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35話 蜘蛛

 窓から差し込む光が顔面を直撃して俺は目を覚ます。

 まぁ日頃の習慣でこれくらいの時間には起きてしまう。

 まだ日はそれほど昇っていないたぶん6時くらいかな?

 俺はユキミを起こさないように服を着てそーっと外に出る。

 村全体から果実酒独特の香りがする気がする。

 

「あのお酒はほとんど精力剤みたいなものだもんな……」


 昨日の情事を思い出してしまう。


 とりあえず今日は書類整理もカルテをまとめる仕事もないが、日課である軽い運動と村を見て回る。

 以前作った村の囲いをチェックして壊れている所があれば補修する。

 堀なども崩れている部分は作り直す。

 小屋や倉庫なんかも損傷箇所がないか確かめて回る。

 キンドゥが寝てる小屋の足場が一本折れそうになっていた。


「どんだけ激しくしたんだ……」


 俺はヨイショと小屋を支えて足場の柱を交換する。

 途中から変な振動が伝わってきて、朝っぱらから元気なことだ。

 手早く修理して次の場所へと移動する。

 

 村を一巡りすると結構いい運動になったので水場へ向かう。

 冷たい川の水が気持ちいい。

 顔だけではなく上半身も軽く水浴びをする。

 

「なんか、さらに気持ち悪い身体になってきたな……」


 もともと何もしなくても勝手に筋肉が付く方だったが、こっちに来て健康的な食事と過剰な運動によってその身体は二回りぐらい大きくなった。

 密度は倍ぐらいになってるんじゃないかな……

 

「ふんっ!」


 軽く正拳突きをするとその衝撃波で対岸の木が揺れる。

 ローキックをすれば川の水が切れて分かれる。


「人間離れしてきたなダイゴロー」


「キンドゥー、朝の一戦は終わったんですか?」


「何を言ってる。あれは4戦目だ」


「気がついてたんですか……わざとですね……」


「おふざけじゃおふざけ。それにしても、よく鍛えておるな」


「別段何もしてないんですけどね」


「ひさしぶりにやるか?」


 キンドゥが拳を構える。それだけで獲物を狙うような気配が出る。


「止めときますよ、後ろでご婦人がお待ちですよ?」


 キンドゥの後ろの方でタオルを持ったナウパの母とは違う女性が待っている。


「ははは、そうじゃな。それでは後でな!」


 汗を流してキンドゥは戻っていく、またケツを揉みしだきながら、お尻好きなのかなキンドゥは?


 それから俺も小屋に戻る。

 キンドゥの4戦は無理でした。4戦はね……


 日も上がってきて村が活動し始める。

 俺とユキミも村長の家で朝食を誘われているので向かうことにする。

 いつの間にか戻ってきたネズラースも頭に入り込む。


「ダイゴローどの、早朝より申し訳ないですな。

 若い衆が驚いてました。数週間かかると思ってた補修が終わってるって」


「目が覚めたので物のついでですよ」


「ほんと糞がつくほど真面目だよなダイゴローは!」


「それがダイゴローちゃんのいいところなのですよ~」


 マジさんもルペルちゃんも凄く、その、テカテカしてる。まるで若い子のエネルギーを吸ったような……


「おいこらダイゴロー良からぬこと考えてんだろ?」


「殺すぞガキ?」


「いえ、なんでもございません」


 コワイコワイ。


「さて、まずは皆様きちんと食べてください。

 森の神殿は半日ほどかかりますからな、しかも、蜘蛛の巣の側を通りますから」


「虫……虫は嫌なのニャ……」


「ユキミ嬢! 俺が全部倒しますよ!」


「流石だ……」


「キンドゥ、蜘蛛の巣に寄り道してもいいかい?」


「ああ、素材か。いいけど案内護る人がいるぞ?」


「そしたらユキミとマジさんお願いしてもいいですか?」


「構わねぇぜ!」


 この世界の蜘蛛の糸は日本で言う吸収糸みたいに使える。

 太さも加工次第で様々な種類に使えるのだ。

 魔力が練り込まれているようで拒絶反応も起こらないスグレモノで、いくらあっても嬉しい。

 編み込むとフィルターみたいになったり、本当に様々な分野で利用できる。

 回収したらなるべく早く加工すると品質が高くなるので下見の時に回収して村でダンジョン攻略している間に加工をしてもらう算段だ。加工にもそれなりに時間がかかるからね。


「ちゃんと守ってニャ?」


 ユキミが不安そうに見つめてくる。可愛すぎるだろ、もう一戦行っちゃうか!?

