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25話 招待状

「そっちも伐採してもう少し広げて行くぞー」


「ういっす!! 兄貴!!」


「そこ結構急な斜面だから手前に柵を作ってから作業した方がいいぞー」


「わかりやした兄貴!!」


「兄貴! 下までの道言われたとおり木材で階段状にしてきました!

 すげーっすね! あんなに楽になるなんて思わなかったっす! 流石兄貴!」


「なぁ……」


「はい!! なんすか兄貴!!」


「その、兄貴っての止めない?」


「へ? なんでですか? 親方の兄貴分なら兄貴っすよ! 兄貴!!」


「ああ、うん。あ、そこ崩れやすいから法面しっかりね」


「わっかりやした兄貴ー!」


 俺は山賊たちに指示を出しながら、この山腹に山賊たちの住む場所を作っている。

 よく話を聞けば、人付き合いが下手だったり、単純に末っ子だからとかそういう理由で捨てられた人間が、いつの間にかあのボスゴリラ、ドゴスの元に集まって、山賊になってしまっていたらしい。

 こないだ誘拐した子を殴りつけたのは新入りで、普段は一応の流儀があって人質に怪我一つさせないって言うのを守っていたらしい。

 その新入はドゴスにこってり絞られた+(プラス)俺のパワーにビビって率先して危険で大変な仕事をやってくれている。


 この岩の洞窟前は本当にいい土地で、高台でありながら平地を広く取れる。

 段々畑のように平地が確保できるので山腹でありながら村としての土地を確保できる。

 そしてほぼ山頂部に湧き水があり魚が住むほどではないが小川が近くにあるので水の確保も容易だ。

 極端な森林伐採は避けながら、山賊たち全員が十分に暮らせる範囲を開拓する。

 

「姉さんの魔法凄いっすね!!」


「姉さんこっちもお願いしやす!!」


「しょうがないニャぁ~~」


 おだてられやすいどっかの猫はあねさんあねさん言われてホイホイと誰よりも真面目に働いてくれる。

 この山には財産もあった。

 まず一つは豊富な山菜、とキノコ類。そして、果物だ。

 これらを利用して果樹園なども将来的には作りたい。

 もう一つが洞窟だ。この内部には鉱石がたくさんあることがユキミの魔法でわかった。

 近くにあったので、エイヤっと殴って掘り出したら上質の鉄鉱石と石炭が見つかった。

 ちょっと街へ売らせに行くだけでしばらく村の準備の足しになるお金になったのは幸いだった。

 坑道掘りは危険が伴うので、俺とユキミでおおよそのルート掘りと崩落防止作業はしておいた。


「なんか、この向こう……変な感じするニャ?」


「なんだろ、えいや!」


 こんな感じで最深部の方でダンジョンも見つけた。

 未発見ダンジョンはネズラースいわく国家規模の懸賞金がもらえるそうだ。


「まだあいつらには早いね。ここは封印しておこう」


「ダイゴローは偉いにゃ!」


 その時が来たら、あの場所も教えてやろう。

 まぁ、いろいろな事があって、飛ぶように日は過ぎていく。

 

