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31話 猫の○○

シモネタ回かも……?

 そりゃあもう上機嫌で仕事をこなして、今日のダイゴロー先生は気持ちが悪いと言われてもどこ吹く風。

 うっきうきな気分で診療業務を終えた俺は自室に戻る。

 

「あ、お疲れ様ニャ! ダイゴロー一緒にご飯食べよ?」


 ああ、俺は幸せものだ……

 いつも昼鶏の世話に明け暮れているユキミが、部屋で待っていてくれる。

 少しはにかみながら昼食を一緒に食べようと誘ってくれる。

 俺の人生にこんなイベントが起きるなんて……


「もちろんだよユキミ! 鶏達は今日も元気だったかい?」


「……ユキミより、鶏が気になるの?」


 ぞくり……ユキミの平坦な声に俺の本能が警鐘を鳴らす。


「い、いやいや。俺はユキミが来てくれれば最高に嬉しいよ!」


「……良かったニャー! そしたら食堂いこ!」


 ああ、可愛らしい笑顔。するっと腕を組んできちゃったりなんて可愛いんだ!

 さっきのは気のせいだよね、仕事で疲れて風邪でも引き始めたかな?

 気をつけないとな~!


「はい、ダイゴローあーん」


「あーん」


 俺とユキミは周囲が俺たちと距離を取ってヒソヒソしていても気にすること無くバカっぷる振りを発揮する。

 病院の食堂には病院で働くスタッフだけじゃなく、患者さんも利用できる。


「ダイゴロー先生お陰でうちの子が歩けるようになりました!

 本当に有難うございます!」


 患者さんの母親の女性が俺を見つけてお礼を言いに来てくれた。

 この方のお子様も栄養失調性のくる病だったので、適切な食事指導と日光療法で快方に向かった。


「おお、良かったです。これから楽しみですね」


「本当にありがとうござました」


 何度も頭を下げながら食堂を後にされる。

 いやー、やっぱり治療して喜んでもらえるのは嬉しいなぁ。


「ねぇ、ダイゴロー?」


 ゾクッ……また寒気が……


「なんで私と一緒にいるのに他の女に愛想よくするのかニャ?」


「え……だって今の方患者さんのお母様で……」


「言い訳は聞いてないニャ!!」


 静まり返る食堂。皆食器を片付け、ソーーーっと帰り支度を開始している。


「ずっとそばに居てくれると言ったニャ、私だけのダイゴローでいてくれるって言ったニャ……」


「ああ、俺はユキミだけの物だよ!」


「じゃぁさっきのあの女は何ニャ!? あの泥棒猫……」


「ゆ、ユキミ落ち着いて、あの方は患者さんの母親で……」


「そうか!? 患者ということで近づいてダイゴローをその毒牙にかけるつもりニャ!」


「ちょっとユキミさん!?」


「ダイゴロー! 私は怖いニャ……ダイゴロー……ユキミをちゃんとダイゴローの物にして欲しいニャ……」


 ゴクリ。喉が鳴る。

 妖面な態度と甘えん坊な態度が混じり合った、魅力的で可愛らしいユキミ。

 しかし、その裏に潜む狂気の気配に俺の本能が再び警鐘を鳴らす。


「ダイゴロー……一緒に部屋へ行くにゃ……」


 ガシッ! 腕を掴まれる。

 凄い! 微動だにしない!

 もう周りには人っ子一人いない、頭上のネズラースも早々に逃げ出した。

 

「ま、まだ休憩時間だけど、午後も診療が……」


「悪い虫が付く前にダイゴローにユキミを刻みつけるニャ!」


 ニタァ、とユキミの可愛らしいいつもの笑みが、こびりつくような得体の知れない物に見える。

 俺は抵抗を許されずに半ば引きずられるように寝室へと連れ込まれる。

 

「んぶ!」


 猛烈な勢いで唇を奪われ、あっという間にひん剥かれてベッドへ押し倒される。

 何という力だ!


「ゆ、ユキミさん、こういうことはもっと時間をかけてゆっくりと……」


「そんな悠長なことをしてたらどこの泥棒猫がダイゴローを奪いに来るかわからないニャ!

 な~に痛いのは最初だけニャ!」


「あーーーーれーーーーーー」







 僕は……大切なものを一つ失った……


 狂ったように俺の上で踊っていたユキミは、俺が果てると同時にパタリと俺の胸元に倒れ込んできた。

 経過はどうあれ、俺とユキミは結ばれた。

 ちょっと怖かったけど、全然そんな気分にならなかったけど、今頑張らないと殺される!

 そういう気持ち+まぁ、男の子ですから。ぱくっとユキミさんに食べられました。


「……ん……うーん……」


「大丈夫? ユキミ……」


「うニャ? ダイゴロー、これでダイゴローはユキミのものニャ……」


「元からそうだって言ってるのに……」


「……なんで、そんなに必死になったんニャ私?」


「え?」


 ユキミは憑き物が落ちたような可愛らしい顔に戻っている。

 ささっと俺の身体から下りるとそそくさと服を着始める。

 ちょっと名残惜しい。


「うーん、なんか妙にどうでも良くなったニャ……

 鶏のお世話してくるニャ! ダイゴローも頑張って!」


「あ、ああ、うん」


 あれ?


 バタンと部屋をあっさりと出ていってしまった。

 一人部屋に残された俺は、シャワーを浴びて今起きた嵐のような出来事と現状に思いを馳せる……


「発情か!?」


 その結論に結びついて……俺は膝から崩れ落ちる。

 あの異常なほどの行動……そして、行為後の驚くほどの冷静さ……

 ここまで極端なのは獣人という特製なんだろうが……


 猫の発情は、本来長日と言われる日の長い時期に起きると言われている。

 発情期に入るとメスは不思議な独特な鳴き声で鳴いたり、身体を床などに異常にこすりつけたりなどの独特の発情行動を取る。

 ソレに当てられたオスは必死にメスを求める。

 そして、猫の発情が終わるきっかけは、『交尾』なのだ。

 交尾排卵動物と呼ばれ、交尾によって排卵が誘発されて、発情が終わる。

 

 ユキミの行動に照らし合わせれば、俺といたしたことで、その熱情はどこか空の彼方へ霧散してしまったのだ……


 ははは、シャワーが頬を伝うぜ……


 それからしばらく、病院の女性は一切俺と接点を取ろうとせず、男性からは、あいつ苦労すんぜ、という生暖かい目線をいただくことになる。


 当のユキミはその後ケロッとしたもので、関係も恋人以前のような関係に戻ってしまったようだった。


「え? いや別に普通にダイゴローは好きニャ? 

 ベタベタは、今はいいニャ!」


「あ、うん。ありがとう」


 嫌われてはいないみたいだから……ま、いっか。あれが夢みたいなものだったんだろう。


 こうして、俺とユキミの修羅場は嵐のように過ぎ去った。


 嵐が過ぎ去ると何が起きるか……


 次の嵐がやって来る。


「ダイゴロー!! ユキミ嬢に興味ないと言ってたじゃないか!!」


 破天荒様が各地の視察からお帰りになった。

○○の答えは、発情です!

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