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27話 ドナドナ

「くたばれ詐欺師がー!」


「ああ、なんかあいつ見てるとイライラしてくる! さすが医者を語る悪人だ!!」


「なんか臭くなーい? あのゴリラから嫌な匂いがプンプンするわ!」


 こつん、こつんと石が飛んでくる。

 石当たっても、俺、痛くない……

 それでも滝のような涙が溢れる。

 思い出すのは村での兄貴兄貴と慕われ忙しくも充実した日々……

 ああ、もっと泣けてきた……


「うう……なんで神の使いである私がこんな目に会うのニャー……」


 ユキミも隣で目を真っ赤にして泣いている。


 護送される鉄格子に、町の人達に罵声と石を投げつけられる。

 見せつけるかのようにゆっくりと進む馬車、こうして住人のガス抜きをする。

 たぶんしたり顔で頭上からネズラースが講釈を垂れている。

 結構不愉快だ。


 すすすっと人混みから人影が出て馬車と並走する。


「兄貴……」


「おお、どうなってるかわかるこれ?」


「なんか、大病院の院長と街の領主が仲が良いらしくて、兄貴を潰すために今回の事件を仕組んだらしいです。ただ、兄貴……医者の資格なしに診療所はまずいっすよ……」


「知らなかったんだよ、誰も言ってくれないし……」


「資格ないって思わないじゃないですか!」


「うん、まぁ……」


「とにかくこっちでも情報集めておきます。

 兄貴もがんばってください!」


「もう、心が壊れそうだけど頑張る……」


 すすすっとまた同じように人影に消えていく。

 まぁ、完全に自分のせいなところもあるのね……

 うーん、想像してたよりもやばくね?


 それらの情報をユキミにも伝えるとさらに大泣きしてしまった。

 もう出たとこ勝負で行くしか無い。

 折れたりの不安な気持ちとは裏腹に、馬車はゆっくりと市民の罵声を浴びながら進んでいく。


「判決、死罪」


 考えていた以上に物事は悪い方向へ、想像以上の速度で転がり落ちていくように進んでいくんだなぁ……


 他人事のように今自分に起きていることを見ていた。


「こんなのおかしいニャ!!」


「ええい、煩い! 貴様などは獣神様の使いなどと許されざることを言いおって!」


 裁判は……

 裁判と呼べるようなものではなかった……

 罪状もでっち上げ、証人もいない、弁護士もいない、罪状を読み上げたら判決だ。

 ユキミは魔力を封じる手錠をかけられている。

 ううむ、なんかどんどんイライラしてきたぞ……


「なにを言われても大人しくしているつもりでしたが、一つだけ死罪になる前に伝えておきます。

 『骨無し病』は、不治の病でもなんでもなく、数例すでに完治させています」


「ふん! 『骨無し病』など過去の名前、あの病気は栄養の不足と陽の光の加護によって治せることはすでに『私の手で』発見しておるわ」


 なーるほど。そういう手で来ますか。

 今、えらそーーーーに話していたのがパリトン大病院の院長カネスキ、ぴったりな名前だ。

 熊型の獣人で、まぁ偉そうだ。

 さっきから常にイライラさせてくれる。


「なーんだ、結局若い医師を騙しているなんて言っておきながら、その実その知識を横取りしてドヤ顔するだけか……」


「貴様!! 口を慎め!!

 お前なんぞすぐにでも切り捨てても構わないんだぞ!!」


「ぷっ……ハーッハッッハッハッハ!!」


「ぶ、無礼な!!」


「だってさ、あまりに頭が悪くてびっくりするだろ。

 『骨無し病』の治療、あんたも俺のやり方で治療してうまく行ったんだろ?

 それでさ、どうして俺が『病付き』と『骨無し病』だけしか治療法を知らないと思ってるんだ?」


「なっ……ええい! 煩い! 黙れ! 衛兵!!

 すぐにコヤツを刑場へと連れて行け!」


 はぁ、やれやれだ。

 仕方ない、獣人に怪我させないように注意しながら、暴れますか……


「待て! 今の話詳しく聞かせて欲しい」


「な、だ、誰だ! 俺の言うことを聞かない奴は!?」


「いつから私が小僧の話を聞かねばならなくなったのだ?」


 傍聴席の隅っこでひっそりと聞いていたフードをかぶったご老人が立ち上がる。

 しかし、立ち上がるとその姿は老人などではない、威厳あふれる王者の姿。

 百獣の王、獅子型の獣人。


「な、な、なぜ……貴方様が……」


 カネスキも領主も、裁判長までもが目を丸くしている。


「何ニャ? 何者ニャ……?」


「この国の先代国王キンドゥ、今は隠居して各地を旅しているご意見番という立場だが、それでも影響力は絶大な超大物だ」


 頭上からネズラースさんの解説がありがたい。


「なぜ? なぜここに居るかという話か?

 ファイラントの街のダンジョンが制覇されたらしく、ちょっと悔しくてもう一度挑戦しようと思ってな……」


「あの通り、冒険者としても超一流、この国で数名しかいないSSS級クラスでもある」


「その男、ダイゴローとそちらのユキミ嬢が制覇者なのだろう?

 それにしてもユキミ嬢は可憐だ。この世界に咲いた一輪の華……

 ああ、貴方のような女性と知り合えたことはこのキンドゥ至極の喜び」


「あの通り、齢60を超えてもなお各地で子をなして、後継者問題を絶賛生産中のトラブルメーカーでもある」


 なんという濃い先代様だ!


「おっほん。話がそれたな。

 ダイゴローよ、お主は他にも病気の知識があるということでいいのか?」


 すごい威圧感。まさに王者のオーラ!

 ユキミにウインクしなければ完璧だ。


「ええ、私は多分この世界の病気について、一部の病気なら新たな治療法を提示できると思います」


 俺はじっとキンドゥ先王を見つめる。


「ははは、貴様に見つめられると頭を噛み砕きたくなるな……」


「それが獣神アラセス様のダイゴローに課した試練ニャ!」


「信じよう! ユキミ殿が言うことは全て事実、儂の眼がそう告げておる」


 ユキミと話す時の踊りだしそうな話し声と俺と話す時の苦虫を噛み潰しながら話すような差が激しい!

 キンドゥの左目に炎のような光が立つ。


「あれがキンドゥの王としての証、真実の目。自らが興味を持った者の言葉の真偽を知ることが出来る魔眼だ」


「それなら、俺のことも信じていただけるのですね!」


「いや、お前のことは知らん。あと、あまり喋るなイライラする」


 泣きたい……


「裁判長、少なくとも我が眼に誓ってユキミ殿が獣神の使いであることは間違いない。

 その罪は取り消すが良い」


「は、ははぁ……」


「し、しかし先王!! その男はペテン師であることは間違いない!

 すぐに処刑を……!」


 勢いに乗ってカネスキが騒ぎ立てる。


「キャンキャン吠えるな小動物がぁ!!」


 うっわ、絶対カネスキ漏らしたよね、びりびりとした威圧感が別方向にいた俺まで伝わる。

 あれの直撃を受けたら……あ、失神してるね。


「ほう、今ので気を失わないとは、流石は制覇者じゃな……」


 よくみると、この会場すべての人が白目を向いていた。

 半端ないぞこの先王。


「あ……」


「あ……?」


 先王の目線の先……


「ゆ、ユキミーーーー!?」


 ユキミが白目を向いてひっくり返っていた。

 その後全員が目を覚ますまでキンドゥがユキミの側でオロオロしていて面白かった。

 


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