カラメル
手を繋ぎたい、の一言が言えない経験はありませんか?
甘酸っぱい雰囲気を感じていただけると幸いです。
「…それで、圭吾のヤツ顔真っ赤にしてさ。お前にも見せたかったよ、あの圭吾の顔!あ、その後な……」
夕暮れ、貴方と並んで歩く道。
今日の出来事を面白おかしく話してくれる貴方の隣で、私はドキドキしながらタイミングを計っている。
『手を繋いでいいですか?』
たった10文字、されど10文字。
貴方に伝えたくて…伝えられなくて…もどかしい気持ちを抱えている。
「…あ!やっべ、もうこんな時間だ!電車に間に合わねぇ!侑、走るぞ!」
私が伝えられなかった10文字を軽々と飛び越えて、私の右手を掴んで走り出す貴方。
指と指を絡めた恋人繋ぎで。
ねぇ、先輩。
先輩も、手を繋ぎたいと思ってくれてましたか?
耳が赤いのは、夕日のせいじゃないと思っていいですか?
走らないと電車に間に合わないようにしたのは、ワザとだと思っていいですか?
ねぇ、先輩。
貴方が、好きです。
明日は指を絡めて、ゆっくり歩いて帰りませんか?