する。


---------バルド------------

種族 鳥型獣人ワシ

年齢 39歳

症状 指や脚などに腫瘤を形成、痛みを伴い日常生活もつらい

-------------------


 見せてもらうと指の部分に黄色の腫瘤が存在している。

 関節の近位に多く、動かすとかなり強い痛みが出る。

 

「さっそく診ちゃいましょう」


 鳥型の獣人は結構鳥の病気の方が多い、この黄色の感じからもっとも疑わしいのは黄色脂肪腫と通風か、腫瘍関連だろう。

 腫瘤内の物質は脂肪ではない、じゃぁ尿酸結石……ビンゴだね。


「通風ですね。痛いですよね……」


「ああ、たまらんね。で治るのかい?」


「バルドさんって好き嫌い多いですか?」


「お、なんで知ってんだ? 俺は野菜が嫌いだから、なんとか食える芋ばっかりだな。

 昔っからでよ、これでも鍛冶職やってたんだがこれが出てハンマーも握れなくてな……」


「これ、栄養バランスちゃんとしないとダメなんですよね。

 今結節は取りますけど、結局はバランスの良い食事が大事で……」


「とは言っても、俺だったいろんなもの食べたいけどよぉ、ここだぜー?」


「そうですね。あとで村もちょっと手を入れて少しでも過ごしやすくします」


「しかし、大した道具もねーぞこの村は」


「石斧でもあればなんとか出来ますから、まぁ、むらづくりは何度かしてますから」


「ダイゴロー様サマだなって、もう治療してるのか? すでに痛くないんだが!」


 話しながらも治療していく。とりあえず関節内に貯留した尿酸を外部に排出させる。

 神経に働きかけて簡易的な神経ブロックまで可能だ。

 実際の鳥はビタミンや栄養面で改善させて自然退縮を待つ長期戦だが、表面少しだけ切る程度なら痛みも無いだろう。

 

「食生活とかを改善しないとまたすぐ貯まるので、出来る限り急ぎます」


「ああ、ボコボコしてねぇし、痛まない手は久しぶりだよ! ありがとなー!」


 診察をするごとに問題が増えていくけど、何かが解決していく充足感もある。

 でも、次の患者さんは難しいかもしれないな。

 俺はそう思っている。

 最期は隻腕のワースさんだ。

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