 キンドゥの嫌味が聞こえてきそうだから自重する。


「神殿に案内してもらったら一度案内人を村へ送って、再度アタックでいいな」


「おう!」


 キンドゥの一言で皆が戦士の顔になる。

 カリスマ性も然ることながら、一流の冒険者たちとはこういうものなんだなーと感心する。

 キンドゥなんかは典型的なギャップ萌えってやつなんだろう。

 戦っている時のキンドゥは男の俺でも見惚れることがある。

 真面目な時は真面目だしね。


「枝よけしかしていませんから足元気をつけてください」


 案内役はキンドゥの息子のナウパ君だった。

 キンドゥの子とは思えないほど真面目な好青年だ。

 

「村長には許可を貰ってるニャ、私とダイゴローで道を整備するニャ!」


 魔法で道を切り開き、ローラーで押し固める。

 慣れた手つきで俺たちは進んでいく、巨大なローラーを引く俺の姿をナウパ君は目をキラキラさせながら見てくれる。


「ダイゴロー様は凄いです!」


 素直な賞賛はとても嬉しい。


「ここから右手の道が蜘蛛の巣、正面が神殿への道です」


「ならばダイゴローもう一つローラーを出せ。俺とゴーザで引く。

 ルペル、木は頼むぞ」


 ルペルちゃんも風魔法は得意だ。


「それじゃぁ後でな」


 同じようにローラーを引くキンドゥにナウパ君の尊敬の眼差しが向けられる。

 いつもは重いから嫌だとか言うくせに、息子の前で見栄を張ってるね。

 あとでユキミに腰をやってもらわんとな、絶対無理するから。


 俺達は蜘蛛の巣の回収へと向かう。

 

「マジさん、お願いします」


「風の精霊よ、力なきものを退けたまえ……」


 風の精霊に俺たちには聞こえない危険を知らせる音を発してもらい、蜘蛛などの昆虫なんかだと皆姿を隠すために無駄に戦闘にならないで済む。


「あーこの魔法嫌いなんだよなー、どーにも耳鳴りがする……」


 敏感な人だとなんとなく聞こえてしまうそうだ。


「すまないねマジさん、なるべく早く回収しよう」


 蜘蛛の巣に近づくとそこら中に巨大な蜘蛛の糸が張り巡らされている。

 蜘蛛と言ってもこの魔力を帯びた糸を吐く蜘蛛は巨大だ。

 この糸に人が引っかかれば容赦なく蜘蛛の餌になってしまうだろう。

 糸の回収方法は全体に魔力でコーティングして回収する。

 魔力の心得があれば誰でも出来るし、強化の応用で俺でも出来る。

 俺達は蜘蛛達の生活に大きく影響を出さないレベルで手早くクモ糸を回収する。


「……なぁダイゴロー、ちょっとあの洞窟の中調べていいか?」


「精霊で? どうぞどうぞ」


「…………ダイゴロー……巨大種いるけど、どうする?」


「マジっすか……村との間に虫除け設置しておけば平気だとは思いますが……クイーン?」


「ああ、まだ若いクイーンだな……おっと、気が付かれた。とりあえず撤退しようぜ」


「はい」


 急いできた道を引き返す。蜘蛛の糸は十分手にはいった。

 巨大種はより強い魔力を持っているので虫とは思えない高度な知識を有しているものも多い。

 巨大種というのは突然変異と言うか上位種みたいなもので、基本的には無害なんだけど、ここが村との距離が微妙なのと、ダンジョンが見つかっているために冒険者が多く行き来する可能性があって、遭遇する可能性が高まる。

 クイーンなら蜘蛛の糸を大量に安定して回収できる採取場に出来るから本当は退治したくない……


「とりあえず、キンドゥに相談してみましょう。

 念のために村への道には虫除け設置しましょう」

 

 単純に空気が動くと虫が嫌がる音を出す虫除け、こんなのでも警戒心の高い虫には効果十分だ。

 村への道と蜘蛛の巣へと続く道に設置して、急いでキンドゥ達と合流する。



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