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13話 宝物

「気が重い……」


 長いダンジョンをワープで一気に帰れたことは嬉しかったんだけど……

 問題はこの後だ。


「あれ、報告したら……俺が悪いって話になるよな……」


 ダンジョン内で起きていたことを、皆に説明しないといけない……

 

「嘘はつけないけど……、俺じゃないんだけどなぁ……

 まぁ、仕方ないか、昔からたいてい悪いことは俺のせいって言われてたし。

 半分くらいしか俺のせいじゃないのになぁ……」


 きっと今俺を見た人は、しょぼくれて小さくなった情けない背中を見ることになるだろう……

 街の魔物もほとんど見かけることもなくトボトボと教会へと歩いていく。


 教会に近づいてくると何やら活気づいていることに気がつく。

 教会に近づけば近づくほどその活気や歓声が多数の人達によって起こっている物だとわかる。

 

「なんか、いい匂いがするなぁ……」


 喧騒に加え肉の焼ける匂いや、甘い菓子の匂いが漂ってくる。


「お祭り……?」


 そう、まるでお祭りのような騒ぎだ。

 ダンジョンに入る前はここが最後の砦のように悲壮感に溢れていた。

 今はまるで我が世の春が訪れたかのように明るい雰囲気が満ちている。


「……!? ダイゴローが帰ってきたぞ!!」


 見張りと思われる人が俺の姿に気がついたようだ。

 あのピョンと伸びた可愛らしいお耳はラットンさんだ。

 俺は弓を射掛けられないか軽く身構えてしまうが、一向にその気配はない。

 ソレだけではなく、何やら大量の人の気配が近づいてくる。


「おおおお……!?」


 なんと、人間だけでなく獣人たちも混じって、しかも獣人からのあの憎々しげな目線も表情も罵倒もない、これは、もしかして……?


「ダイゴロー様ぁ!! ありがとうございますー!!」


「ダイゴロー! お陰で助かったよ!」


「ダイゴロー! うちの子が……うちの子が……元気になったよ!」


 獣人たちも含めて皆が俺を褒めてくれる。

 感謝を伝えてくる。

 侮蔑と憎悪に満ちた視線ではなく、尊敬と感謝に満ちた眼差しを向けてくれている。


「いつの間にか功徳完了してたのかー!」


 俺はその歓声に答えるように空に両手を突き上げる。

 一層大きな歓声が広がる!

 ああ……この瞬間のために頑張ったんだよ、俺……


「お疲れ様ニャダイゴロー。早かったニャ、まさか4日で帰ってくるとは思わなかったニャ」


 目を開くとユキミさんが目の前に、マスタフの肩に乗って現れた。


「ダイゴロー! ダンジョンの浅いところに原因があったのか!?

 何にせよ無事に返ってきて本当に安心した。まぁ、お前の力ならなんとかなると信じてたけどな!」


 差し出された手をぐっと握りしめてそのまま軽いハグをする。

 冒険者同士の熱い挨拶というやつだ。


「マスタフさん! いやー、最下層に原因があって大変でしたよー」


「ん? 最下層? 今、最下層って言った?」


「ええ、地下49階に大きな空間があって……そうだ! ユキミさん少しお話が……」


「待て待て待て、ダイゴロー! 今何階層って言った?」


「えーっと、49階層ですけど……」


「49?」


「49」


「4階層でも9階層でもなく49階層? 10、20、30、40、で50の一つ前の49?」


「はい、その49階層です」


 こんなやり取りをしているといつの間にか周囲の皆が黙り込んでいる……

 俺は何かしてしまったんだろうか?


「オホン、じょ、冗談がきついなぁ。まだ4日しか経ってないんだぞ?