「兄貴! 息子が! 息子がハイハイしました!!!」


「おお、ドゴス良かったなぁ!」


「ふぁい……兄貴のお陰です! 兄貴ー!!」


「や、やめろって良かったよかった……良かったなぁドゴスー……」


「あの二人は抱き合って泣いて何してるニャ、気持ち悪い……」


「姉さ~ん今日のご飯は卵かけご飯っすよー」


「にゃ、ニャニー! すぐ行くにゃ! ほらそこの二人早く食堂へ行くにゃ!!」


 しばらくドゴスと男泣きしてたらユキミに叩かれた。

 男の気持ちがわからんやつだ。


「さて、ドゴス。サンちゃんが回復したことで俺の話も信憑性があがっただろう」


 食後に軽く報告と打ち合わせをするのがなんとなく通例になっている。


「はい兄貴! あの医者今度あったらギッタンギッタンに……」


「それはダメだ、そのお医者さんも自分なりに考えて手探りで治療法を探っている。

 責められるものじゃない。ただ、今現在でも助けられる子が正しい治療が受けられないのは悲しい。

 そこで、君たちの一部に働いてもらいたい」


 俺は準備していた紙、木の皮で作った樹皮紙と言うやつだ、を取り出す。

 そこには『骨なし病』と『病付き』に対する原因と考え方を、出来る限りわかりやすくまとめて、どうすれば改善するのかを、俺の薬とかに頼らずに出来る方法をまとめてある。

 それを出来る限りいくつも作った。

 山賊たちに読んでもらっても理解できるほどに簡略化したもの。

 少し専門的な事が書かれたもの。

 ネズラースと一緒に本当の専門家が理解するもの。

 この3パターンを用意した。

 

「これを、広めて欲しい」


 別にぬくぬくとしたここでの生活が存外心地よくて思ったよりも長期滞在になってしまって、なんかもう救いの旅とかどうしよっかなーと無為に過ごしていたわけではない。

 断じて無い。

 結局、俺が移動して救うものはあまりに少なすぎる。

 それよりも、俺が持つ知識を正しく広める活動も同時にしたほうが、結果として多くの獣人や動物を救えるのではないか? そう考え始めた。

 もちろん、門脈シャントや外傷性気胸の様に今現在では俺しか対応できな病気も確かにある。

 それでも、この活動は無駄にはならないはずだ。


「兄貴!! いつもの客人ですぜ!」


「わかったー診察室行くよー」


 そう、俺はこの山賊の村に仮の診察所を作った。

 

「ダイゴロー先生、その節はありがとうございました」


 いつも丁寧な挨拶をしてくれるハムスター型(この世界では柔鼠族というらしい)の獣人、麓の旅館の女将さんのカーサさん。そして診察をするのは外傷性気胸を患ったエイス君だ。

 エイス君に暴行を働いたやつはしっかりと土下座して、カーサさんの宿の前を1ヶ月掃除させて許してもらった。

 今ではこの村、に訪れる人間も増えており宿が好調で感謝すらされている。

はぐれものたちが立派な村を作ったという噂はすぐに広がり流れ者が集まるようにもなった。

一部希望するものは五兄弟の村を教えたりもしたが、まぁ人が増えた。

 村にも名前がついていた。

 一応ドゴスが村長なので俺につけさせようとしたが断った。

 結果サン村になった。サンソンって懐かしい気がするがなんだったっけ?


 いつもの通り診察をする。

 日常生活の様子を聞きながら当てた手で診察兼検査をする。

 便利だ。

 傷口もどこかわからないほどきれいに治って、胸腔内、肺にも異常なし。


「よし、もう完治したと言っていいよ!」


「本当にありがとうございます!」


「ダイゴロー先生ありがとう!!」


 元気に帰っていく二人を笑顔で見つめる。

 ドゴスも責任を感じているようで、この山で取れる様々なものを迷惑をかけた山裾の人達の家に無償で配って歩いている。

 きちんと自分自身で集めたものを、だ。


「さて、今日の勉強会は何人ぐらい来ているかなー?」


 俺の情報戦略は功を奏して、周囲の医者たちが俺の話を聞きに来てくれるようになった。

 最初は茶飲み話だったが、俺の話の内容と、ソレを実践した結果によってその規模は大きくなってきた。

 今日も講義部屋の扉を開くと半分以上の席が埋まっている。

 基本的には若い世代が多いが、敵情視察みたいな感じで重鎮っぽい人も交じるようになってきた。

 不思議なことに、この場所へ来ると俺の話でも獣人でも不愉快ではないそうだ。

 村から出ると はぁ!? みたいな顔されるんだけどね……


 そんな俺のもとにすっかり忘れていたパリトンの大病院から招待状が届いたのは、この村を作って半年、サンちゃんが歩き出した日だった。



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