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29話 多忙な日々

 キンドゥと出会ってから、俺の生活はガラッと変わって多忙な毎日を送ることになった。

 朝から昼過ぎまでは実際に患者と向き合っての診療。

 昼食を流し込んで場合によっては手術。

 それから医療や公衆衛生に関する講義。

 教科書作り。

 村からの報告と今後の計画立案、承認。

 そういえば村のダンジョンはキンドゥによって確認され、そのまま横穴のトンネルを作らされて麓をまた開拓してギルドを作ってそこも村の管理下になって……まぁ、大変になった……

 それでも完全に新規のダンジョンは冒険者たちにとって夢の場所。

 初期のダンジョン入場券はプレミアム化し、村も、ギルドも国も、それはもう潤った。

 鉱石を中心とした産出物が出るのでそういった面でも宝の山だ。

 今のところ友達特権で緑の風が地下20階層まで確認し、現国宝であるダイヤモンド、月の涙を超えると予想されるダイヤを持ち帰ってダンジョンフィーバーは未だ収まることを知らない。

 マスタフにはお前と友達でよかったよぉ!! とめちゃくちゃに感謝された。


「こうやって業務に忙殺される感じ、以前の世界を思い出すよ……」


 オンシーズンと言われる4~6月ころは動物病院は戦争だ。

 狂犬病に混合ワクチン、フィラリア、そして子犬、子ネコが多くなる。

 一番暇な12~2月あたりから急に変わるので、獣医師やスタッフにとって4・5月は気合を入れないといけない時期だった。

 師匠の病院はさらに師匠の腕を頼りに病気の子もたくさん来るから、普段から忙しいのに単純にプラスで仕事が増える。

 毎日毎日日が変わるまでカルテを書いていた……

 そこから師匠は手術とかもバリバリやっていて、いつ寝てたんだあの人……


「ダイゴローいいか?」


「あ、キンドゥさんどうぞ、ちょうど教科書の草案が出来たのでこれを」


「おお、助かる。それで上水道と下水道の原案ができて意見を聞きたくてな……」


 こんな感じで今は先王であるキンドゥさんの部下的な位置づけになっている。

 大病院の隣の建物を接収してそこに俺も務めている。というか住んでいる。


「これで大筋はいいな、ダイゴローの案はいつも革新的で驚くよ」


「いやー、以前の記憶から引っ張り出しているので、専門家だったらもっと凄いんですけどね……」


「それでも、十分に助かっている。また頼む」


「またユキミと食事ですか? あんまり甘やかさないでくださいね?」


「いやー、なかなかにガードが固くてな~。気になるのか? お前も狙ってるのか? 負けんぞ?」


「狙ってませんよ!」


「素直になれよ少年、いくら相手が猫族といっても大猿族に「人間です」……嘘だろ?」


「魔眼で見てもいいですけど、俺は人間です」


「……ほんとだ……」


 キンドゥは信じられないものでも見たような顔で部屋から出ていく。

 いままでどんだけ一緒にいたと思ってるんだよ!


 まとめるべきことは際限なく有るので自分の中の知識と、この世界で集めたデータを適合させてたぶん世界初であろうデータに基づいた教科書を作り上げていく。

 もちろん薬品みたいな科学化合物の合成なんかは超高度な魔法技術でも無いと不可能なので最も古典的な抗生物質ペニシリンだよりに最初のうちはなるのだろう……

 

「原因を認識できればもっと魔法をうまく使えるんだろうなぁ……」


 この街で起きたレプトスピラ症もだいぶ収束してきた。

 水を扱う時は直接触れないように、触る、飲むものは煮沸、排泄を生活圏の上流でしない。

 最初はこれを徹底した。

 そう言えば5兄弟の村も人が増えていた。

 畑の作物も生け簀も問題なく運用できていた。

 久しぶりに行ったら長男のバルトが公衆衛生系のことを仕切っていた。

 おじさんはその成長にホロリときてしまった。


 集中して作業をしていたので、ユキミが帰宅して初めてかなりの時間作業していたことに気がついた。


「お帰りー、またキンドゥさんにごちそうになったのか?