 さ、最下層なら宝があるはずだろ。ダイゴローは手ぶらじゃないか、ははは、冗談がうまいなぁ」


「ああ、これですね。綺麗ですよねー」


 俺はダンジョンの宝箱を取り出す。

 取り出す時はニュルンって感じで出てきて、これもまた気持ちがいい。


「……」「……」「……」「……」


 周りに集まっていた冒険者風の人々は、魂が抜けたように口を広げて唖然として宝箱を凝視している。


「あれ? マスタフさん?」


「誰かー---!! マスター呼んでこー---い!!!」


 それからはまさに大騒ぎ、すぐに宝箱をしまうように言われ、教会内の一番奥の大司教の部屋で詳しい話をすることになった。

 ユキミには例の廃棄物置き場のことを相談すると、先に浄化に向かってくれるそうで再び別行動になる。

 ユキミからも報告があるそうで、それも落ち着いてからという話でまとまる。


 問題は目の前で起きている。

 まず第一の問題、ギルドマスターヴァーンさん土下座問題。

 第二の問題、ダンジョンから持ち帰った宝箱問題。

 

「殺されても文句は言えない、俺はなんてことを……」


 ヴァーンさんはずっとこの調子で土下座している。

 土下座文化があることも少し驚いたけど、よほど死なすつもりでダンジョンへの入場を許可したことを悔やんでいるようだ。


「あの時はどうかしていたとはいえ、許されることではない。

 俺はギルドマスターとして罪を償わなければならない」


「いやいや、仕方ないんですよ呪いなんですから。

 誤解も解けてくれたので俺はもう気にしてませんから……」


「街とギルドを救ってくれた恩人に……俺は……なんということを……」


 さっきからこの繰り返しで埒が明かない。


 そしてもう一つの宝箱問題だ。

 今はカレナさんが慎重に宝箱に罠がないかを何度も何度も何度も確かめている。

 この街の司教様がその記録をしっかりと付けている。

 ダンジョンの宝はとんでもない価値を秘めているそうで、ギルドと王国もしくは司教以上の協会関係者が立ち会いのもとで開封がされるのが決まっているそうだ。

 

「ふぅ、大丈夫。この宝箱には罠はかかっていません」


 ようやく緊張から開放されホッとしたカレナさん。すごい汗だ。

 スレンダーでスラッとしたボディラインが汗で張り付いた肌着によってはっきりとしてしまい、思わず目を逸らす。

 ちらっと見たらフフンって顔されてしまった。恥ずかしい。


 万が一罠があって中の宝をおじゃんにしたらとんでもない損失になる。

 A級以上の冒険者による鑑定、魔法によるダブルの鑑定で罠がないことを確かめる。

 

「それでは私、もうすぐ犯罪者になるファイラント街ギルドマスターヴァーン」


「同じくファイラント街教会大司教メリエリの名のもとにダンジョンの宝を開封する」


 二人が書面に手のひらを置くとうっすらと書面が輝く。

 これで契約と誓約が終了する。

 公的な証明となる。


「……はう……」


「はう?」


「ブフォ!」


「ブフォ!?」


 ヴァーンもメリエリも品物が一つ出される度に変なリアクションを取っている。

 係のギルドの人も倒れんばかりに緊張している。


「だ、大丈夫ですか?」


「は、話しかけないでくれぇ……おと、落としたら……」


 ひとつひとつものすごく丁寧に用意された台座に置いていく。

 ユキミさんがいれば鑑定魔法も使えるんだけど、なんか綺麗な物がたくさん出てくるくらいしかわからない。

 でもほぼ全て魔力を帯びているのはわかる。

 今着ているローブと同クラスの良い物っぽいってのはなんとなくわかる。

 確かにこの装備のお陰で怪我一つなくダンジョン攻略できたし、きっと凄いものなんだろう。


 結局、宝箱からアイテムを出し切るだけですっかり日が暮れてしまい、全てのアイテムを確認した書面に同じように誓約をして俺は解放される。


 残されたギルド職員の人達は間違いなく残業だろう……ご愁傷様です。


「待ってたぞダイゴロー!! さぁ詳しい話を、飯でも食いながら聞かせてくれ!!」


 外に出た俺は緑の風に拉致をされることになる……



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