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36話 予感

「キンドゥ! 蜘蛛の巣に巨大種がいた!」


 分かれたキンドゥたちを追いかけると、結構すぐに追いついた。


「だ、大丈夫?」


「お、お前……これ、前よりだいぶ重くなってないか?」


 キンドゥは地面に四つん這いになって OTZ って体勢になっている。 


「ああ、ごめん新型は芯に鉄使って重石使用してるんだ……ユキミ治してあげて……」


「はいニャ」


「ああ、ユキミ嬢にこのような姿を……不思議な感情が……」


「状態異常魔法でもかけてあげようかニャ?」


「すみません、大人しくしてます……」


 キンドゥは俺が改良したローラーを前のものと同じように扱おうとして、明らかに重いって分かっているのに見栄を張って、そして力尽きたそうだ。

 ユキミに回復魔法をかけてもらいながらお触りしようとして電撃を食らってる。

 馬鹿だねキンドゥ。


「でだ、キンドゥ。巨大種どうする?」


「どっちだ?」


「クイーンだね」


「まずは村長に相談。討伐なら討伐、そうじゃないなら周囲を囲って採取場化ってとこじゃないか?」


「まぁ、そうなるよね。わかった。

 キンドゥもそれじゃぁ回復終わっても休まないとだめだろ。

 俺が道だけ作っておくから先に帰ってていいよ」


「すまぬ……」


「俺とユキミ、ナウパ君だけならネズラースもいるから危なかったら逃げられるしね」


「息子を頼むぞ」


「ああ!」


 そんな見栄を張らなくたって、息子と言われただけでナウパ君は凄く嬉しそうだぞキンドゥ。

 その後神殿までの道のりを駆け足で整備する。

 もう慣れたものだからユキミと二人のほうが手早く済む。

 あっという間に獣道が歩道へと早変わりする。

 新型ローラーは重量が上がっているおかげで何度も往復しなくてもかなりしっかりと道作りが出来る。

 その分、まぁ重量はしかたないよね。


「ダイゴロー……この神殿は嫌な感じがするニャ……」


「私も同意見だ……」


「実は俺も……」


「皆さん何か感じるんですか? 私にはなんにも……」


 神殿と言っても何年、何百年、何千年かも知れないが放置されたような荒れ方をしている。

 倒れた柱には植物が絡み、床の石材もぼろぼろで植物による侵食を受けている。

 森の中でそのあたりは木々は少ないが、ところどころ比較的若い樹林が立つほどは時間が立っていることを推理させる。

 

「作り自体は、邪神とかのたぐいではなさそうだけど……」


「もともと神殿なんかは神様との繋がりが強いところに作られるニャ……

 ってことは悪神や邪神も後からそこを利用することもあり得るニャ……」


「それが原因で放置された可能性も有りか……確かに文献でも幾つかそういう報告はあったなぁ……」


「なんにせよ、とりあえず戻るニャ! そろそろ日が傾き始めるニャ!」


 バラバラになっている現状で森で夜を過ごすのは危険だ。

 ユキミの提言に従って村へと引き返す。

 もともとその予定だったしね。


「しっかし、なんだろさっきのザワザワ感は……」


「私も尻尾がピリピリする感じニャ……」


「特に悪意や敵意は無いのだが、まさに予感としか言いようがない」


「なーんか、嫌な予感がするのニャ」


「大森林はまだまだわからないことだらけだからなぁ、ちょっと今回は諦めた方がいいかな」


 帰り道は整備された道のお陰で行くときの半分以下の時間で帰ってこられた。

 これにはナウパ君も驚いていた。


「これほどしっかりとした道があの短時間で作れるのですね」


「ただ、キンドゥでああなるなら、俺しか無理っぽいね……重いもんなぁ」


 キンドゥの滞在する小屋に戻ると、嬌声がする……


「おい! 何やってんだ……」


 ドアの外から声をかけるとバタバタと慌ただしい音がする。

 しばらくするとキンドゥがボタンを掛け違えて出てきた。


「お、おお! 早かったではないか!」


「もうキンドゥは治さないにゃ……」


 ユキミはほとほと呆れ顔だ。

 俺も呆れたよ。


「そ、そんなーユキミ嬢、なんていうかちょっと確かめてたんだよ!」


「言い訳もこの上なく最低ニャ……」


 同感。


「まぁ、いいや。キンドゥ、ちょっと今回のダンジョンは嫌な予感がするんだ。

 詳しく話してもいいか?」


「ああ、そうしたら村長のところへ行こう。蜘蛛の件もある」


 身支度を整えたルペルとマジも合流して村長の館で今後の作戦会議を行う。

 

「ふむ、巨大種クイーンか……蜘蛛の巣が定期的に取れれば村としてはありがたいが……」


「一般に魔導グモは大人しく臆病な昆虫なので、ただ、このあたり妙に魔物が多いですよね……」


「魔物に襲われて凶暴化した蜘蛛が大量に村に押し寄せるというのはゾッとしないな……」


「魔物も防げる外部の堀でも蜘蛛はその気になれば……」


「しかし、それを言ったらここに村を構えている事自体の問題になる。

 退治するのは可能かもしれないが、蜘蛛の糸は諦めねばならない。

 今でも村の外との交易には蜘蛛の糸は重要な商品になっている」


 村長と村の代表者達の話はすぐに結論が出るたぐいのものではなかった。

 ダンジョン自体も不穏な雰囲気があるので、あまり焦らずに事を運んだほうがいい気がする。


「そう言えばダイゴロー、あの神殿も嫌な予感がするそうだな」


 議論が堂々巡りになってしまったところでキンドゥが俺に切り出してくる。


「ああ、俺もユキミもネズラースも同様の感覚を憶えた。

 何か害意や敵意ではなく、予感に近い。

 一緒にいたナウパは何も感じなかったそうだけど……」


「はい、以前神殿を見つけたときと変わった様子を感じませんでした」


「一応道は開いて念入りに虫除けは設置しておきましたが、うーん、なんとも言えないんですよね……」


「そういう勘は馬鹿には出来ない。しかも、3人共だろ……?」


 結局その日は結論が出なかった。

 ダンジョン攻略の報酬は大事だが、命を落とすようなことになれば元も子もない。

 まぁ、枯渇するとは脅してみたが、一年くらいならなんとかなる。

 俺が開発した商品の売れ行きもいいそうだから。


 それでも夜飯のあとはダンジョンの話が中心になる。

 とりあえず、入るわけではないが全員で確認しよう。結論としては妥当な線で決まる。


 明日、もう一度あの神殿へと向かうことになった。




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