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43話 会話

「クソっ! こいつら! やめろ!! 近寄るな!!」


 声がどんどん近くなる。

 男性の声だ、声の感じは若々しい。

 木々の隙間から何と対峙しているかが見えた、野犬の魔物化したものが多分木のそばにいる男性を3匹で取り囲んでいる。

 棒のようなものを振って耐えているが、3方向から牽制されていていずれは襲われてしまうだろう。

 俺は走りながら適当な枝をむしり取りやりのように投げる。

 それで撃ち抜けたらかっこよかったけど、流石に側の地面にあたって跳ねただけだ。

 それでも意識をこちらに向けることが出来た。

 バッと男性から距離を開けて警戒を強めている。


「だ、誰だ!?」


 男性は……オーク? いや、豚型の獣人だった……美味しそうだもんなー……

 魔物への一定の理解を示してしまった。いかんいかん。


「大丈夫ですか?」


「あ、ああ……助けてくれるのか?」


 ざっと見るが肩と太ももから流血は有るが、命にかかわるような出血量ではない。

 その獣人と魔物の間に躍り出て木刀を構える。

 ズルズルと獣人が座り込んでしまう。


「グルルルルルルル……」


 突然邪魔にはいった俺に不快感と警戒感を露わにする3匹の魔物。 

 せっかくパターンに入った美味しそうな獲物を横取りされたようなもんだもんなー……


「悪いけど、獣人を助けるのは俺の使命なもんでね!」


 距離を詰めるために前に出た3匹のうちの一匹に一気に接近する。

 突然のことに対応する暇も与えずに木刀を頭部へと振り下ろし、手に感触が伝わると同時に抜手で魔石を獲りに行く。

 ごしゃりとした木刀の感触と、ずぶっと肋骨の合間を手が抜けていく感覚は今だに好きになれない……

 好きになったら困るけども、地下のネズミたちに比べると大きな魔石の気配がする。

 つかみ取り乱暴に引き抜く。ここは丁寧さよりもスピードだ。

 どさりと魔物が倒れると、俺の手には魔石が握られている。

 何が起きたのかわからない他の二頭に、何が起きたかを理解させる時間は与えない!

 すぐにもう一頭に襲いかかる。

 目の前で起きたことに呆然としていた魔物はなすすべなく同じように俺に狩られる。

 そのまま最期に行きたかったが、一匹目の惨劇を理解すると飛びかかってくる。

 ココらへんは野生の生物と魔物の違いだ。

 怒りに任せて飛びかかってくるなんて愚かなことを野生動物はしない。

 実力差があれば退避するという選択肢も選んでくる。

 

「魔石は大切に使うよ……」


 空中の魔物の頭部を木刀で薙ぎ払う、頭部が爆ぜて地面に叩きつけられた魔物に抜手を打ち込む。

 あっという間に3匹の魔物を殺し、魔石を手に入れた。

 自己の生きるというエゴのために魔物であれば躊躇なく殺す。

 俺も、異世界に染まったなぁと少しため息が出る……


「ひ、ひぃぃぃぃ! ば、化物ぉ!!」


 獣人が俺に持っていた木の棒を振り回して逃げようとしている。

 今の闘いで失禁してしまったようで、ズボンはびちゃびちゃだ。

 逃げようとしているが腰が抜けてしまっているようで這いずるようになってしまう……

 なんか、昔より傷つかなくなったな……

 俺はもう一度ため息をつく。


「お前は助けた相手を化物呼ばわりか……」


 頭上からネズラースが獣人へと声をかける。

 第三者の登場に獣人がさらに怯え周囲を見渡している。


「ああ、この声はネズラースって言って俺の連れ。頭の上にいるネズミの姿をした相棒だよ。

 俺はダイゴロウ、ある理由でこの森を遭難していて……

 偶然貴方を見つけて、ピンチみたいだから助けに来たってとこだね」


 久しぶりのネズラース以外との会話、人との触れ合いに、会話というものに胸が熱くなる。


「ああ……助けてもらったのに…失礼な態度を取ってしまった……すまない……

 あまりに、その、なんというか強くて驚いてしまった」


「仕方ないよね、我ながらこんな方法で魔石を取っているのは異常だと思うし……」


「それでも、無礼には変わらないすまなかった」


 ようやく木を利用して立ち上がる。

 まだ少しふらついているが、大丈夫そうだ。

 その獣人は手を差し出してくる。


「俺の名前はトット、少し先のトンガ村に住んでいる。

 改めて命を救ってくれてありがとう。もうおしまいだと覚悟していたよ」


 俺はその手を握りしめる。


「ちょっとこのままいいかな?」


「何を……? ん? 温かい……」


 俺は診察と同時に『強化を獣人にかけた』。魔力の微細なコントロールを学んで、相手の身体を通して相手の自己治癒力を高めるという方法を編み出した。

 モグラで実験した。

 もともとべグラースの力があった時は遥かに高度なことをしていたのを、ぼやっとかけているようなもんだ。

 診察の結果でも特に大きな異常は認めない。軽度肥満ぐらいだ。


「どうだろ? 肩と太ももの痛みが引いたんじゃないかと思うけど……?」


「……おお! 確かに! 全然っいてててて……」


 ドンドンと足踏みをして苦痛に顔を歪ませてしまった。


「表面を覆ったぐらいですからムリしないでください……」


 支えた俺の身体がほのかに光る。

 無駄に律儀な呪いだこと……


 それから俺はトットさんに話を聞いて一緒に村へと連れて行ってもらうことになった。

 俺が木の上から見ていた道は、森を抜けた先。普通の人間ならあと2週間ほどはかかる先だそうだ。

 魔物から逃げている間に少し迷ってしまったそうだが、道の方向ははっきりと分かっているので、その位置関係でなんとか村からのルートに戻ることが出来た。


 こうして俺は2ヶ月ぶりほどの人里へと入ることになるのである。

 ここまで、長かった……

 


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