第9話
「やぁやぁ、元気してたかい?」
私はそう言うと人間の信者共は一斉に
「「「イェース!マイゴーッド!」」」
と言った。総勢約10万20千名。
うるさいね。
「今日は君たちに伝えたいことがある。本題から言おう、君たちはこの国外へ布教に行ってもらう」
そう言うが誰一人として動揺する様子はない。
それも当然だ、私の『兄弟達』がしっかりと洗脳を施したからだ。
「しかし、この国の中にもまだ入信していない不逞な輩がいるそうなので、そいつ等もしっかりと捕らえて入信させましょう!」
そう私が張り切った声で言うと
「「「おおおおおおおおおおおぉおおぉおおお!!!!!!!!」」」
と叫び声のような歓声が一斉に広がった。
うるさいね。
「それじゃあレッツゴー!」
私は握りしめた右手を上げ言った。
そう言うと信者共は雄叫びをあげながら走り去っていった。
うるさいね。
☆☆☆
メリアの部屋の戸に手をかけ押してみると、そこはもぬけの殻だった。
残っていたのは元から置いてあった机、椅子、棚だけであった。
何もない、この家を買った時のような状態で残っていた。
何か、メモや白蟻教に関することでもあると思ったのだが。
しかし、気になることがあった。
床に人が1人入れるくらいの穴が開いていたのだ、彼女が落ちてしまったのだろうか。中を覗き込んだが、ただ、土が見えていた。
きっとここに水が染み込んで腐ったのだろうと思い私はその場を離れた。
しかし、メリアはそのまま出て行ったということは、私が出て行けと言う前からこの状態だったということになる。
白蟻教は部屋の道具を捨てろと強制でもしているのだろうか。しかし、何のために。
私は手を額に当て考えながら部屋を歩いていると床の一部にギシギシと鳴る部分があることに気がついた。
少しの間そこを押したり引いたりを繰り返していたがバキッという音が鳴ると私の片方の脚が床に突っ込んでしまった。
その拍子にもう片方の脚も突っ込んでしまい、身動きが取れなくなってしまった。
抜け出さなければと思い、床に手を置き力を入れ、脚を持ち上げようとした時。
手の近くに白い蟻が近づいてきた。私はその蟻を出て追い払おうとしたが、その蟻は私の手に張り付いて離れない。
私は手を振るって離そうとするがガッチリしがみついて離れそうにない。
もう片方の手を使い蟻を取ろうとしたその時。
その蟻は私の手に噛み付いた。
その瞬間、私に激痛が襲い、脳に何かが入り込んでくるような気がした。
「信じよ」
「裏切るな」
「信頼」
「疑うな」
「笑うな」
「常識を捨てよ」
「弱者…………
…………
☆☆☆
私は人間並みの力しかなかった、縛りプレイ中だからね。
だけど私は今こうして人間の信者共に慕われている。
これは何故か、説明しよう。
私はあれから徒歩でサイデン平原のマイマザーのところに向かった。
マイマザーは魔界の門を開き、出てきた魔界獣を殺しては食い殺しては食いを繰り返していた。
多分マイマザーは見た目的にディープヘル・アントにでもなっていたんじゃないかな。
もう全身赤!って感じの赤で真っ赤っか。
血とかトマトとかそんなレベルじゃない赤。
赤100%の体で食いまくってた。
マイマザーはどこを目指しているんだろうね。
マイマザーは人間とか魔物とかも殺しまくってたけど、それは敵意を向けてきた奴しか殺してないんだよね。
意外と穏やかなマイマザー。
生まれた時はマイマザーも頭が悪かっただけだから。シャーナイ。
だから私は超穏やかな心で「人を信じやすくする洗脳を使えて、増殖する白蟻を作ってください」と言ってやったら、もうでかい体で滅茶苦茶小さい卵をドロドロ産んでくれた。
そのドロドロの小さい卵を国に持ち帰ってそこら中に埋めてやった。
こいつらは孵化すると何でも喰ってしまう。
たとえ土でも、水でも、生物でも。
それで満腹になると成虫に進化して【洗脳】が使えるようになって、噛まれると相手は洗脳され何でも信じやすくなる。
これは人間の力のままやったのでセーフ(と私が決めた)。
最高だぜ。
もう、そこからは私の独擅場、私は神ですと言ったら私は神と信じるし、白蟻教に入れと言えば入信。
ちょろいもんだぜ。
そして私が何をしたいかと言うと。
何をしたいかと言うと……
あれ?何をしたいんだっけ?
うぅんと、なにかすごく面白いことを考えていたはずなのに。
【異常発生】
【外部による攻撃を受けました】
【コード『3337』回収回路の永久封鎖が発動されます】
【コード『3339F』個体番号《53-3-7262628・・・・・・98》の破棄が発動されます】
【コード『3340』◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎が発動されます】