 あんまり甘え過ぎちゃダメだぞ……?」


「……」


 返事がない、いつもなら今日も美味しかったニャー、とか、仕方ないのニャ行かないとソレはソレで煩いニャ、とか返ってくるのだが……


「ユキミ……?」


「お疲れ様ニャ……」


 なんだかいつものユキミと違う……


「どうしたの?」


 振り向こうとするといきなり後ろから抱きつかれた。

 背もたれの上の柔らかいものは……これは……


「ちょ、ちょっとどうしたの……?」


「今日、キンドゥに聞いたにゃ……ダイゴローが今行っている仕事……

 私が村で鶏達と遊んでる間に……凄いのニャ……」


「あ、ああ。そういうことか……いや、そのあれ、大したことじゃないし、なんというかユキミも美味しい卵作ってくれるのは俺も、ほら俺も好きだし……その、あの……」


 た、耐性ないんです俺! 童○なんです!

 こんなに女性が近いこと無いんです!

 余裕が無いんです! ああ、もう、体の一部が、コントロール制御不能になってしまいます!

 わぁ、ああ……


「ごめんニャ……なんの役にも立たなくて……」


 温かく濡れていく肩が、俺に冷静さを取り戻させる。

 あのユキミが……泣いている。


「……どうしたの? 何かあった?」


 いつの間にかネズラースは執務室から寝室へと消えている。

 妙に気を使うんだよねあの人……


「今日、キンドゥに妻になって欲しいって言われたニャ……」


「まぁ、いつものことだよね」


「そう。いつものようにダイゴローと一緒に獣人を救わないといけないからだめニャって断ったニャ」


「うん……」


「そしたら……」


□■□■□■□■□■□■□■□■□■


「ダイゴロー君は立派に務めを果たしてくれている。

 彼の作った医療書はたくさんの患者の命を救っている。

 彼の作った教科書はたくさんの優秀な医者の卵、そして一般の人々に自衛の知識を与えている。

 彼と共に働く人たちは彼の技術を手に入れ、それをさらに広げていく。

 彼は本当によくやってくれている。

 医者としてだけじゃない、彼のお陰で我々の生活は急激に改善している。

 病で苦しむ人は減り、病になる人の数さえ減らしている。

 さらに効率的な食料生産、運輸部門でも彼の知識は素晴らしい恩恵を与えてくれている。

 今この国で彼を嫌う獣人など一人もいない、皆、彼を尊敬している。

 大丈夫……『彼は君がいなくても十分獣人たちを救っていける』

 もう、君は使命を果たしたんだ。

 だから、僕と結婚して欲しい、今度は僕の側で一緒にいてくれないか?

 別にユキミはダイゴローの側に居たいわけではないだろう?」


□■□■□■□■□■□■□■□■□■


「何も言えなかったにゃ……」


「……そうか……」


「あ、嘘ニャ。

 ホントはダイゴローの側に居たいのかはわからないけど、別にキンドゥの側には居たくないニャ、おいしいご飯を食べさせてくれるおじーちゃんニャって言って帰ってきたニャ」


 うん、何ていうか、コテンパンだな。あとで怒ろうかと思ったが同情するぜキンドゥ!


「ダイゴローは……これからどうするのニャ?」


「うーん……まだまだ今手を付けていることは終わらないけど、終わったらかぁ……

 俺もよくわからない……というか、功徳の件はどうなってるの?」


「神様と連絡が取れないニャ……ネズラースはなんと言ってるニャ?」


『まだ協力者から連絡はない、時では無いということだろう。だってさ」


「ふにゃー、そしたらソレを待つしか無いニャー……」


 耳元で囁かないでほしい、一度冷静になった気持ちがまた変化してしまう。


「そろそろユキミ離してくれないかな?」


「……なんか、嫌ニャ……」


「なんか、ってなんでさ?」


「ダイゴローは、嫌なのかニャ?」


 こいつ、わかってやがる。

 より感触が伝わってくる。

 こいる、わかっていやがる!

 これだから猫なんだ、気まぐれでこっちを振り回す。

 

「嫌なわけないじゃないか、ユキミみたいな素敵な女性とこんなに近い距離でいたらドキドキして死にそうだよ。

 それに、ユキミがいなくても救っていけるとか(魔法的な意味で)ユキミがいなければ俺はダメだよ」


 どうだ、この気持ちの悪い臭いセリフ。

 キンドゥが臭いセリフを言った時の様に馬鹿にして自分の部屋へ帰るとよい!

 いつもおちょくるからお返しなのだフハハハハハ!


「……嬉しい……」


 あれ? 



 あれ?



 あれ?



 つづく……?

さて、10万文字とちょっとぐらいで終わらせるか、長編にしていくか悩み中……

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