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34話 ジーリス村の夜

 肉体強化魔法全開でユキミを担いで森を疾走する。

 魔物が出なかったのでうっすらと暗くなり始めたことに村に戻れた。


「おお、遅かったな! もう始めてるぞ!」


 中央の広場ですでに酒盛りは始まっていた。

 村への贈り物もたくさん持ってきているので祭りのようになっている。

 キンドゥは現地妻にお酌をしてもらってすでにご機嫌だ。

 とりあえず汗をかいたので、ユキミをおろす。

 滞在する小屋で身体を清めて鎧から普段着に変えて会場へと戻る。

 すでにユキミは肉にかぶりついている。


「ほら、ダイゴローも食べるニャ、飲むニャ!」


 笑顔で肉とコップを渡されて、誰のせいで俺が苦労したんだよって気持ちはまぁ脇に置いてやることにする。楽しそうなユキミは本当に可愛いのだ。惚れた弱みだ。


「それじゃぁもう一度!! かんぱーい!!」


 村総出で大騒ぎだ。だが、俺にはちょっとした仕事がある。


「あー、飲みながらでいいからちょっと失礼」


 村人に挨拶しながら診察を行う。

 この村では過去にバベシア症が発症していたのだ。

 森の奥深くで過ごしていれば当然虫に食われることも有る。

 バベシア症はマダニに食われることによって発症する病気で、血液に寄生する原虫が原因で血液が壊されてしまい様々な症状を起こす。重篤な症状が出ると命にかかわる。

 そして、厄介なことに明確な治療法が日本ではなかった。

 基本的には増殖を薬で抑えて症状を発症しづらくして管理する病気だ。

 ダニで伝染るので衛生管理も重要だ。

 以前来た時は土壌を含めた村周囲の洗浄と、再びマダニ等が侵入しないように虫除け対策を徹底した。

 おかげで今は蚊も少ない。フィラリア症もこの世界には有るのでダブルでありがたい。

 治せない病気バベシア症だが、この世界では治癒可能だ。

 これは原因を話している時に偶然マジさんがいたからわかったことだ。

 

 呪詛で原虫を殺す。


 抗生物質や科学的な薬剤では解決できないことが、呪いで解決する。

 ここが異世界なんだと思い知らされた一件だ。

 それからユキミに呪詛術を覚えてもらい、俺が病原体をイメージして、ユキミが呪詛で殺す。

 問題点は全部一人ひとり手作業でやらないといけない。

 呪詛術を使える人にいくら説明してもイメージを正確に伝えることができなかった……

 俺とユキミがペアで当たらないといけない病気だ。

 緊急の時は薬で進行を抑えて待ってもらう事になってしまう。

 万能じゃないんだよね……

 当然だけど……

 フィラリア症は実際の虫を見せたら呪術で殺せるようになった。

 要はイメージできるか出来ないかなんだよね。


「よし、全員問題ないね、再発もない。完治って言っていいと思うよ」


 最期の村人の診察を終える。

 すでに会場の方は盛り上がりまくっているので、診察と言っても乾杯しながらとか食事をしながら気楽な感じで行っている。


「良かったニャー、おつかれダイゴロー」


 ちょうどよくユキミがおかわりを持ってきてくれる。

 実は見ていてくれていたのかもしれない、こういうところは最高に好きです。はい。


「ぐぬぬ……」


 俺たちを見て歯を食いしばっているキンドゥ、隣に奥さんいるだろうに……


「あら、あなた……私じゃダメですか?」


「おお、そんなことはないぞー。どれ少し中座するとするか……」


 ケツをモミモミしながら小屋に入っていくキンドゥ、すぐに嬌声が漏れ聞こえる。

 ナウパ君。君に弟か妹が出来るかもしれないね。

 そして王様すみません。また後継者候補が増えるかもしれません。


「ダイゴロー先生お疲れ様です。その節はお陰で助かりました」


 バセッドハウンドによく似た獣人の老人。この方がジーリス村の村長さんだ。


「いやー、なんかすみませんうちのキンドゥが……」


「いやいや、キンドゥ殿には色々と世話になっておる。ナウパもいずれは村を告げる立派な若者、感謝しか無いですじゃ」


 ぼふぼふぼふと笑う村長。バセット好きな俺として村長がかわいくて仕方ないぜ!


「村の皆も皆さんを歓迎しております。どうかゆるりとお楽しみください」


「ええ、楽しませてもらいます!」


 俺は杯を合わせクイッと飲み干す。

 ベリー系の果物から作られたお酒で酸っぱくて飲みやすい。でも実はかなり強い。

 ふと見回すと祭りはかなりカオスになってきている。

 若い猫型獣人の男の子がルペルちゃんに潰されかけていたり、マジさんも鼠型獣人に絡んでいる(物理)、ゴーザ君は……あれは座ったまま寝てるな。キンドゥに飲まされたんだろう。

 なんというかこの世界、結構いろんなことがオープンだったりする。

 やはり病気が脅威で厳しい自然で生きていると多く交わり多く残す生態になるのかもしれない。

 こういった祭りからしばらくすると村には子が増えるものなのだそうだ。

 目に見えて村民同士もイチャイチャと人目もはばからずに始まっている。

 俺も少しは慣れてはきたものの、主にキンドゥの性で、少し気恥ずかしい。


「にゃーーーん、ダイゴロー飲んでるかニャー?」


 後ろからユキミに抱きつかれる。


「ご機嫌だなユキミ、またこれ飲みすぎたろ……」


「だってこれ美味しいニャ~~、またここの肉は美味しくて、それとよく合うんニャー♪」


 ユキミは俺の膝の上に座って甘えてくる。

 優しく髪をなでるとゴロゴロいって甘えてくる。

 可愛い子なのだ。


「先に寝るぞ、程々にな……」


 ネズラースのエアーリーディング能力は高い。


「この村を救えたのはユキミのお陰だから本当に感謝してるよ」


「そんなことないニャー、ダイゴローの知識あってのことニャ」


 思い出させたら悪いから口には出さないが、呪術と言うのは非常に習得が辛いそうだ。

 大量の虫を(ry、あとは死体(ry、さらにはこの世のものとは思えないまずい汁を(ry

 獣人を救うためニャ! と普通の人間なら数年、天才で数ヶ月かかる修行を一週間で終えてくれた。

 本当に頭が上がらない。

 

「だ、ダメにゃダイゴロー、あんまりそこ撫でると変な気分になるニャ……」


 おっと、感謝の気持ちが溢れすぎてブラッシングに熱が入ってしまったようだ。


「ごめんごめん」


「……だめニャ、今日は寝かさないニャ……」


 首に回された手に引き寄せられ首元をカプカプとかじってくるユキミ。

 カチリと俺のスイッチが入る。


「にゃ♪」


 お姫様抱っこでずんずんと用意された小屋へと入る。 


 僕は幸せものです。

 


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